第10話 鈴の音のように
取り合えず秀たちは六階の安全な部屋に来ていた。
今いるのは秀と雪とミカだけ、他の人とは逸れてしまった。
「これからどうしよう」
雪があせったように言う。
顔色がいつもより白い、そりゃさっきまで死にそうだったんだから当たり前か・・・・・
「とりあえずあのパンプキン男を倒さないとここから出ることはできないみたいだな」
秀は冷静に確実なことを言う。
「そんなのむりだよぉ〜」
情けない声が雪から漏れる。
「まず亘さんと合流しよう、そうすれば何かいい考えがうかぶかも」
「うん、そうしよ」
雪がうなずく。
隣でミカもコクリとうなずく。
とりあえず慎重にドアを開ける。
そして顔を出し辺りを確認する。
パンプキン男らしきものはない。
三人とも廊下に出てみるがどこを探せばいいのかわからない。
しかもパンプキン男に見つからないようにしなければならない。
困難極まりないことだがやらねばならぬ。
まず一つ下の5階を調べることにした。
ここは雪が怪我をした階だ。
秀はそれを気遣いミカと二人で探すことにした。
人の気配はまったくしない。
しかし隠れている可能性は高い
一様一通り調べてみることにした。
一度来たことがあるだけに罠に引っかかることはなかった。
そして誰もいなかった。
隅々まで探してみたが誰一人隠れては入なかった。
「お兄ちゃん、誰もいないよ」
愛らしい声でミカが言う。
でもその声の中には恐れも混じっていた。
もうみんな消えてしまったのではないかと・・・・・
「次の階行ってみよ」
秀は優しく返す。
それがうれしかったのかミカは秀の腕に抱きついてくる。
本当に甘えん坊だとか思いながらも顔はニヤついている。
ミカは小学生にしては顔は整っていて、とてもかわいらしい
しかもこんな中だいぶ落着いていられるのだからとても精神的に強い子だ。
そんなことを思っているうちに雪が待っていた階段までついてしまった。
「なに二人してラブラブになっちゃてるのさ〜」
とか冗談めかしく雪が言い出す。
「別にいいだろ、こんな状況なんだからさ・・・・・・・ん、ひょっとして妬いてるのか?」
と秀も冗談ぽく言った。
「そ、そ、そんなはずないじゃん・・・・あ、ありえないって」
と予想に反してものすごく焦っていた。
白い顔が真っ赤になっていた。
それを見て秀は
━雪もだいぶ体調よくなったんだな〜
とか思い「次行こ」と先に進んだ。
後ろのほうで雪がハァ〜とため息をついていたのが聞こえた。
4階はいろいろな薬品が置いてあった。
分かれて捜索することにした。
秀が奇妙なところだな〜と思いながら見て回っていると奥の部屋でガサガサと物音が聞こえた。
秀は驚き歩みを止める。
亘たちの可能性もあるがパンプキン男の可能性の否定できない。
そして秀は少しずつ音のした部屋に近づく。
そして扉をゆっくりと開ける。
少しできた隙間から中を覗いてみる。
中で何者かが何か変なことをしてる。
━ん、大きさからいってパンプキン男ではないな。ってことは亘さん達か・・・・
そう思い、思ったことはすぐに実行する秀は他に調べもせずに大声で話しかける。
「亘さ〜ぁぁぁぁん」
その声にその人影はビクッと体がゆれる。
近づいて見てみるとやはり亘だった。
「驚くじゃないか、もう少し慎重に行動してくれ」
亘は少し怒ったように言う。
「ごめんなさい、でも亘さんが無事だとわかってつい・・・・・」
秀は少し反省した。
状況を理解しすぎてない
今はパンプキン男が俺たちを殺そうと目を血走らせているのだ。
そんな中で大声を出して気づかれたら終わりだ。
後先行動しなかった自分を呪った。
気が付くと雪とミカもここに来ていた。
「みんな無事なんだな」
亘が少し安心したように言う。
「みんなって、他の人はどうしたんですか?」
「弥生さんと、和田さんは無事だ、今は少し別で行動している。」
「そういえば何してるんですか?」
秀は訝しげに尋ねる。
「そうだ、君達に話しておくべきだな」
秀たちは唾を飲み込む。
「ここから抜け出すいい方法を思いついた」
それを聞いて秀の目に光が宿った。