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異質なる船

謙信は春日山城へ引き返す道中で、これからの事に案じていた。


相模には北条氏康が居て、甲斐には武田信玄がいて、越後には自分がいて、この三雄によりバランスがとられ、旨い具合に地方勢力を組み込みながら戦っていった。


信玄は他領への欲望を隠そうとはせずに、援軍を求められるままに信玄と戦っていたら、知らぬ間に信濃の国人達である高梨家や村上家といった名門達が家臣団に入っていた。


氏康率いる北条家は一門衆の結束の強さ、内政統治の巧みさと、近隣の領民を難民化させ、自領にて受け入れて、相手の国力を低下させじっくり境界線を広げてきた。


それら同世代の英雄の死を相次いで接したことで、自身にも確実に訪れるであろう『死』を意識せざるを得なくなった。

人間とは何かきっかけがなければ自分に不幸が訪れる事など実感がわかないのである。



謙信の中での正義とは、あくまでも幕府という武家の棟梁が頂上に居て、日の本を束ね、臣下達は、反幕府勢力を征伐してくのが当然であった。


自分の中では国というのは、越後であり、全国の国主達に官位や役職と言った権威で動かしていく『将軍』こそが天下人であるはずである。


しかし、周りを見渡してみると、北条家、武田家、毛利家、織田家に至っては将軍家の支配力なんかを遥かに凌駕した勢力に成長していて、日の本よりもお家の事を第一に考える有様である。


謙信には理解が出来なかった。

なぜそこまで人の者を奪ってまで国を大きくしたいのかと・・・・。

自身に血を分けた子がいない謙信には到底理解が出来なかったのである。

信玄にしろ、氏康にしろ、後世の子孫のために家を盤石にしたいという気持ちを謙信は理解できなかったのである。


謙信にも後継者と言うべき青年が二人控えている。


一人は自身の姉、仙桃院と上田荘坂戸城主で長尾政景の二男であり、現在は謙信の養子である上杉景勝。

もう一人は北条氏康の七男であり、謙信の姉、仙桃院の長女と結婚し、これもまた、謙信の養子に入った上杉景虎である。


謙信はこの二人に長尾上杉家を相続させるつもりで、互いに競い合わせていた。


実際この二人は互いにライバル心を見せながらも仲良く、能力も申し分ない、謙信はどちらに家督を譲るかを正式に決めなくてはいけない時期に来ている事を、幾度も戦いを繰り広げた敵将の死で悟ったのである。




信長はその頃、出来上がりを迎えた戦闘艦に乗り込み、今までの和舟の走波性とは格段の違いを、海の素人である信長にもはっきりと感じられた。


約2000トンにも及ぶ巨大な船体には4本のマストがそびえ立ち、見た目は当時スペインなどで外洋に使われたキャラック船を発展させた形になっていた。


具体的には薄い鉄板にて装甲している為に船体安定を優先させている為に、全長と幅の対比が2.5対1と、随分ずんぐりむっくりではあるが、その分転覆の恐れは少なかった。


船幅がひろくなった分速度は遅くなったが、元来ガレー船主体の和舟の速度に比べれば随分船足は速く、万が一の為に櫂でも走行出来たのである。


砲台も備え、幅の広い船首を生かし、前面砲台、後方砲台、側面砲台と攻撃面に死角はなく、大砲の周りを薄い鉄板にて囲み、鉄砲の弾、矢などから砲手を守る防御方法として新しく採用された。


先の海戦で、信長が受けた衝撃は計り知れなく、さらに海軍衆の補充は大変難しい事を知った信長は、今まで以上に死を受け入れるのを嫌がったのである。


鉄砲で撃たれるのなら、撃たれても大丈夫な方策を考える。


燃やされるのなら、燃やされても大丈夫な方策を考える。


これを家臣の意見も参考にしながらも、独自の発想により、キャラック船の本家であるスペインにも無い発展型の装甲戦艦を世界で初めて作ったのである。

これを率いるのは、織田水軍衆筆頭九鬼嘉隆なのだが、彼は今回の信長の執念やまったく新しい船の建造、それを執行できる職人集団、経済力に改めて驚愕し、信長の見ている先を感じ取ったのである。

「信長様にゃあ、日の本は狭いんであろうよ」

嘉隆は伊勢より大阪に向けて船を走らせていく・・・・・。


今回7隻に付けられた船の名前は『尾張』『伊勢』『美濃』『近江』『大和』『越前』『若狭』これは現在、信長の経済支配国の名前である。


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