被害
俺は、朝起きて、シャルナが作った飯を食べてリビングで冷えた麦茶という茶を飲んでテレビを見ていた。
「速報です。今朝4時頃滋賀県米原市横田町にて20代女性の遺体が発見されました。犯人は今も逃走中です。夜は皆さんもお気をつけてください。また……」
世の中物騒なんだな……この世界も……
「また殺人?怖いね〜」
「れいかはだいじょーぶ!」
「2人共、帰り気をつけてね」
「ありがとう。シャルナちゃん。じゃあ行ってきます」
「行ってらっしゃい」
「行ってら」
「ばいばい!」
2人は学校と幼稚園。
帰り危ないよな〜魔獣とかの被害なら俺らの世界もあったけどな。
この世界では、獣なら、熊の被害が多いらしいし……何かあったらシャルナを守れないじゃないか……レオンなら軽々と剣術で守るんだろうなぁ……
◇◇◇
夕方、部活があっても遅い……今、19時だぞ?
「やっぱり心配……」
「買い物でもしてるんだろ」
「でも、もう8時だよ?」
「探しに行くか?」
「うん」
細かく見れば55分だ。
流石におかしいか……
玄関を出て鍵を閉める。
「ルイト、鍵閉めた?」
「閉めた」
「じゃあLet's Go!」
こうして夜の街へ繰り出した俺とシャルナ。
しばらく歩くと、レナが通っている中学に着いた。
教員に聞くと、とっくに帰っていると言っていた。
おかしい……幼稚園も同様。
殺人が起こった所って……確か路地裏……まさか……な……
「路地裏行ってみるか?」
「うん……レナちゃんとレイカちゃんいるかもだしね……」
暗くて一見何もないような顔をしているが、明らかに顔が真っ青。引き返すか……シャルナの為だしな
「ルイト?引き返そうとしないで?」
なんでわかんだよ……
「表情から読み取ったのである!」
「じゃあ行くか……」
「ゴー!」
しばらく路地裏を歩くと、微かに誰かが倒れていた。
「ねぇ……あれって……」
そっとシャルナに行かないよう手を出し制止し、俺だけその誰かに近寄る。
その人は、白いセーラー服が血に染り、レイカを庇うように倒れていたレナだった。
間に合わないかもしれない……まず、体を揺すり、起きているか確認する、
「レナ!レナ!起きろ!レナ!」
微かに指が動いたのを見逃さなかった俺。
服を破り、腹部付近を傷口の上から縛り、出血を減らす。
シャルナが借りていたスマホで救急車を呼んだらしく、サイレンが遠くで鳴り響いていた。
「ル……イト……逃げ……レイカを……」
逃げろってか?まだ犯人は近くに……
レイカの首に指を当てると、微かに鼓動はあった。気絶しているだけだな……
「んんっ!」
口を塞がれて、無理やり出している声が聞こえ、振り向く。
シャルナが黒い男に腕で高く落ちあげられ、拘束されている。
「静かにしろ……じゃないとこの女を殺す」
殺す?意味不明……レナが学校で要るのと言って鞄にハサミを入れていたことを思い出し、鞄を漁り、ハサミを手に取る。
首に刃物が当たる寸前で持っている相手。おそらく敵わない。けれど、やるしかない。
用心用で習っていた弓……弓は無いが、矢の代わりのハサミならある……槍も習っていた……槍の代わりならいけるかもしれない……
ハサミを半分に分解し、相手の足に向かって投げる。殺傷能力はほぼ無いだろう……少しでも怯んだ時、奪い返す。
当たった時、相手は少し足を上げた。その時、シャルナが足を振り上げ、男の急所に思いっきり踵をぶつける。
そうして、離されたシャルナは、相手が持っていた刃物を回収し、こっちに来る。
「クソッ……」
そう言って、急所を押さえながら去る犯人。
逃がすかよ!走り出そうとした時、誰かに足を掴まれる。レナだ。
「殺さ……れ……る……」
そういえばレナのことを忘れていた。
しまったしまった……こっちが先なのにな……
サイレンが近くに感じられたので、場所を伝えるべく、路地裏を抜け、案内して、その後事情聴取されて色々聞かれてパンク寸前な俺とシャルナだった。
今回は、これまでの“ほのぼの現代生活”から一転して、物語が大きく動き始める回になりました。ニュースで流れた殺人事件が、まさか自分たちの身近な人に直結するとは思わず、読者もルイトと同じように胸がざわつく展開だったと思います。
レナがレイカを庇って倒れていたシーンは、これまでの明るい日常との落差が強烈で、ルイトの焦りや判断の速さ、そしてシャルナの必死さが一気に浮き彫りになりました。異世界では魔獣と戦える2人でも、現代の“刃物を持った人間”の前では思うように力を使えない。その無力感が、今回の緊張感をさらに高めていました。
それでも、ルイトが咄嗟にハサミを武器に変え、シャルナが一瞬の隙を突いて反撃する場面は、2人がただの異世界人ではなく“生きるために戦ってきた者”であることを思い出させてくれます。
そして、レナが最後の力でルイトの足を掴むシーンは、彼女の強さと恐怖が混ざった、とても印象的な瞬間でした。
日常の裏に潜む危険、守りたい人がいるからこその焦り、そして現代世界の“理不尽さ”。
物語はここから、さらに深い部分へ踏み込んでいきそうです。




