現代転移?!
黒い渦に巻き込まれた俺とシャルナ。
咄嗟にシャルナを腕で包み込んだ瞬間、強い衝撃が走った。
『痛っ……』
腕の中を見ると、シャルナは何故か眠っている。
無事ならいいが……。
ゆっくり体を起こし、周囲を見渡す。
『ここは……?』
学園ではない。
地面は妙に綺麗で硬い石のようなもので舗装され、
見上げれば高くそびえる建物。
見たこともない形の乗り物が走り抜けていく。
そして、
『魔力が……ない?』
大地から感じるはずの魔力が、まるで存在しない。
これでは魔術が撃てない。
いや、それどころか——
『言語も違う……?』
小さい頃から全国各地の言語を叩き込まれ、
大抵の言葉は理解できるはずなのに、
聞いたこともない音だ。
これは……思ったよりヤバい。
その時、腕の中のシャルナが目を覚ました。
『……ふぁぁ……ルイト?』
『起きたか。どうやら、非現実的なことが起こってるらしい』
『ん?って、魔力ないじゃない?!』
『そうだぞ』
『え〜不便……水球作ってみようかな』
『やめとけ。魔力枯渇で倒れるぞ』
というか、できないだろ。
『いいからいいから。水系統魔術ー水球』
ふわっ。
目の前に、水の球体が浮かんだ。
『は?』
『できたよ?』
『……俺も。水系統魔術ー水球』
……出ない。
『魔力量が関係するのか?俺は一般人より多い方だが……』
『え?ボーストレインくらいだよ?魔力枯渇になったの』
思わずジト目になる。
シャルナの魔力量が幾何学外なだけだったな……
『恐れ入ったか〜!』
『でもやめとけよ。ここじゃ魔力補給できない』
『はいはい……』
シャルナが言った瞬間、水球は地面に落ち、
石のような道路に吸い込まれるように消えた。
どんな仕組みだ……?
『ここの言語が分からないんだ』
『ん〜確かに……』
『小さい頃に全国各地の言語を叩き込まれた俺でも解読不可だ』
『それヤバくない?』
『ヤバい』
『ヤバいかぁ〜』
『とりあえず移動するか』
『そうだね』
歩いていると、人が乗った謎の乗り物が横を通り過ぎ、
その度にシャルナが小さく跳ねる。
しばらく進むと、大きな橋が見えてきた。
『渡るか』
『うん』
ビーッ!
突然、甲高い音が鳴った。
うるさい……。
「信号赤だろ!気をつけろ!」
なんて言ってるんだ……?
とりあえず頭を下げておく。
悪いことをしたのだろうか。
「こんな夕方に大丈夫そ?」
背後から、聞き慣れない声がした。
第1話を読んでくださりありがとうございます。
シャルナとルイトが突然黒い渦に巻き込まれ、気づけば見知らぬ世界に立っていたわけですが、2人にとっては本当に“理解不能の連続”だったと思います。
魔力の気配がまったくない土地、見たことのない建物、謎の乗り物、そして言語すら通じないという状況は、学園での生活とはあまりにもかけ離れています。
シャルナが水球を出せてしまったのは、彼女の魔力量が常識外れである証拠であり、落ちた水球が道路に“吸い込まれるように消えた”のは、単に舗装された地面に染み込んだだけという、異世界人らしい勘違いも今回のポイントです。
また、信号に怒られたわけではなく、信号無視をしたことで車の運転手に注意されるという、現代日本ならではのトラブルもありました。
この世界のルールを知らない2人にとっては、何が危険で何が普通なのかすら分からない状態で、読者としてもハラハラする場面だったのではないでしょうか。
この時点ではまだ、2人がどこにいるのか、誰に出会うのか、何が起こるのかは分かりませんが、背後から聞こえたあの声が、物語を大きく動かすきっかけになります。
次回は、橋本麗奈と麗香という姉妹との出会いが描かれます。
ここから2人の“現代日本での居候生活”が本格的に始まり、同時に学園側ではレオンが奔走し、ヤミルのリミッターが外れ、リアンがブラコンを発動し、ミミルが呆れ、ラファエルが静かに見守り、学園長の胃が痛み、シグルがシャルナを探し回るという大騒ぎが起こっています。
本編とはまた違ったテンポで進むスピンオフですが、2人の成長や新しい出会いを楽しんでいただければ嬉しいです。
明日第2話を出すので、ぜひ読んでみてください。




