勇者対魔王の普通なお話
完全にリハビリのために書いた物語です
「ふははは、これで世界は我のものだ!」
魔王は玉座にふんぞり返ってそう高らかに笑った。その背後にはとんでもなく大きな転移門が聳え立っていた。
現在、魔界にいる全ての魔物を転移門で現世に転送し、それを使って人間を虐殺し始めたところだ。
魔王城の周囲の村はすでに壊滅した。もうすぐ王都にすら届くであろう。一つ国を落とせばさらに次の国を落とす。ただそれだけのこと。現世を新たな魔界へと変える準備はすでに整った。人間なぞ一人残らず消えるがいい。
側近たちは魔物たちの指揮のため、皆出払っている。無論、我がやられるはずもない。念の為に魔王城周辺にも魔物は多く配置しているし、問題は何もないはずだ。
しかし、なんだろう。この胸騒ぎは。いつもなら近くにいるはずの側近たちがいないからだろうか。それとも、いや、ひょっとして…
「魔王はここか!」
声のした方を見るとそこには男の人間が一人、剣を構えて立っていた。なんともまあ弱そうな男だ。
「ああ、我だが?」
「なぜ、こんなことをした?今までは、魔王城と王国には協定が結ばれて人間と魔物は互いに不可侵だったはずだ!」
「なぜって…まあ、やってみたかったんだよ」
「あんな虐殺をか?!」
「いいや、違うね。魔物の可能性っていうやつがどこまであるかみてみたかったのさ。人間もそうだろう?己の限界を知りたかっただけさ。それを不可侵協定なんていう意味もわからぬものに縛られるなんてクソ喰らえだ」
「じゃあ、教えてやる。人間の可能性ってやつをな!」
そういうとその男は剣を強く握った。するとその剣はまばゆい光を放ち始めた。
「それは…聖剣というものか?」
あれはまともにくらえばまずいな。聖剣はどんな魔物でも一撃で屠れると言われている。
しかし、聖剣は強大な魔力を消費するため、今まで扱えるものがいなかった。まさか、この貧弱そうな男が扱えるとでもいうのか?!
「そうだ。俺は生まれた時から魔力が多くて、体がそれに耐えきれずいつも苦しんでいた。それが逆に聖剣を使える理由になったようだな。最も、使えば使うほど魔力は減るだろうが、お前の前でなら無限に魔力は出せそうだ」
「そうか。だが、当たらなければどうというものではない!」
その瞬間、男の周りを影が取り囲み、一気に包み込んだ。そして飲み込んだ。
先手必勝だ。男がごちゃごちゃ言っている間に背後から影攻撃を忍ばせて一斉に襲わせた。これで、奴も…
「聖剣エクサリバー!」
嘘だろ、おい!影攻撃が切れるわけが…
「うおおおお!」
しまった!自身を守らなくては!
「聖剣エクサリバー!」
その瞬間、我の体は上下真っ二つに両断された。我の上半身は玉座から転げ落ち、やつの目の前で止まった。
「これが、人間の可能性ってやつだ。思い知ったか、魔王よ」
「ふふふ。やるな、小僧。しかし、我を倒してもまだまだ魔物はいる。第二第三の魔王が現れ、必ずお前の喉元を…」
「ああ、そのことならもう解決したぞ。魔物は全員切ってやった。お前の側近っぽいやつもいたがみんなまとめて切ってやったぞ」
「なんだと?」
「ついでに今の攻撃で転移門も切れた。めでたしめでたしってやつだな」
「ちょっと待て。話の展開が早すぎるではないか」
「お前らが弱すぎるんだよ。この聖剣にかかれば向かうところ敵なしだからな」
「ああ、これが、人間と、いうものなのか…」
我の意識が薄れていく…奴は強すぎた…しかし、いずれはまた倒してやる…待ってろよ…勇者よ…
──こうして魔王の野望は潰えた。人間は勇者のおかげで魔物を根絶することに成功し、ますます栄えていったとさ。めでたしめでたし。
読んでいただき、ありがとうございました。




