第4話 薬草王への道!?心配性おじさんの備蓄大作戦
《【独占密着】引きこもり生活1か月目!薬草栽培で自給自足ライフ開始》
街での盗賊遭遇事件から2週間。俺は完全に人里を避ける生活を送っていた。
「やっぱり人と関わると面倒なことになる」
小屋の前で薬草の種を植えながら、俺は改めてそう実感していた。街で買った薬草の種は順調に芽を出し、小さな薬草園ができ上がりつつある。
トリカブト、ラベンダー、セージ、カモミール。毒草から薬草まで、バランスよく植えた。心配性の俺としては、いざという時のために備えておきたい。
「これで病気になっても安心だ」
金製サイコロの治癒魔法があるとはいえ、軽い症状なら薬草で治した方が回数を温存できる。
川魚たちも相変わらず元気だ。俺が池の周りで作業していると、寄ってくる。人懐っこい連中だ。
「お前たちが俺の唯一の家族だな」
餌をやりながら魚と会話する日々。他人から見れば寂しい光景だが、俺には平穏そのものだった。
《【緊急取材】謎の薬草発見で大興奮!しかし素人判断は危険すぎた...》
薬草園の世話をしていると、森の奥で見慣れない植物を発見した。
青い花びらと銀色の葉を持つ美しい草だ。魔法的な輝きを放っている。
「これは...何かの薬草か?」
俺は慎重にその草を観察した。いかにも効果がありそうな見た目をしている。
しかし、素人判断は危険だ。毒草の可能性もある。
「まずは少しだけ試してみるか」
俺は葉を一枚摘み取り、煎じて飲んでみることにした。万が一毒だった場合、金製サイコロの治癒魔法で治せばいい。
お湯で煎じた薬草茶は、独特の苦みがあった。
「うげ...まずい」
飲んだ直後は何も変化がなかった。しかし、30分後に異変が起こった。
体が軽くなり、視界がクリアになる。疲労感が一気に回復した。まるで栄養ドリンクを100本飲んだような感覚だ。
「これはすげぇ!回復薬草だ!」
俺は興奮した。これがあれば、重労働も楽になる。
早速、この薬草を薬草園に移植することにした。
《【衝撃事実】回復薬草の副作用で不眠症に!?夜中の奇妙な体験》
回復薬草(俺が勝手に命名)の効果は絶大だった。
一杯飲むだけで、一日中元気に作業ができる。薬草園の拡張、池の改良、小屋の増築。次々とプロジェクトを進めることができた。
しかし、問題もあった。
「眠れない...」
夜になっても全く眠気が来ない。回復薬草の副作用で、不眠症になってしまったのだ。
「参ったな...」
仕方なく、俺は夜中に散歩することにした。森の中を歩き回り、体力を消耗させて眠気を誘う作戦だ。
しかし、夜の森は昼間とは全く違う顔を見せる。不気味な鳴き声、暗闇で光る目。
「ちょっと怖いな...」
そんな時、森の奥で奇妙な光を見つけた。
青白い光が木々の間で点滅している。
「何だあれは?」
好奇心に負けて、俺はその光に近づいてみることにした。
《【超常現象】森の奥で遭遇した謎の光の正体は...まさかの精霊だった!?》
光の正体は、小さな人型の生き物だった。
身長20センチほど、透明感のある体、背中に小さな羽根。まさに童話に出てくる妖精そのものだ。
「あ...」
俺と目が合った妖精は、びっくりしたような表情を見せた。そして、慌てて茂みの中に隠れてしまう。
「待てよ」
俺は妖精を追いかけた。しかし、90キロの肥満体では、空を飛ぶ妖精に追いつけるはずがない。
「逃げちゃった...」
少し残念だった。この世界には妖精も存在するのか。もっと詳しく観察したかった。
しかし、翌日の夜、またその妖精に出会った。
今度は複数匹いる。5〜6匹の妖精たちが、俺の薬草園の周りを飛び回っている。
「俺の薬草に興味があるのか?」
妖精たちは警戒しながらも、薬草の香りを嗅いでいるようだった。
俺は試しに、回復薬草の葉を一枚、地面に置いてみた。
すると、妖精の一匹が恐る恐る近づいてきて、葉っぱを持ち去った。
「やっぱり薬草が目当てか」
それから毎晩、妖精たちは俺の薬草園にやってくるようになった。俺が薬草を分けてあげると、お礼に光る花を置いていく。
「これも何かの薬草かな?」
妖精からもらった光る花は、乾燥させて保存することにした。いつか役に立つかもしれない。
《【大発見】妖精との取引で希少薬草を大量ゲット!しかし心配性が災いして...》
妖精との物々交換は続いた。
俺が育てた薬草を分けてあげると、妖精たちは森の奥の希少な薬草を持ってくる。光る花、虹色のキノコ、星型の実。どれも魔法的な効果がありそうだ。
「これは宝の山だな」
俺は小屋の奥に薬草保管庫を作り、妖精からもらった希少薬草を大量に備蓄し始めた。
心配性の俺としては、いくら薬草があっても足りない。病気、怪我、毒、呪い。様々な事態に備える必要がある。
「まだまだ足りない...もっと集めないと...」
俺は薬草園を拡張し、より多くの薬草を栽培した。妖精との取引も活発化した。
気がつくと、小屋の半分が薬草で埋め尽くされていた。
「これで安心だ...いや、まだ足りないかも...」
心配性が暴走し始めていた。俺は薬草の収集に取り憑かれるようになった。
しかし、ある夜、妖精たちが来なくなった。
「あれ?どうしたんだ?」
いつものように薬草を置いて待っていたが、妖精は現れない。
3日待っても来ない。1週間待っても来ない。
「俺が薬草を取りすぎたのか?」
もしかすると、俺の貪欲さが妖精たちを怒らせてしまったのかもしれない。
自然の恵みを独り占めしようとした報いなのか。
「まあ、いいか。十分な量は確保したし」
俺は薬草保管庫を見渡した。ズタ袋に詰められた薬草が山積みになっている。これだけあれば、10年は安心だろう。
《【独白告白】静寂の山奥で見つけた真の平穏「人間らしい生活ってこういうことかも」》
妖精たちが来なくなって1か月が経った。
俺の生活は完全に安定していた。毎朝サイコロで金貨を稼ぎ、薬草園の世話をし、川魚に餌をやる。夕方は薬草の調合を試し、夜は保存食を食べて早めに就寝。
規則正しく、平穏で、誰にも迷惑をかけない生活。
「これが俺の求めていた人生だな」
小屋の前で夕日を眺めながら、俺は満足感に浸っていた。
コンビニでバイトしていた頃の窮屈な生活が、遠い昔のように感じられる。あの薄幸な40歳は、もういない。
今の俺は自給自足のスペシャリスト。薬草の知識も豊富で、サイコロの力で自衛もできる。完全に自立した人間だ。
「人と関わらなくても、こんなに充実した生活ができるんだな」
川魚たちが夕日に照らされて美しく泳いでいる。この純粋な生き物たちが、俺の心を癒してくれる。
「お前たちがいれば、俺は幸せだ」
そう思った時、遠くから煙が上がっているのが見えた。
「また村で何かあったのか?」
しかし、俺は立ち上がらなかった。村で何が起ころうと、もう俺には関係ない。
「俺は山奥の住人だ。人里のことは知らない」
そう割り切ることができるようになった自分に、少し驚いた。以前なら心配して様子を見に行ったかもしれない。
でも、今はもうそんな人間ではない。
静かな山奥で、魚と薬草と共に生きる。それが俺の選んだ人生だった。
*神界某所*
「おー、完全に引きこもりになったな」
ロキは水晶球を覗きながら笑っていた。
「妖精との交流もあったのに、結局は独りを選んだか」
フェンリルが興味深そうに尋ねた。
「親父、あのおじさん、もう普通の人間と交流できなくなってませんか?」
「そうだな。どんどん人間らしさを失ってる」
ロキは満足そうに頷いた。
「でも、そろそろ次の段階に進めてやらないとな」
「次って何をするんですか?」
「決まってるだろ?最高のエンターテインメントだ」
ロキの口元に悪趣味な笑みが浮かんだ。
「美女の登場だよ」




