第2話 銀のサイコロで最強軍団召喚!?肉体労働はゴーレムにお任せ
《【独占取材】川魚飼育で寂しさ紛らわし!40歳男の新たな趣味》
荒くれ者の一件から2週間が経った。
俺は死体を山の奥に埋めた後、誰も近づいてこない静かな生活を送っていた。毎日銅製のサイコロを3回振って金貨を稼ぎ、村で食料を調達。小屋での質素だが平穏な暮らしが続いている。
しかし、一人の生活はやはり寂しかった。
「誰とも話さない生活って、こんなにきついのか...」
俺は小屋の前に作った簡易的な池を眺めながらつぶやいた。川から引いた水路で、小さな魚を数匹飼っている。
「おーい、元気か?」
魚に話しかける俺。当然返事は返ってこない。
「俺も落ちたもんだな...魚と会話してる」
それでも、生き物の存在は心の支えになった。毎日餌をやり、水を替える。世話をする相手がいるだけで、生きている実感が湧く。
魚たちは俺になついているのか、近づくと寄ってくる。可愛いやつらだ。
「お前たちが俺の家族だな」
心配性の俺は、魚のために池を拡張することにした。しかし、一人で土を掘るのは重労働だ。40歳の肥満体には辛すぎる。
「はあ...はあ...もう無理だ...」
1時間で息が上がってしまった。この調子では何日かかるか分からない。
そのとき、革袋の純銀製サイコロが目に入った。
「そういえば、まだ銀のやつは使ってないな」
俺は2個の純銀製サイコロを手に取った。銅製よりも重厚感があり、美しい輝きを放っている。
「試してみるか」
《【衝撃映像】謎の巨人軍団が出現!おじさん、ついに軍団を率いるボスに!?》
サイコロを振った。「4」と「5」。合計9。
すると、俺の前に光の渦が現れ、そこから巨大な人型の存在が9体出現した。
「うわあああ!」
俺は腰を抜かした。身長2メートル以上はある、石でできたような巨人たちが俺を見下ろしている。
ゴーレムだった。
「ご、ご主人様」
ゴーレムの一体が、ドスの利いた声で俺に話しかけてきた。
「なんでもお申し付けください」
他のゴーレムたちも一斉に頭を下げる。
「え...えーっと...」
俺は混乱していた。まさか軍団を召喚してしまうとは。
「池を...池を大きくしてください」
恐る恐る命令してみると、ゴーレムたちは「承知いたしました」と答え、素手で土を掘り始めた。
その力は凄まじかった。俺が1時間かけても進まなかった作業を、あっという間に終わらせてしまう。10人力どころではない。
「す、すげえ...」
30分ほどで、立派な池が完成した。川から水を引くための水路も、石を組んで頑丈に作ってくれた。
「他にご用はございませんか?」
ゴーレムのリーダー格が尋ねてきた。
「あ...じゃあ、小屋も補強してもらえる?」
「喜んで」
ゴーレムたちは小屋の修理と補強も行った。歪んでいた壁を真っ直ぐにし、隙間を埋め、屋根も頑丈にしてくれた。
あっという間に、プロ級の山小屋が完成した。
「ありがとう...」
俺が礼を言うと、ゴーレムたちは光の粒子となって消えていった。
「時間制限があるのか...」
後で分かったことだが、ゴーレムは召喚から1時間で消える仕様だった。そして銅製サイコロと同じく、1日3回までしか使えない。
《【緊急レポート】凶暴ゴーレム軍団vs山賊!壮絶バトルの行方は...》
それから数日後、山小屋に厄介者がやってきた。
今度は山賊の集団だった。10人以上の武装した男たちが小屋を囲んでいる。
「金貨を持ってる野郎はお前だな」
リーダー格の男が俺を指差した。髭面で傷だらけの顔。完全にならず者だ。
「村で神聖帝国の金貨を使ってるって噂になってるぞ」
やはり金貨のことがバレていた。あの村で使ったのが失敗だったか。
「素直に渡せば命だけは助けてやる」
山賊たちは武器を構える。剣、斧、弓矢。俺一人では絶対に勝てない。
「わ、分かりました...」
俺は革袋に手を伸ばしたふりをして、純銀製のサイコロを握った。
「でも、ちょっと待ってください」
「何だ?」
「これから出てくる連中は...ちょっと凶暴なんで」
俺はサイコロを振った。「6」と「6」。最高の出目だ。
12体のゴーレムが出現した。
「な、何だこいつらは!?」
山賊たちは驚愕した。当然だろう。いきなり12体の巨人が現れたのだから。
「ご主人様、こいつらを始末いたしますか?」
ゴーレムのリーダーが俺に尋ねた。その声音には、明らかに殺気がこもっている。
前回の池掘りとは違い、今度のゴーレムたちは戦闘モードのようだった。
「ま、待て!話し合おう!」
山賊のリーダーが慌てるが、もう遅い。
「始末してください」
俺がそう命じた瞬間、ゴーレムたちが動いた。
それは一方的な虐殺だった。
山賊たちの武器は、ゴーレムの石の体にはほとんど効果がない。逆にゴーレムの一撃は、人間を簡単に吹き飛ばしてしまう。
「ぎゃあああ!」
「化け物だ!」
悲鳴と肉の潰れる音が森に響いた。
10分ほどで、山賊たちは全滅した。
「お疲れさまでした、ご主人様」
ゴーレムたちは何事もなかったように報告する。
「あ...ありがとう...」
俺は震えていた。また人を殺してしまった。しかも今度は10人以上だ。
「死体の処理はいかがいたしましょうか?」
「え?」
「山に埋めますか?それとも川に流しますか?」
ゴーレムは死体処理まで提案してくる。
「う、埋めて...ください」
「承知いたしました」
ゴーレムたちは手際よく穴を掘り、山賊たちの死体を埋めた。証拠隠滅まで完璧だった。
そしてゴーレムたちは消えていった。
俺は一人、血の匂いが残る現場に立ち尽くしていた。
《【独占インタビュー】大量殺戮後のおじさんの心境は...「罪悪感より安堵感」》
その夜、俺は小屋の中で膝を抱えて座っていた。
「俺は...化け物になってしまったのか...」
一度に十数人を殺した。しかも、ゴーレムに命令しただけで。自分の手を汚すこともなく。
しかし、罪悪感よりも安堵感の方が強かった。
「でも...これで平穏に暮らせる」
山賊が全滅したことで、この縄張りを狙う者はいなくなるだろう。俺の山小屋は完全に安全になった。
「それに...向こうから襲ってきたんだ。正当防衛だ」
自分を正当化する理屈を考える。山賊が悪い。俺は被害者だ。
「そうだ...俺は悪くない」
そう言い聞かせることで、俺は心の平静を保った。
これまでの薄幸な人生で、俺は他人に迷惑をかけずに生きてきた。しかし、生き残るためなら、多少の犠牲は仕方ない。
そんな風に考えるようになった自分に、少し怖くなった。
「山奥の生活が俺を変えたのか...それとも、このサイコロの力が俺を変えたのか...」
答えは出なかった。
ただ、川魚たちが俺を慰めてくれているようで、少し救われた気持ちになった。
「お前たちだけは、俺を裏切らないよな」
魚たちは何も答えないが、俺の指に寄ってくる。この純粋な生き物たちだけが、俺の心の支えだった。
《【速報】金製サイコロの謎に迫る!まさかの治癒能力が判明》
翌朝、俺は池の掃除をしていて足を滑らせ、岩で膝を強打した。
「痛てて...血が出てる」
結構深い傷だった。このままでは感染症が心配だ。薬もないし、村まで治療に行くのも面倒だ。
「そういえば、金のサイコロはまだ試してない」
俺は純金製のサイコロを取り出した。最も重厚で美しいサイコロだ。きっと特別な能力があるはずだ。
「頼む、治療系の能力であってくれ」
サイコロを振る。「3」と「4」。合計7。
すると、俺の体を温かい光が包んだ。膝の傷がみるみる治っていく。痛みも消え、傷跡も残らない。
「すげえ...完全に治った」
治癒魔法だった。それも強力な。
俺は試しに、わざと手をナイフで切ってみた。そして再び金製サイコロを振る。今度は「6」と「5」。合計11。
さっきよりも強い光に包まれ、傷が瞬時に治った。どうやら、サイコロの目の数に比例して治癒力が上がるらしい。
「これで怪我の心配はなくなった」
金製サイコロも1日3回制限があることを確認した。しかし、この能力があれば病気や怪我を恐れる必要がない。
山奥の一人暮らしで最も怖いのは、病気や怪我だった。それが解決されたことで、俺の生活はより安定したものになった。
「あと残ってるのは...プラチナのやつか」
俺は最後の純プラチナ製サイコロを見つめた。最高級の材質。きっととんでもない能力があるはずだ。
しかし、今日はもう疲れた。プラチナのサイコロは明日試すことにした。
*神界某所*
「おー、順調に俺のペットが成長してやがる」
ロキは水晶球を覗きながら上機嫌だった。
「ゴーレムで大量殺戮かよ。面白れーじゃねーか」
彼の影で、フェンリルが呆れたような表情をしていた。
「親父...あのおじさん、どんどん人間らしさを失ってきてませんか?」
「それが狙いだよ。人間ってのは、力を与えると本性を現すもんだ。特にあいつみたいな薄幸な野郎はな」
ロキは悪趣味な笑みを浮かべた。
「まあ、まだ序の口だ。本当の地獄はこれからだぜ」
神界に邪悪な笑い声が響いていた。




