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プロローグ 神様との最悪な出会い

《40歳、コンビニバイト、人生詰んだ!?》


午後11時。コンビニ「ファミマート上野店」の蛍光灯が、俺の薄くなった頭頂部を容赦なく照らしていた。


「お疲れさまでした」


店長の若造に頭を下げて、俺は店を出る。40歳にもなって、22歳の店長に頭を下げる惨めさ。これが俺の人生だった。


田中誠。身長160センチ、体重90キロの肥満体。白いTシャツに紺のジーパン、白いスニーカーという、どこにでもいそうな格好。薄毛が進行中で、彼女いない歴40年。安アパートに一人暮らしで、唯一の楽しみはYouTubeを見ることだけ。


まさに「薄幸」という言葉がピッタリの男、それが俺だった。


「はあ...今日も疲れたな」


人通りの少ない夜道を歩きながら、俺は小さくため息をついた。今日の稼ぎは7000円。時給1000円で7時間。交通費を引けば手取りは6000円ちょっと。これで家賃6万円のアパートと食費を賄わなければならない。


「山奥でひっそり暮らせたらなあ...」


俺の唯一の夢は、人里離れた山奥で、誰にも迷惑をかけず、静かに暮らすことだった。コンビニの客も、若い店長も、近所の住人も、みんな面倒くさい。人と関わらずに済むなら、どれほど楽だろうか。


そんなことを考えながら歩いていたとき、背後から足音が聞こえた。


振り返ると、フードを被った男がナイフを握りしめてこちらに向かってくる。


「金を出せ!」


通り魔だった。


俺は咄嗟に逃げようとしたが、90キロの肥満体では素早く動けない。男のナイフが腹部に深々と突き刺さった。


「あ...がっ...」


激痛が走り、俺は路上に突っ伏した。温かい血が腹から流れ出していく。男は俺の財布を奪って走り去った。


「助け...て...」


消え入りそうな声で呟いたが、この時間の住宅街に人影はない。俺は出血多量で死にそうになりながら、アスファルトの冷たさを感じていた。


このまま死ぬのか。40年間、ろくなことがなかった人生の最後が、通り魔に刺されて路上で孤独死とは。なんて惨めな終わり方だろう。


そのとき、足音が聞こえた。


《【緊急事態】謎の男現る!夜なのにサングラス、アロハシャツで威圧感マックス!》


「ここに寝ると風邪引くぞ」


見上げると、身長2メートルはありそうな男が、俺を見下ろしてウンコ座りをしていた。


金髪に夜なのにサングラス。黄色地に赤いハイビスカス柄のアロハシャツを下着なしで着て、首には金のネックレス。黒い革ズボンのベルトには、純銀製の骸骨が口を開けて叫んでいるバックルが光っている。足には革のブーツ。


完全にチンピラだった。引き締まった細身の体は筋肉質で、近づくだけで威圧感がある。


「あ...助けて...」


俺は消え入りそうな声で助けを求めた。


すると、その男は立ち上がると、俺に向かって中指を立てた。


「嫌だね」


ファックユーのポーズだった。


「え...」


俺は絶句した。通り魔に刺されて瀕死の状態なのに、助けを拒否するとは何事だ。


男は俺を見つめたまま、何かを考えているようだった。そして突然、面白そうな顔になった。


「お前、異世界いけよ」


「は?」


「お前みたいな無能でも生き残れるように、俺のギフトやる」


男は革袋を俺の前に投げ捨てた。袋からは、カラカラと金属音が響いた。


「異世界いけよ!」


男がそう叫んだ瞬間、俺の体を温かい光が包んだ。腹の傷がみるみる治っていく。そして、意識がだんだん遠くなっていく。


「ちょ、待っ—」


俺の声は虚空に消えた。


《【衝撃の真実】謎の男の正体は神だった!?》


気がつくと、俺はどこかの山奥にいた。


周りは深い森で、夜空には見たことのない二つの月が浮かんでいる。腹の傷は完全に治っており、手には革袋が握られていた。


「なんだこれ...」


袋を開けると、中からいくつかのサイコロが出てきた。銅製、銀製、金製、そしてプラチナ製。それぞれ2個ずつ入っている。


俺はまだ、自分が異世界にいることに気づいていなかった。あの男がロキという神様で、俺が彼のペットとして異世界に放り込まれたことも知らなかった。


そして、俺の影の中にフェンリルが潜んでいることも、当然知るはずがなかった。


俺はただ、人通りの少ない山奥で、やっと静かに暮らせると安堵していただけだった。


しかし、神々の思惑と、美しい王女との出会いが、俺の望む平穏な生活を根底から覆すことになる。


これは、40歳の薄幸なおじさんが、異世界でもモブとして生きようと悪戦苦闘する物語である。


**—神様ロキの暇つぶしが始まった—**


*神界某所*


「くくく、面白くなりそうじゃねえか」


アロハシャツの男—ロキは、水晶球に映る俺の姿を見ながら、悪趣味な笑みを浮かべていた。


「俺のペットがどんな騒動を起こすか、楽しみだぜ」


ロキの笑い声が神界に響いていたが、当然ながら俺には聞こえない。


俺は革袋を肩にかけ、新しい住処を探すため、月明かりの中を歩き始めた。


まさか自分が、神の気まぐれな実験台になったなんて、夢にも思わずに。

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