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サソリ女

 戸崎とざき ゆうは今、猛ダッシュで階段を駆け上がっている。 それでもカシャカシャ…カシャカシャ…と不気味な音が優を追いかけ近付いてくるのが解る。

(諦めてくれよ…)

と優が願っても、目の前に見えて来たのはこの高校の屋上だった。

 思い切り屋上のドアを開けすぐドアを閉めて身体でドアが開かない様に押さえていた。

 階段を駆け上がって息切れしている優の鼓動は早くなり全身の汗が止まらない。

 恐怖の中、耳を傾けてると一瞬の静寂があった。

(諦め…たか…⁈)

と思った瞬間、優は宙を舞っていた。

とてつもない力でドアを壊されたせいで、優は簡単に吹き飛んだのだ。

 幸い優の意識がしっかりしていたのは、着地した時の体勢がうつ伏せで両腕が顔面を守ったからだろう。それでも、顔や両腕の至る所に擦り傷はあったものの、優はすぐ起き上がり目の前の怪物を見上げていた。

『これは…夢なのか⁈』


 優の目の前に居るのは大きなサソリの様な身体、

しかも身体は赤い。まるで沸騰された伊勢海老を想像させる。

(伊勢海老は高級で中々食べれないが俺は好きだ!

いや、今はそんな事を考えてる場合じゃない‼︎)

そして顔はなぜか人間の女なのだ。

『現代にこんな怪物は居るのか⁈テレビやアニメの中の世界のモノじゃないのか⁈』

しかもこの女の顔、どこかで見た様な…⁈

 優がそう思ってると再びカシャカシャ…と怪物が近付いてくる。

優は逃げるが屋上は柵に囲まれ逃げ場が無い。

 とうとう柵まで追い詰められた優は

『これは現実なのか?』

もう逃げられないと絶望感で死を覚悟した時、

 サソリ女はしっぽの針を優に向かって振り下ろしてきた。


 その瞬間、優は屋上から飛び降りた。

飛び降りたのに、ゆっくり時間が流れてるかの様に周りの風景がはっきり見える。

(死ぬ時はこんな感じなのかな?)

優はそう思ってると、虹色のホールが急に出現し

自分がそこに吸い込まれた行くのがわかった。

真っ逆さまに飛び降りてる状況で、抵抗するのは不可能だった。



◇◇◇◇



 目を開けると、辺りは真っ白な世界。正確に言うと雲で覆われている様な、霧が深いのか回りの景色が全く見えない。

『俺は気を失っていたのか?』

足元を見ると、アスファルトではなく、ジャリ道だ。

(このジャリ道を進んでみるか)

と歩こうとした優は

(何か着てる服がキツイな…)

と身体を見てみると、学生服のズボンから足がはみ出し、ベルトもキツイ。ワイシャツの胸ボタンが幾つも千切れており、手首のボタンも千切れ両腕が伸びていた。

『何だ?俺は成長したのか?』

と戸惑っていると

『よくこの世界に来たな』

と目の前に白い長髭を蓄えた、古代ローマのトガの様な服を着た老人がこちらにやって来た。

(ここに人が居たのか!)

優は警戒しつつ驚きを隠しながら聞いてみた。

『貴方は誰ですか?ここはどこですか?』

『ワシは魔物や怪物を倒す者を育てる訓練士のマローだ。ここは地球でも宇宙でもない。異世界と呼ばれとる。』

『訓練士?異世界?』

『お主がこのレインボーホールに来てから10年が経った。ほれ、身体も成長しとるじゃろ?』

(だから服がキツかったのか…しかも10年も意識を失ってたなんて…)

『お主が10年分急激に成長したのには理由わけがあるのじゃ。 して、お主の名は?』

『戸崎 優です。』

『あのサソリの様な怪物女は若い男のエキスをしっぽの針を使って吸い、若さを保っている。お主が高校の屋上で飛び降りた様に、近隣の高校でも沢山の男子学生が屋上まで追い詰められて飛び降りてな…その者達もこのレインボーホールでそれぞれ訓練しておるのじゃ。今後あのサソリ女の犠牲者が出ぬ様に、お主も助けてくれないか?』

『助けるって…あのサソリ女を倒す方法はあるんですか?』

『ワシはその為の訓練士じゃ。これからはワシが合格と決めるまで訓練に付いてきて欲しい。』

『わかりました。しかし私は10年経ってますから26歳だと思うのですが、服がキツイのです。』

『おお そうじゃったな ちと待て。』

とマローが右手を伸ばし円を描き、その円を軽く優に向けて放った。

 優に軽い衝撃が走ったと思ったら学生服は消え

あずき色のジャージ姿になっていた。しかも上下共外側にやや太めの白い線が2本入っている。

(ダサっ)

優は思わず言ってしまいそうになったが

『ジャージですか…?これって体育の授業みたいですね…』

『動きやすい方が良いと思っての』

 マローの発想に〝お茶目な方だ〟と優は思った。


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