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終業式の日

 前日の12月20日(金曜日)。


「……明日から冬季休業(ふゆやすみ)だが、あまりハメを外して大人に迷惑をかけるんじゃないぞ。じゃあ、解散」


 担任の言葉を合図に、立ち上がった生徒たちがガタガタと机や椅子を鳴らす音で教室は俄然騒がしくなる。


「おい、みんな、あんなクラス転移があったあとで、どうして何事もなかったようにしてられるんだ?」


 みんなが教室を出てしまう前に言わなきゃいけない、と、オレは立ち上がって大声で言う。


 同級生たちは困惑したようすでオレを見ていたが、一人が

「なんだ、クラス転移、って?」

と言うと、周りも口々に勝手なことを言い始める。


支倉(はせくら)ったらぁ、夜通しえっちなゲームでもしてて、終業式の間に居眠りして変な夢でも見てたんじゃないのぉ?」


「やだぁ、支倉へんたーい!」


「朝、クラス全員で一緒に体育館まで行っただろ、で、退屈な校長の話を聞いて、教室に帰ってきただろ。

 その間の、いつ、どこに、だれが転移したんだよ」


「支倉、お前、異世界で無双してたの? 呪文唱えてみ? ほら、『ファイアボール!』、とかさ」


「なにあいつ、高校生にもなって厨二病?? キモっ」


 みんな言いたい放題だ。


「体育館に移動する前にみんな教室で座って待ってたら、教室が白い光に包まれて、アラザール公国の宮廷に転移させられただろ。それからカーマイン公女に率いられて、騎士団と森に魔物討伐に行ったじゃないか。

 最後にどうやって帰ってきたのか、そこのとこはオレもよく思い出せないけど、気がついたら全員この教室に戻っていて、もう終業式は終わったあとだった。

 本当にだれも覚えてないのかよ」


「なに言ってんだ、支倉。みんな終業式には出てたし、おまえが体育館にいたのもボクは見てるよ。

 支倉が突然持ち出したクラス転移のヨタ話、最初は面白かったけど、あんまりしつこく言ってると、ジョークとしてもくどくて詰まらないぞ」


「なんだよ、オレの妄想だっての? 終業式に出てた、っていうなら、校長がどんな話したか覚えてる奴いるか? 誰か、言ってみろよ」


「無茶言うなよ、支倉。あんなの誰も聞いてねーよ」


「耳には入ってても、右から左にすぐ抜けるっしょ」


「まだ言ってンの? 支倉イタい奴ぅ〜」


「かえろかえろ」


 気がついたら、クラスメイトは帰ってしまって、イタい奴認定されたオレひとりが教室に残っていた。


 仕方ないので、オレもカバンに机の中身を移して、ひとりでショボクレて帰宅した。


 晩飯時も、風呂に入るときも、何だかずっと上の空で、両親にも心配された。


 パジャマに着替え、ベッドの上で「一体、あれは何だったんだ」とぼうっと考えていたら、スマホがブルっとした。


 起き上がって椅子にすわって画面を見たら、未夜(みや)からのメッセージが来ていた。


「明日、部屋行ってもいい?」


 あんまり久しぶりだから面食らって、オレは椅子からころげ落ちた。


「もう休みだし、あんまり早朝は困る。8時以降なら」


 そう返信しただけでどっと疲れが来て、オレは寝落ちした。


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