『040 せりかがネットカフェに来る』
『040 せりかがネットカフェに来る』
「ペドロ、会いたかった」
「うううう、マジか、せりか」
俺がいる部屋に来たせりかは、いきなり俺の横に座ってきて抱き着く。
イスはなくてフラットシートの部屋だった。
こんな状況は誰かに見られたらヤバいだろう。
「昨日さ、ペドロに助けられて嬉しかったわ。メッセージを待っていたのよ」
「俺のことは日本ではテレビではやっているのかな」
「うん、ペドロが流れている。日本で知らない人はいないと思う。渋谷でスライムとかを剣でぶった切る映像が流れている。ビルには防犯登録のカメラがあるから撮影していた。頭のいい学者が出てきて理解できないが、現実にゲームの世界に転生して、そして渋谷にも現れていると言っていた。物理的に不可能で、どんな原理か不明だってさ。でもゲーム専門家は、運営会社は最新の科学研究をしていて、その成果ではと聞いていた。量子とかなんとか言っていたけど、よくわからない話だったかな」
「量子か。俺も知らないな」
「でもこうして私とペドロはフラットシートにいるのは現実よね」
「うん現実だ。今日はグループのみんなとは別行動かな?」
「別です。みんなはどこかなわからないや」
「あ~~~何をしていますの、せりか」
急に個室に入ってきた女子。
「るりるり?」
「どうして、るりるりがここにいる?」
「せりかが怪しいと思ったの。急に渋谷に行くって言うからさ」
「私を付けて来たのか」
るりるりだった。
せりかを怪しいと思ったらしいが、俺と会うのは怪しいのかな。
「抱き合ってます。ズルいです。せりかズルいです。ナギもする」
「ナギもか」
「ナギはるりるりの後を付けました。尾行です」
ナギも来たのか。
個室に入って来るのは良いが、狭い個室なので密着する。
「まさか、みなたんは来ないよね」
「います~~、みなたんも来ちゃいました。だって、だってみなたんも会いたかったんだもん、いいよねペドロ来ても」
「来てもいいけど、みなたんはネットカフェに来たことあるの?」
みなたんまで登場した。
「あるよ。ネットカフェに来てコーラ飲む。漫画読むの好きよ」
「苦しいな、ネットカフェ個室に5人は定員オーバーだよ」
「私もペドロの横に行きます」
「ナギも行きたい」
「みなたんも行くもん」
「苦しい」
4人は狭いから厳しいよな。
密着していて肌が当たる。
この状況をアイライブの熱狂的なファンが見たら、俺は殺されそうです。
4人からは近況を聞いた。
渋谷だけ魔物が出るのか、他にも出るのかを聞いてみると、渋谷だけらしい。
渋谷以外の池袋や新宿にも出ていなくて、東京だけでなく大阪、名古屋、福岡にもいないと。
だから渋谷の魔物はやらせだと思っている人もいるとのこと。
やらせ番組だと思うのは当然で、街に魔物が出たのを信じる方が難しいし、それが常識的だな。
となると魔物が出る渋谷に偶然俺も転移ポイントが出来たわけか。
偶然にしては、偶然過ぎかな。
逆に魔物が出るから渋谷に行けってことにも思えるか。
運営会社が考えていることか、それともすべてがプログラムのバグなのかも考える。
しかし考えてもわからないことばかりだった。
「ナギは無事に家に帰れたかい?」
「ナギは無事に帰れたよ。警察の車で走ってくれた。家に到着して警察さんと一緒に写真を撮影したよ。車と一緒に。これがその写真です」
「本当だ。警察官も大変だったな」
記念撮影させられた警察官は、苦笑いしている。
ファンだったらいいけど、ファンじゃないなら迷惑なだけだったかもな。
俺が警察には頼んだので、罪悪感があるな。