表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【書籍化】旦那も家族も捨てることにしました  作者: 火野村志紀


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

54/72

54話

「……今、何と仰ったのかしら?」


 王妃の頬が僅かにひくついた。しかし、そんな変化に気づく余裕など、今のロザンナにはない。


「大袈裟と申したのです! 私たちが殺そうとしたのは、あくまでルディック家の実子ですわ! それに、結果として死なずに済んだですから、私たちが牢屋に入る必要性はありません!」

「そういうわけにはいかないわ。だって人を殺めようとした人間を、外に放つなんて危ない真似できないもの」

「人聞きの悪いことを仰らないでくださいまし! たった一人を毒殺しようとしただけで、決して無差別に人を殺すつもりはございません! だって、私は侯爵夫人ですわよ? 今まで領民のことばかりを考えて──」

「はぁ……」


 常軌を逸した言い分を、王妃の深い溜め息が遮る。

 そこでロザンナは、我に返って両手で口を覆った。


「お、王妃様っ? 今のは違いますわ。言葉のあやと言いますか……」

「もういいわ。それよりも伝えたいことがあります」

「え?」

「あなたとレオーヌ侯爵令嬢には、終身刑が課せられるわ」

「しゅ……」


 ロザンナの顔が凍りつく。

 法律に疎くても、どのような刑罰なのかは理解できる。


 死ぬまでここから出られない。

 汚い場所で、汚い囚人服を着せられて、ずっと。


「いやぁぁぁぁぁぁぁっ!!」


 ロザンナは絶叫しながら、鉄格子の隙間から王妃に向かって手を伸ばす。


「出して出して出してちょうだいっ!」

「王太子妃の義妹を殺そうとしたのだから無理よ」

「お、夫が黙っちゃいないわ! きっと私を助け出してくださるはずなんだから……!」

「いいえ。レオーヌ侯爵はあなたの減刑を求めてなどいないわ。むしろ、あなたを切り捨てようとしているの」


 そう言いながら、王妃は折り畳まれた一枚の紙を檻の中に差し入れた。


「侯爵からあなた宛ての手紙よ」

「あなたぁ……っ!」


 震える手で紙を受け取り、開いてみる。

 そこに書いてあった文に目を通し、ロザンナはその場に崩れ落ちた。


 それは、レオーヌ侯爵直筆の離縁状だった。




「……もうよろしいでしょうか、王妃殿下」

「ええ。これで気が済んだわ。ありがとう」


 警備兵に礼を言って、地下牢獄を後にする。

 重罪人との面会。本当はこのようなことをすべきではないと分かっているが、ロザンナは親しい間柄であるルディック伯爵家を狙ったのだ。

 あの女が絶望に堕ちる様を、この目に焼きつけたかった。


(あそこでどの程度生きられるかしら?)


 たとえ侯爵夫人であっても、忖度は一切しない。

 プライドの高いあの女には、これから長い時間をかけて苦しませる。

 きっとフィオナも、そのことを望んでいるはずだ。


(だけど、レオーヌ侯爵も意味のないことをするわね)


 彼がロザンナを捨てたのは、自分に火の粉がかからないためだろう。

 しかし、既に手遅れだ。今、この国で一番不穏な状況になっているのはソルベリア領。そして次点に挙げられるのがレオーヌ領だった。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ