表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【書籍化】旦那も家族も捨てることにしました  作者: 火野村志紀


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

41/72

41話

「……それで、トーマス様はお仕事をすることになったんでしょう? なのに、私とこんなことをしていてもいいの?」

「いいんだよ。仕事はぜーんぶレベッカに任せてあるから!」


 ベッドの中で愛人と睦み合いながら、トーマスは二カッと笑った。

 それを聞いて、愛人は意外そうに目を丸くする。


「あらあら、婚約者さんに丸投げしちゃっていいのかしら?」

「丸投げじゃないよ。今は休憩中さ。君が会いに来てくれたんだからね」

「そう……嬉しいわ、トーマス様」


 愛人は妖艶な笑みを浮かべると、トーマスの首筋にリップ音を立てて口づけをした。

 そして、のそのそとベッドから下りて着替え始める。


「え……もう帰っちゃうの? もっと楽しもうよ」

「ごめんなさいね。この後、他の方との約束があるの」

「そんなの放っておけばいいじゃないか。何か欲しいものがあれば、僕が買ってあげるよ」


 他の男を優先するのが気に入らず、物で釣ろうとする。

 そんな男へ振り向くと、愛人は目を細めた。


「お気持ちだけ受け取っておくわ。今後のためにも、お付き合いは大事にしなくちゃいけないの」

「ちょ……僕よりもそいつのほうがいいってわけ?」

「だって……いつまでも泥船にしがみつくつもりはないもの」

「ど、泥船?」


 目をぱちくりさせるトーマスに、愛人は「それじゃあ、元気でね」と投げキッスをして寝室から去って行った。


「な……何だよ、あのババァ~! 胸が大きいからって生意気だぞっ!」


 残されたトーマスは、ドアに向かって枕を投げつけた。

 それだけでは苛立ちが収まり切らず、香水の匂いがたっぷり染みついたシーツを床に投げ捨てる。


「はぁ……僕は立派に仕事をしているのにね!」


 執事に書類の見方を一から教えてもらいながら、遊びにも行かず執務室に籠もる日々。

 すると領地経営は、案外簡単なことに気づいた。

「これからは僕とレベッカに任せておけばいいよ!」と告げると、執事もほっと溜め息をついていた。

 あんな年寄りは、もう必要ない。

 何故なら、執事とライラのやり方は大きく間違っていたからだ。


(これからは、僕がソルベリア領を管理していくんだ)


 意気揚々と鼻歌を歌いながら、ラウンドテーブルに置かれた水差しを手に取る。グラスに注がず、直接口をつけて水を飲むと喉に潤いが戻った。

 口元を腕で拭い、不敵な笑みを浮かべるトーマス。


 性欲処理の道具がなくなったら、また用意をすればいいだけ。

 二日後に、ちょうどいいイベントがある。


 ロシャーニア王国建国記念の式典。

 そのパーティーには、国内中の貴族が出席することになっているのだ。

  



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ