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【書籍化】旦那も家族も捨てることにしました  作者: 火野村志紀


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10話

 馬車が王妃の離宮に到着したのは、午後の昼下がりだった。

 丘の上に建てられたそれは、臙脂えんじ色の屋根が目を引く造りとなっていて、広大な庭園の中心には噴水まで設置されている。


 なんて綺麗なところなのだろう。うちの屋敷とは大違いだと、ロザンナは眉を寄せた。

 侯爵邸も豪華絢爛な造りをしているが、やはり王室の離宮には劣る。


(うちも、早く修繕工事をしてもらわないと)


 夫曰く、もうすぐ大金が入るらしいのだ。


「まあ、レオーヌ侯爵夫人ではありませんか」


 と、馬車から降りたロザンナに声をかけてきたのは、ルディック伯爵夫人だった。

 ここはルディック伯爵の領地だ。当然彼女も出席することになっている。


「ごきげんよう、ルディック伯爵夫人。……本日は、そのようなドレスで茶会に参加しますのね」

「ええ。何か問題がございますか?」

「ありませんけれど……茶会に着てくるには、少々地味なのでは?」


 ロザンナは扇を取り出すと、口元を隠しながら侮蔑の笑みを浮かべた。

 王妃主催の茶会。煌びやかな格好でやって来るのが常識だろうに、ルディック伯爵夫人は質素なベージュ色のドレス姿だった。装飾品も一切身に着けていない。


「レオーヌ侯爵夫人は、そのようなお姿でいらっしゃったのですね」

「……何か問題がございますの?」


 何故か呆れたような物言いが、ロザンナの癇に障った。

 睨みつけながら問いかければ、


「いいえ。とてもお似合いでございますわ。そのドレスも、ペンダントも」


 少し投げやりな口調でそう返して、その場から離れていく。

 その後ろ姿を見て、メイドがロザンナへ耳打ちをする。


「あの方、奥様に嫌味を言おうとしたけれど、何も思いつかなかったのでしょうね」

「当然よ。私の美しさに文句をつけられるはずがないわ」


 紅を差した唇が弧を描く。

 ロザンナの胸元で輝いているのは、大粒のレッドダイヤモンドだった。

 ダイヤモンドの中でも特に希少価値が高いと言われ、産出地は非常に少ない。そのうちの一つがパランディアの鉱山であり、昨年大金をはたいて購入したのだ。

 メイドを馬車に残して、ロザンナも屋敷へ向かう。


「ようこそおいでくださいました。そちらのお荷物をお持ちいたしますね」


 出迎えたメイドに、菓子が入ったバスケットを預ける。


「くれぐれも落としたりしないようにね」

「ご安心ください。さあ、お部屋へご案内いたします」


 メイドに連れられて、王妃の私室へと向かう。

 セピア色の扉を開くと、既に王妃以外の出席者が着席していた。


「ぷっ」


 その面々を見て、ロザンナは小さく吹き出した。

 皆、ルディック伯爵夫人と同様に質素な身なりをしている。

 本日は高位貴族のみが招待されたと聞いているが、まるで下位貴族の集まりだ。


「……レオーヌ侯爵夫人?」

「その……随分と豪華なお姿ですわね」

「そちらのペンダントは、レッドダイヤモンドかしら? とてもお綺麗です」


 夫人たちが戸惑いの表情を見せながら、ロザンナを褒める。

 ようやく自分たちが場違いな格好をしていると、気づいたのだろう。


「ありがとう。あなた方もとっても素敵ですわよ」


 嫌み混じりに言いながら、席に着く。

 この光景を目にしたら、王妃はさぞや呆れ果てるだろう。

 唯一、きちんと着飾ってきたロザンナだけは、褒めちぎるに違いない。


「皆さん。本日はお越しくださり、ありがとうございます」


 待つこと数分。ようやく王妃が部屋にやって来た。


「は?」


 思わず声を漏らすロザンナ。

 王妃が着ているのは、何の装飾も施されていない、藍色のドレスだった。


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