54.【リリアン】自称サバサバ女の妹ユフィーを断罪する!
【Sideリリアン】
私の精神世界の中に悪魔ユフィーはいた。
ここは私の心の中。
彼女は内部から侵食するかのように瘴気を発している。
私を乗っ取ろうというのだろう。
「グオオオオオオオオオ‼ 私の思い通りにならない世界など存在しても意味がない‼」
彼女の心の底から巻き起こる全てを憎む気持ち、嫉み、嫉妬、怨嗟の心を爆発させていた。
「ははははははは! ざまぁみなさい! まぁ、私みたいなサバサバした女を認めない、こんなねちっこい虫けらどもなんて、全員道連れにしてやるわ! そうすれば、残った奴らは全員私の事を認めざるを得ないでしょうしねえ! あーっはっはっはっはっは‼」
ある意味、私の精神世界にこの瘴気がとどまっていて良かったと思う。
この闇の力に触れたら、生き物たちは生きていけまい。
私はそんな完全に悪魔と化したユフィーに声をかける。
「本当にこの世界を滅ぼそうと言うの?」
その言葉に彼女はこちらを見てニチャリと嗤う。
「あははははは! もう遅いわ! 思い通りにならない世界なんて意味ないでしょう。なら、従わない奴は殺すだけよ。そうすれば自分を認める者だけ残るんですもの!」
彼女は嘲笑すら浮かべている。
でも私はその言葉に、単純に首を傾げて疑問を口にする。
「本当にそれでいいの?」
「良いに決まっているだろうが! ははーん、さては負け惜しみってやつね。無様だなぁ、おい!」
彼女が更に嘲笑を深める。
しかし、私はあっさり告げる。
「でも私が、あなたを認めている唯一の存在なのよ? それは、私と二人きりの世界がいいということなの?」
「は?」
彼女は意味が分からないとばかりにぽかんとするが、本当に理解出来ていなかったのだろうか。
「み、認めてないだろうが!」
「認めているわ。だからこそ、何度も説得して、家族として仲良く暮らそうとしていたんじゃない。でも、もし二人きりが良いなら、このまま二人で私の精神の世界で暮らしましょう」
その言葉に、ユフィーはギョッとした表情になる。
「嫌だ! わ、私は他人にちやほやされたいんだよ!」
その言葉に、私は眉をひそめる。
「それは、悪魔になって親も手にかけてしまった時点でさすがに無理よ。表面上はチヤホヤとしてくれる人はいるかもしれないけど、本心から慕ってくれることはありえないんだから。だとすれば、あなたはこの世界を、私を除いて滅ぼすことになる。つまり、あなたの望む世界とは、私と二人きりの世界と言うことなのよ?」
「は、はぁ⁉」
彼女は叫びながらも、何とか反論しようとして口を開く。
「お、お前はそれでいいのかよ⁉二人きりでずっと過ごすなんてっ……」
私は淡々と、
「ええ、別に構わないよ。それに、あなたもサバサバしているというなら、それでいいでしょう?」
それはユフィーの口癖だったはずだ。
だが、
「い、嫌だ……」
彼女はぞっとした表情をしながら言った。
「嫌だ、嫌だ、嫌だ、嫌だ、嫌だ!」
彼女は叫ぶように言った。
「そんなの耐えられるわけないでしょうが!」
私は首を傾げる。
「どうして?」
「それは……」
彼女は言い淀む。
私はゆっくりと手を掲げ、そして、ビシリ! と彼女を指さして言った。
「それはあなたが他人に執着をしすぎているネチネチ女だからじゃない? 本当のサバサバ女なら割り切れるはずよ!」
「そ、そんなこと……む、無理に決まってんだろうが!」
「なら、評価してくれない他人のいる世界に戻るしかないわ」
「む、無理だ! 嫌よ! なんで私がそんな選択をしなきゃなんねえんだよ⁉」
その言葉に、私は真実を突き付けた。
「ユフィー。これはあなたが招いた事態なのよ? そんな明白な事実すら認めず、選択すらできないなんて。それはもはやサバサバ女じゃないわ!」
「ぐ、ぐがぁ⁉ お、おのれえ! リリアン! 最後までうるさい女だ! 死んでそのうるさい口を閉じやがれえええええ‼」
彼女のアイデンティティーが崩壊するのと同時に、力にものを言わせ襲い掛かって来る。
でも、
「それは自分が正しくないと認めた証拠よ、ユフィー」
そして、
「ここは精神世界。心で負けた者が勝つことは出来ない世界なのよ。光の力よ」
私の言葉に、今まで瘴気に満たされていた世界が、一気に光に浄化されて行く。
それと同時に、
「ぎ、ぎゃあああああああああああああああああああああああああ‼」
私の先ほどまでの断罪によるダメージと、聖なる力によって、ユフィーの邪悪な心ごと浄化を始める。
「ぢ、ぢぐしょおおおおおおおおおおお‼」
ユフィーが悔しさの余り咽ぶ。
「ああああああ……。何一つ勝てない……なんてぇ……」
彼女は絶望の声を上げながら、今度こそ本当に消滅の時を迎える。
だが、
「そんなことはないわ」
私は彼女の誤解をせめてもの思いで最期に解く。
「あなたの執念は粘着質だけど本物だった。それをもっと違うことに向かわせられれば、きっと素晴らしい人になれたと思うわ。次の人生でもきっと姉妹として生まれましょう」
そんな私の言葉に対して。
「私は……サバサバ女だ……ネチネチなんて……して……ない……」
そう最期まで主張しながら精神世界から浄化され、消滅して行ったのだった。
そして、彼女が断罪され、浄化されるのと同時に。
『お疲れ様、戦友! 私もちょっくらこっちの世界で戦って来るわね!』
そんな女神様の最後の託宣が聞こえてきたのだった。
【小説・コミック情報】
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支えてくれた皆さん本当にありがとうございます(*^-^*)
素敵なカバーイラストは岡谷先生に描いて頂きました。
たくさんの加筆・修正を行い、巻末には書下ろしエピソードも追加しました。
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