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【書籍化&コミカライズ】ゲーム内の婚約破棄された令嬢に声が届くので、浮気王子を毎日断罪することにした  作者: 初枝れんげ(『追放嬉しい』7巻3/12発売)
第2章 乙女ゲー『キラキラ☆☆恋スター ときめきは永遠』

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39.【Sideユフィー】結局、男が放っておいてくれないのよねえ!

【Sideユフィー】


「くそ! くそ! あんなぶりっ子のどこが良いって言うのよ! リリアンみたいなブスを選ぶなんて、ふっざけんじゃねえよ!」


バリーン!


高価なグラスを叩き落しながら激高する。床にグラスの中身がぶちまけられた。


「ど、どうかお気を静めて下さいませ。お嬢様!」


「そ、そうです、お嬢様。きっと殿下も本気ではありませんし……」


「はぁ⁉ うっさいのよ、あたしに意見してんじゃねえよ! さっさと汚れた床でも拭いてろよ」


「ひぃ⁉」


私は殿下に会うためにわざわざ整えた頭をかきむしるようにする。メイドがいるが知ったことじゃない。


「ちくしょう。それにしても殿下があんなに見る目が無いとは思わなかったわ! あんな男受け狙ったぶりっ子に騙されやがって! 実際は私の方が何倍も奇麗で美人で可愛いっつーの! しかも姉御肌だから引っ張ってやれるし、ちょっと誤解があって今は顔を出せないけど、社交界の中心の私は話し上手で盛り上がれるってんだよ! なんなら、夜の方の話まで出来るってのに! ねえ、お前もそう思うでしょ?」


私はギリギリと親指の爪を噛みながら、メイドに一人に聞く。


「は、はい。おっしゃる通りかと。お嬢様はやはり個性的で魅力的な方ですので……」


「そうなのよねえ!」


私はメイドの言葉に納得する。


そして、ははん、と私は気づく。


「ああー、もしかすると、今日の私のメイクがちょっといつも違い過ぎたせいで殿下ったらあんな態度になられたのかしら?」


「ど、どういう意味でしょうか?」


「頭が足らないわね。殿下は私のそういう素の部分っていうか、着飾らない、サバサバしたところが好きだったわけ。でも、今回はさすがに求婚される流れだったわけじゃない? だから面倒で嫌だったけど、わざわざ少し着飾ったのよねえ。でも逆に殿下は、そんな恰好しない魅力的な私を望んでいたのね。だからあんな風に私への求婚を中断したってわけ!」


「な、なるほど。ヂヂガガミズガエルに例えられたのもその一環というわけですね」


「そ、そうよ。お、おほほほほほほほ‼」


私は笑った。


だが、一方で次の方針を考えなくてはいけない。一旦、私への求婚が中断された以上、次またいつ求婚してくれるかは分からない。しかも、あの男に媚びることに長けたリリアンがここぞとばかりに邪魔をするに違いない。私と違ってネチネチとした女なのだから。


だとすれば、待っていては駄目だ。


趣味が女っぽくないせいで、自然と男どもが寄って来る私だから焦る必要はないが、このままでは確実にリリアンが小細工を弄し、王太子妃となるだろう。将来は王妃となるわけで、そうすれば、間違いなく私への嫌がらせをしてくるに違いないし。その時には、私を慕う男友達にもなりふり構わず脅しをかけ、私の婚姻を阻もうとするだろう。そういうドロドロした女なのだ。


ならば、王太子妃に匹敵するような立場になるしかない。それは何だろう?


そう考えた時、一つのアイデアが閃いたのだった。


なんて言うグッドアイデア!


私は笑いが漏れるのをとどめることが出来なかった。


「ふ、ふふふふふふ! あはははははははは! そうよ、この手があったじゃない‼ 王太子妃に匹敵する立場になるための方法が! これで! これで!」


手を広げて、天井に向かって叫ぶ。


「もう一度私を中心に世界は回り出すのよお‼」


私は早速その作戦をお父様とお母様に話して実行に移すことにした。


それは我が国の国教である【アガリアレプト教】。その教皇であるアンリ・マリウス教皇猊下との政略婚約である!



「初めまして。お初にお目にかかります、アンリ・マリウス教皇猊下。ユフィーと申します」


場所は豪華な教会本部にある広大な庭園で、そこは美しい花々が咲き乱れて小川が流れており、この世の楽園を思わせた。


そんな美しい景色を眺望出来る絶好の位置にガゼボが建てられいて、今そこにあるテーブルには二人分の軽い昼食が置かれていた。私ともう一人分。


その相手とはもちろんアンリ・マリウス教皇猊下だ。


「こちらこそ、ユフィー・スフォルツェン公爵令嬢。ユフィーと呼ばせてもらってもいいかな?」

彼はそう言って、美しい歯をキラリと光らせて微笑んだ。猊下はスラリと身長が高く、鼻筋の通った、切れ長の瞳を持つ容貌は美しく気品がある。長い金髪とあいまって見目麗しいという表現がピッタリである。


あらあら! 猊下ったらもう私と距離を詰めたがってるみたいねえ!


私はにんまりと内心笑いつつ、


「そうですねえ! まぁ私って結構男っぽい性格なんでえ、猊下が呼び捨てにしたいって言うんでしたら、好きにしてもらって大丈夫ですよ!」


「ああ、そうですか。良かった。あなたのような美しい人を呼び捨てにするなんて恐れ多いと思いましたが許してもらえてホッとしましたよ」


「私はサバサバしたちょっと変わった女なんですよ。だから、なんか結構私の姉のリリアンっていうのがいるんですけどぉ、男に対して似合わないぶりっ子ばかりするんですよね。それでモテると思って。私はそういう女の面倒なのは嫌なんで、猊下の呼びたいように呼んでもらったら大丈夫ですよ」


「確かにそういう女性が多いね。でもユフィーは他の女性とは全然違うね。それがとても魅力的だと思うよ」


結構ガツガツ来るのねえ。うふふふふ。


「ま、おかげで男友達ばかり増えてしまうんですよねえ」


「なるほど。では私も負けない様に頑張らないといけないね。ぜひ私のこともアンリと呼んでくれないかい? 少しでも他の男友達との差を縮めておきたいのでね」


「ふふ、普段は私そう簡単に気を許したりしませんのよ。でも、とても素敵な気分ですから、特別にアンリとお呼びさせて頂きますわ」


「ははは。これは幸先がいいね。ぜひ、ユフィーともっと話をしてみたいんだが、散歩しながらでもどうだろう?」


「素敵ですわ。ああ、でも食事を食べてからにしましょう。とてもおいしそうですわ」


「おっと、これは迂闊だった。君を誘うことばかりに気を取られてしまった。これは減点かな?」


「ん~、特別許して差し上げますわ」


「ありがたい。ユフィー争奪戦から脱落せずにすんだよ」


アンリはまた白い歯を見せて、美しい容貌で微笑む。


「まぁ、でも私はそんな安い女ではないので、安心はまだ早いと思いますわ」


「その通りだね。いやはや、ユフィーと婚約するまでの道のりは大変そうだ。だが精一杯頑張るよ」

ふ、ふふふふ。


見たか、リリアン!


これが私の実力なのよ。お前みたいなブスが幾ら努力しても私には追いつけない証拠がこれってわけ!


「アンリは何を飲まれるんですか?」


「そうだね、ワインでも頂こうかな。ユフィーはどうするんだい?」


「じゃあ、私もワインを頂きますわ」


そう言うと、アンリが驚いた顔をした。そうそう、その顔が見たかったのよねえ。


「アンリったら顔に出ていますわよ。私はカクテルみたいな女が好んで飲むような飲み物より、男っぽいお酒が好きなんです。まぁ、女性はお酒が飲めない人も多いでしょう? そんな相手と飲んでも男性はつまらないですよねえ?」


「そうだね。いや、驚いたよ。こうして楽しい会話もさることながら、やはり一緒にお酒を共に飲めれば、深い付き合いも出来るというものさ」

深い付き合いだなんて、どうやら私を今日落そうと必死みたいじゃない。でも私はそんな軽い女じゃないけれどねえ。


「うふふ、深いお付き合いになるかどうかは、アンリが私を楽しませてくっるかどうか次第ですわ。公爵令嬢を相手にするのですもの、きっと私を良い気分にさせてくれると期待していますわ」

私はそう嫣然と微笑んだのである。




「あはははは! それでね、私はそのメイドに言ってやったってわけ! お前が恋人にフラれた原因はお前のその男に媚びるような性格が原因だって。言い訳すんじゃねえよって! そしたら泣き出してさ、笑っちゃったわぁ」


「ははは。さすがユフィーはサバサバ女だね。そこまでハッキリ言ってくれる人はいないよ」


「つい姉御肌だからズバズバ言っちゃうのよねえ」


「いやぁ、本当に一緒にいて面白いな。こんなに楽しい気持ちでお酒を飲んだのは初めてかもしれないよ。出来れば、違う場所で飲みなおさないかい?」


おっと、これは。


もう?


いきなりねえ。


でも仕方ないわよね。私って本当に男にモテるから。自然と話してるうちに気が合っちゃうんだものねえ。


「ふふん、言ったでしょう? 私は沢山の男友達がいるのよ? あなたはその中の一番になる自信があるのかしら?」


「ははは、これは手厳しい。だが、君が他の女性のような恰好や他の男ばかりに媚びる普通の女性とは違うことはよく分かったよ。それにハッキリとものを言う男っぽいところも本当に素敵だ。ぜひ私にチャンスをくれないか?」


あははは! もう完全に私の虜ね。まぁ仕方ないか。他のくだらない女性に比べたら、私みたいなサバサバ女の方が付き合いやすいし、一緒にいて楽しいと思うのも無理ないわ。それに全員私よりブスだし。


「ユフィー、君は思っていたよりも何倍も素晴らしい人だ。ぜひ、今後のためにも関係を深めたい」


「ふふふ、まあ、教皇猊下にお願いされたら仕方ないですわ。でも私下手くそは嫌ですわ」


「ははは。やっぱりユフィーは面白いね。嫌われない様にリードしなくては、ね」


私とアンリはこうして、彼の私室で飲みなおすことになった。


もちろん、男女が二人同じ部屋にいて何も起こらないはずもない。


翌朝、気持ちの良い朝を一緒に迎えることになったのである。


そこで、彼から思いがけない言葉を聞いたのだった。


「ユフィー、昨日君と一緒にいられて確信したよ。君こそが最高の女性なのだから、この国の国母になるべきだ。王太子妃や正妃……などで収まる器じゃない。むしろ、今の王室を廃して、女王となるべきだ。そして、私と一緒にこの国をより良い国にして行かないか?」


「じょ、女王!」


「そうさ」


彼はやはり美しい容貌で言った。


「君のようなハッキリとものが言えるサバサバした女性で、男に媚びないような頼りがいのある人こそ、この国の女王に相応しい」


それはとても悪魔のささやきのような甘美な響きをもって、私の耳朶を打った。


そうだ。なぜ私は王太子妃ごときになりたいと思っていたのだろう。


王太子妃や正妃など、しょせん、王太子や王の付属品でしかない。


それよりも女王だ。女王になれば全ての国民、それどころか他の国々からも注目され賛美を受けることが出来るのだから!


私は彼の言葉に光り輝く道がひらけて行くのを感じた。


美しい容貌で私の手を引かれ、私は彼と共にその道を歩むことをすぐに決意したのだった。


あはははは! リリアン! 王太子妃ごときになるために男に媚びを売りまくるブスのあんたなんかもうゴミ同然ねえ。


私は女王になるんだから。この国の中心であり、唯一の存在になって、全ての者が傅く存在になるのよ!


私は内心で勝利の声を上げたのだった。

【小説・コミック情報】

皆様の応援のおかげで、ノベル第1巻がTOブックス様から、8/19に無事発売されます。

支えてくれた皆さん本当にありがとうございます(*^-^*)


素敵なカバーイラストは岡谷先生に描いて頂きました。

たくさんの加筆・修正を行い、巻末には書下ろしエピソードも追加しました。


ぜひ【ご予約】くださいませ。

今ならTOブックスオンラインストア限定で、特典の書き下ろしSSが付いてきますよ~!

https://tobooks.shop-pro.jp/?pid=175028087

※コミカライズも準備中です!

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

お読みいただきありがとうございます。


続きが気になるー! と思っていただけた方は、ブックマークや、↓の⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎評価等、応援よろしくお願いいたします。

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小説家になろう様で連載中の『ゲーム内の婚約者を寝取られそうな令嬢に声が届くので、自称サバサバ女の妹を毎日断罪することにした(「毎日断罪」シリーズ)』ですが
https://ncode.syosetu.com/n0557hz/
TOブックス様から【小説第2巻】が11/10に発売されます。ぜひお読みください!(コミカライズも準備中)
  Web版から大幅に加筆修正を行い、巻末小説も追加して、より魅力的な内容に仕上げました。岡谷先生の魅力的なイラストもお楽しみ頂けます!(*^-^*)
ぜひご予約のほどお願い致します! 特典の書下ろしSS付き‼
https://tobooks.shop-pro.jp/?pid=176653615

岡谷先生の素敵なカバーイラストを大公開!!
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