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32.一度目のざまぁを開始する!【後編】

前後編で分割のためやや短いです。申し訳ございません。

【Sideリリアン】


「どうしたのよ、返事をしなさい。なに、頭まで悪くなったのかしら?」


相変わらずお付きのメイドたちに世話をさせながら、私を傲然と見下しながら毒舌を吐くユフィー。王室主催のパーティーは毎年行われる大事なセレモニーで、そこに我が国カスケス王国の特産品であるレースを使った刺繍の縫物を持参することが伝統とされている。私はてっきり、それを断るように指示されるのかと思っていた。でも。


『相変わらず酷い言いぐさね。まぁ、気にしないで。よし、リリアン。その依頼を快諾しなさい』


(い、いいんですか?)


戸惑いながらも、ユフィーの言葉に頷く。


「わ、分かったわ。どんな刺繍にする? ハンカチでいいかしら」


「うーん、そうねえ。あなた良いアイデアはないかしら? 刺繍はあなたが男受けのためにわざわざ身に着けた特技でしょう?」


『どんなけ下品なのよ』


女神様の呆れたお声を聞いて、心が落ち着く。すると、決定的な答えを持っていることに気づいた。


殿下から直接、王室を象徴する『白いユリの花』を先般お会いした際にリクエスト頂いていたのだ。白ユリは王室の威厳を象徴するとともに、ますますの繁栄を願う意味も込められていて、王室の公式なる行事に持参するのに最も相応しい刺繍だ。


でも迷っている私に対して、ユフィーは饒舌になった。いいアイデアが思いついたらしい。


「ああ、そうだわ。頭の悪いあんたのアドバイスなんていらいわ。この前お父様が持って帰って来た『カラー』って花。あんたは何か無難な花を刺繍するのがお似合いだけど、私はあの花にしてちょうだい」


喜々として命令する。ただ、私は正直それに反対だった。女神様としては敵に塩を送ると思われるかもしれないけれど、つい声に出してしまう。


「あの、ユフィー。その花は止めた方がいいと思うわ。何でかって言うと……」


「あはははは‼ 分かってるわよ、あんたって、似合いもしないのに、男を釣るためにお淑やかさを演じてるものねえ。だから、もっと清楚な花が良いって言うんでしょ? 女って本当に面倒下さいわねえ。で・も・ね。あたしはそんな男に媚びたりしたくないの。本当にあんたは卑しい女ねえ。私みたいにサバサバした考え方を見習ったらー? あっはははは!」


「そ、そうじゃなくてっ……!」


「うるさいわね。あんた程度の女は、私に黙って命令に従ってればいいのよ」


私はちゃんと理由を説明しようと思った。でも、そこに女神様のお声が響く。


『リリアン。人の話を聞こうともしない。善意を悪意と毒舌で返して来る。そんな自称サバサバ女のありがたい【命令】よ? 強制されたあなたは何も悪くないわ、それに、ね』


女神様は全てを見透かしたように、優しくおっしゃられた。


『殿下はユリの花をあなたに刺繍して欲しいとおっしゃったんでしょう? それを妹に教えようとするのは、優しさだと思うけれど、殿下はあなただからお願いしたいんじゃないかしら? それをあなたではなく妹が作ってきたらガッカリさせてしまうわ。何より、ユフィーは教えるなと命令しているのだから』


確かにそうだ、と納得する。


殿下は確かに私にユリの花の刺繍をご希望された時、「ぜひ君に刺繍して欲しい。そして僕に見せて欲しい」と目を見ておっしゃったのだ。それを妹いえども他人に漏らすのは殿下への不義理であることに気づく。


と、同時に、ユフィーがカラーの花の刺繍を【命令】し強制してくるなら、今の私の立場では受諾せざるを得ない。女神様のおっしゃる通りなのだ。それがどんな未来をもたらすか私には分かっていたが、もはやこの状況を覆してあげることは出来ない状況であることが理解出来た。


「分かったわ。命令通りにするわね、ユフィー」


「ふふん。あの優雅なカラーの花の刺繍が似合うのは私くらいだもの。あなたが卑しく嫉妬するのも分かるわ。でもリリアン、あんたには似合わないんだから気にするだけ無駄よ」


『最後まで冷酷なこと。でも、自サバ妹自身が言ったでしょ? 気にするだけ無駄だってね。あなたはユリの花を殿下のために誠心誠意、刺繍するのがひいては王家のためだし、ユフィーの命令通りにカラーの花を縫ってあげるのが彼女の心からの願いなんだから、彼女の顔を立ててあげるしかないわ』


「そうですね」


少なくとも私は何度も忠告をしようとした。でも、そのたびに私を罵倒してアドバイスを聞こうともせず、最後はカラーの刺繍を強制されたのだから、どうしようもなかった。


こうして私はレース刺繍を作り始めたのである。そうしているうちに、あっという間に王室主催のパーティーの日はやって来たのだった。

【小説・コミック情報】

皆様の応援のおかげで、ノベル第1巻がTOブックス様から、8/19に無事発売されます。

支えてくれた皆さん本当にありがとうございます(*^-^*)


素敵なカバーイラストは岡谷先生に描いて頂きました。

たくさんの加筆・修正を行い、巻末には書下ろしエピソードも追加しました。


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今ならTOブックスオンラインストア限定で、特典の書き下ろしSSが付いてきますよ~!

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※コミカライズも準備中です!

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お読みいただきありがとうございます。


続きが気になるー! と思っていただけた方は、ブックマークや、↓の⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎評価等、応援よろしくお願いいたします。

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小説家になろう様で連載中の『ゲーム内の婚約者を寝取られそうな令嬢に声が届くので、自称サバサバ女の妹を毎日断罪することにした(「毎日断罪」シリーズ)』ですが
https://ncode.syosetu.com/n0557hz/
TOブックス様から【小説第2巻】が11/10に発売されます。ぜひお読みください!(コミカライズも準備中)
  Web版から大幅に加筆修正を行い、巻末小説も追加して、より魅力的な内容に仕上げました。岡谷先生の魅力的なイラストもお楽しみ頂けます!(*^-^*)
ぜひご予約のほどお願い致します! 特典の書下ろしSS付き‼
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岡谷先生の素敵なカバーイラストを大公開!!
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