12.3度目のざまぁの準備を開始する!
【Side鈴木まほよ】
さて、私の目の前には乙女ゲー『ティンクル★ストロベリー 真実の愛の行方』のゲーム画面が映し出されている。
卒業式という晴れ舞台を、衆人環視の中で【浮気相手】ミルキア子爵令嬢と婚約するからと、一方的な【婚約破棄】を告げた馬鹿王子マークは、自業自得としか言いようのない有様で、王太子の身分を剥奪された。そして、【罪人】同様にロープで拘束された状態で、辺境ラスピトスへとミルキアと共に移送されたのであった。
一歩間違えれば内乱を誘発し、隣国ヘイムド王国などからの侵略の危険もあったことを思えば、王太子に相応しくないことは明白であり、かつ罪人同様どころか【罪人そのもの】である。極刑に処されないだけマシだろう。
しかも、結婚したがっていた浮気相手のミルキア元子爵令嬢、現男爵夫人とも一緒になれたのだから、その温情にひたすら頭を下げるべき場面だ。
そして、辺境ラスピトスは極寒で貧しい土地とはいえ、デルクンド国をあれだけの混乱と窮地に陥れておいて、まがりなりにも、一代男爵という貴族としての身分にとどまることを許されたのであるから、おとなしく慎ましく暮らすべきである。
と。
【普通はそう考えるだろう】
しかし、このゲームの攻略本を読み込んでいる私は、あの馬鹿王子とミルキア男爵夫人が、残念ながら人としての倫理観が欠如した行動をとることをあらかじめ把握していた。
ちなみに、ミルキア男爵夫人は、ゲーム本編には出てこないキャラクターであるが、実は第二王子リック殿下ルートでは、第一王子マークに付き従うモブキャラの描写がある。これが多分ミルキアなのではないかと思うのだ。
そんなわけで私は、辺境ラスピトス送りにしたことでホッと胸をなでおろしているシャルニカに、
「油断してはだめよ、シャルニカ?」
と警告を発することにしたのであった。
『えっ? どうしてでしょうか?』
シャルニカが疑問を持つのも当然だ。まず、今言った通り、あの【浮気】と一方的な【婚約破棄】によって自滅した馬鹿王子マークの今の状況というのは、温情ある処置なのである。
王太子と言う身分の剥奪は、浮気に婚約破棄と、貴族の責任を果たさず国を危機に陥れたことから当然の結果であり、これはなぜか婚約破棄されたシャルニカが懇切丁寧に説明した。また本来なら極刑という選択肢も当然あった。またミルキアの処遇も本来は家の取り潰しか極刑のはずであったが、これもマーク元王太子の妻として辺境送りとして助命され、家の取り潰しもまぬがれた。まぁ損害賠償の支払いは大変だろうがそれは今までかかった費用や迷惑料を考えれば当然のことだ。
ゆえに、シャルニカが私の言葉に疑問を持つことは当然だった。全てが丸く収まっているように考えるのが自然だからだ。
しかし、第二王子ルートでこそ、第一王子マークはその【屑男】ぶりを遺憾なく発揮するのである!!
例えば、側近を使いヒロインのシャルニカを誘拐させ、人質とした上で、第二王子リックに王太子の身分を返上するように迫ったり、あるいは、第二王子を暗殺しようと刺客を送り込み、暗殺成功の暁には自分が王太子へ返り咲くという計画を立て実行しようとする。これらはそれまでのフラグ構築の具合や第二王子との好感度、第二王子の武力値などによって計画が頓挫したり、あるいは成功するのだが、大事なのはこれら誘拐・襲撃イベントが、馬鹿王子がどの場所にいても起こるということだろう。
ゲームでは、馬鹿王子が廃嫡され辺境に移送されるケースもあれば、王都において第二王子とシャルニカの仲を邪魔してくるケースもあるからだ。
ゆえに、辺境送りになったとは言え、ゲームの強制力や馬鹿王子の馬鹿ぶり、ミルキア男爵夫人の自己中心的性格、執念深さなどを踏まえれば、必ず何かを企てるはずなのである。
いっそ処刑にしてしまえばと思うのだが、【現時点】でそれは難しいことは、攻略本の情報から分かっていた。だから、シャルニカにも、馬鹿王子たちを処刑するように助言はしなかったのだ。今は、まだ。
さて、そんなわけで、私は女神として淡々と【預言】という形で、シャルニカに助言する。
彼女が疑問に思っていることも、今言ったように既に予想出来ているので、そのあたりを中心に説明した。もちろん、攻略本だとか、第二王子ルートだとかは言っても意味不明なので言わないけど。
『そ、そんな陰謀を企てるのですか? 国王陛下の寛大なご処置に感謝の欠片もなく?』
思った通りの反応をありがとう。
「でも。残念ながらね。シャルニカ」
私はため息をつきながら言った。
「先手を打って、陰謀を潰さないと大変なことになるわ。そして、気乗りはしないかもしれないけど、もう一度あの馬鹿王子……いえ、今はただの馬鹿男爵か。あの馬鹿が陰謀を企てたという証拠を見つけて重罪人として断罪するわよ!」
『は、はい! 女神様!!』
こうしてまたしても連日に渡り、私たちはマーク元王太子の陰謀を阻止し、重罪人として【断罪】するための対策に動き出したのである。
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