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page 3


ちゃんと出発しただろうか。



これは所謂僕の覚書だ。


あの、森の あの、家を忘れない様にする為の。


だが道標を書こうにも記憶も「白い」くらいのものだし、かと言って描いてみようかと思ってもやはり「白い」しか思い付かない。


何しろ、「白かった」のだ。


まず、家を出てから何をしたのかを書いておく。

もしかしたらそこにヒントがあるかも知れないから。

次は、次こそは間違えずに辿り着くんだ。


僕の   の甘みを啜る為に。








まず薄手の青灰のコートを選ぶ。


滅茶苦茶寒いけど我慢だ。

あの時は死んだと思った。

その位じゃないと、きっと現れないに違い無いのだ。


せめてもの情けに飴玉を一つポケットに忍ばせる。これを見つけた時の喜び。

やはり僕は死にたくなかったのだと気が付いた時には、もう死にそうだったけどな。


でもきっとそんなものなのだろう。


やはり死ぬ間際は恐ろしいのだ。

どの位恐ろしいのか書くと二、三枚使いそうだから止めておく。


魔力はそう、保たない。


次もきちんと辿り着けるかは、運次第だ。




服装はいつも通りでいい。

白シャツにパンツ、黒がいい。雪の中で目立つ。

一応帽子と手袋、あとは手ぶらだ。


3:40に家を出る。

鍵はかける。

何となくだ。


そうして真っ直ぐ、森へ向かう。


途中、急ぐと散歩の人に会うからゆっくり行く。


足跡は判りにくく、少し足をツイストしながら歩け。







そうして森の入り口に着く頃にはすっかり冷え切っている筈だ。


少しずつ、夜が忍び寄る冬の森。


まだ、辛うじて明るいがすぐに夜になる。

しかし雪が降っているので、夜目が効く筈だ。


森の入り口には冬の精霊、道中は雪の結晶虫達が纏わりついて来るが無視して進む。

結晶虫が口の中に入らない様、気を付ける。



そうしてここが問題だが、何も考えずに進め。


どっちに行こう、とか考えてはいけない。


考えたらそっちに引っ張られるからな。



「あそこ」は何処でも無い、場所。



目的があれば、辿り着けない場所。


「何も考えない」程難しい事はないが、それが出来たならばきっと、見つかる筈だ。

見えてくる筈なんだ。



そうして「雪を感じて」待て。



きっと、死ぬ前迄には来てくれるだろう。


僕の、夢でなければ。


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