おんなごころ
甘いな
次の日から
どうやら俺のあの 甘いヤツは家出したらしい。
姿を見せなくなってしまった。
食事は 置いてある。
甘いのも くれる。
しかし 姿が見えない。
「しかし影よ。一人とはこんな心細いものだったか?」
「そうだね」
「お前、影のくせに心細いとかあるの?」
「ない」
「おい。」
適当だな。
「俺の甘いの、どこ行ったの?」
「さあ」
「だよね、だと思ったよ、お前の返事。」
「だね」
しかし本当に一人きりよりは、影でもいてくれ方がいい。
俺はこの森では余所者だ。
まだ回復してから外に出てはいないが、確実にそれは解っていた。
だってきっと
きっと季節はもう 春に
若しくはまさかの 夏かも
あの寝たきりから回復して
まだ 外は依然吹雪 きっとここは
魔女の森だから 外界からなにかを
守っているのだろうと 思う
しかし どこ行ったの おれの
甘いの。帰ってきて。
手紙 書いとこ。
……………………………………
親愛なる 俺の 甘い あなた
帰ってきて下さい。
寂しいです。
……………………………
俺は謝らなかった。
だって
なにが悪いのか解らないで謝ると
火に油
うちの母さんも そう
とりあえず原因は 会って聞くしかない
喋んないけどね あの 甘いの
とりあえず 俺の気持ちだけを 簡潔に伝えた
吹雪が止んだのは 次の日の朝だった
……………………………
「おはよう~。」
あっ。いる。いるよ。ヤバ。帰ってきてくれたぁぁ手紙?手紙成功?手紙万歳?やったやったやった
いや 落ち着け俺 また また地雷踏むぞ
深呼吸しろ
珍しい こっち見ないな
理由 分かんねぇな 目を見れば 何となくでも
分かると思ったけど
こりゃ 無理か??
いやしかし 諦めるのはまだ早い
何と言っても 帰ってきたんだぞ これは
脈あり
死にたい割には プラス思考 そう
だって 甘いのは 正義
いや真面目に。
そう、俺は決めたんだ。
帰ってきてくれたら
話しかけると。
え?でもでもよ?もしかしてさ、もしかして帰ってこなかった理由、俺じゃなかったらダサくね?ダサくね?普通に用事とかだったらどうするよ。「は?」とか言われたら死ねる。ん?でも死ぬつもりだったからいいのか。それ考えると俺最強じゃん。そうそう、話しかけちゃいなよ。軽く、ふわっとさり気なく。
だからそれ出来てたら、森に死にに来ないから。
でも それで お陰で 甘いなら 俺の勝ち。
馬鹿言ってないで話しかけろ。
なんて?
昨日散々考えたの忘れたのか?ひでぇ脳みそだな。俺のだけど。だって
だって なんか いつの間にか 見てる
見てるよ 凝視 なんで こわい
やっぱ俺? 俺だよね? 悪いの
でも俺は この 最初の 若草 若草色の瞳が
一番好きかも
おっ 表情が 少し 少しだけ 普通になった
いや、だいぶ改善されたのよ?だって
だって最初は警戒と恐怖よ。今はちょっと 普通
多分、大丈夫。
なんだろう?
なんだろうな。 色が 柔らかいからか?
柔らかくて 甘い 甘 甘い いやいや甘いのまだ
「この 瞳の色いいね。」
そう 口を突いて出た
わあ
わあわあわあ
可愛
なんだあれ
笑っ てはいないんだけど なに?
なにあれ? あれは人に見せちゃいけないヤツ
俺だけにしないと まずい
まずいな 俺もまずいけど
大丈夫?これ。 問題解決したの?
なんだったのこれ
まさか
まさか
まさかのまさか
(俺のために 姿変えてた訳じゃないよね?)
ちょっと厚かまし過ぎて 口には出せないけど
チラリと過ったこの思い 考えるだけなら
タダ。
しかし 明らかに あの甘いの 機嫌良くなった
可愛 可愛 いや 言えねぇ
言えてりゃ 死にに来てない
ああ
疲れたけど なんか 良かった
難しいな 他人って
しかし あれは 人ではない 多分
あの あれ
あれには触れない方がいいんだろうな
あの 額の な
まぁ
甘いから いいけど。




