それは
「おはよう」
姿は見せぬが声は掛ける
そんな日が数日
俺は 少し 期待した
だって声をかけるということは?
俺と話す気があると いう事 じゃない?
その割に
やはり姿を見せない あの 甘い なにか
今日も声を掛けたまま 何処かへ出掛けたようだ。
「影。あの、あの人?何処行ってるんだ?」
「?知らない」
まぁお前に訊いたのが間違い
解ってた。そう来るのは。
仕方ない。大人しく待つか。
しかしその日は 帰りが遅かった の
俺は寝ていた
ん?いい匂い きた あれだ
あの
ん?夢か? 触れるな…………
じゃあ夢か。フワフワしてんな………
うーーーーーーん いい匂い 甘い 匂い
夢でも いい香り
さいこう
甘いのは? どこだ?
「待って 違う こっち」
ん?よく喋るな、夢だと。
ああ
甘い 甘い 美味い 甘い 甘甘 甘い
もっと
ちょっと いい? 大丈夫大丈夫 ちょっとだけ
ここが いちばん 甘い
よーく 掬わなきゃ
あ 駄目駄目 まだ まだだよ
もっと しっかり
うん 甘い 今日はまた一段と 甘甘
ああ 駄目だ 頭が
甘 甘 甘甘 甘 甘 甘甘
あ
もう?終わり? なんで? だってまだ
甘い よ?
え?吸い過ぎ? 噛んだから? なんで?
勿体無いじゃん まだ 甘甘
分かったよ 分かったから はいはい
「じゃあ 明日」
うん オッケー ありがとう 甘いの
ん?明日?
そんなの初めて言われた。
やっぱ夢か。
………………………………
「今日も凄い吹雪だな。」
「そうだね」
「ん?こっちの服着るの?これどうしたの?」
「持ってきた」
「あ?お前が?」
「ちがう」
という事は?
あの甘い何かが俺の服を?
いやいや、期待するな。
俺はただ飯食らいの居候。そろそろ追い出されるかもしれない。
この、吹雪が止んだら。
ここ数日、激しく荒れる冬の森。
そんな中、俺の心も荒れる出来事が起こるのは
この後だった。
「今日はこっち」
そう言って影があの扉を開けたのだ。
………………………………………
「うん?」
そこは想像通りの森の小屋のダイニングキッチンだった。
古い木の香り、天井から下がるハーブの束
鍋 やかん 皿に やたらと細工のいいティーセット
作りつけの棚に水場 暖炉 窯 扉がもう一つ
窓 外の雪 氷つく窓枠 ドライフラワー
テーブル 二脚の椅子
紅い膝掛け 燭台の蝋燭 何かを燃やした痕
作業台 摺鉢 薬瓶 蝋紙 麻紐 紙束
「影?」
テーブルの上には スープとパン
影は見えない でも いる
俺一人? 何故?
「何故今日はここに?」
あっ
昨日
ん?でもあれは夢?夢だよな?
夢じゃなかったら美味しいんだけど。
どこだ?
居るのか?
その、ぐるりと見渡したそう大きくない部屋の隅に
あの 甘いの? が
いた
甘




