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酒場で話を聞く

 物を購入した時、落とさないようにという配慮だろうけれどああやって手を包み込まれると、なんとなくではあるが、思う所がある。

 そしてギルドカードとお金をもらった俺だがとりあえずは当面の生活について考えてみる。


「……ここに滞在するかどうか、3~7日程度滞在して以来を探したり必要なものを買いそろえてから考えるか。状況がまず分からないからな」


 そう俺は呟くも、ギルドに設置された酒場に向かうことに。

 理由はのどが渇いたからだ。

 この世界の飲み物はどういった形になっているのだろうか?


 いざとなれば自炊などをしてもいいが、異世界に来たのならばその場所独特の食べ物を食べたくなってしまう。

 だがやはり異世界だとあっさりした料理が多くなったりするのだろうか?

 前の世界ではそういった地域にいた時は、“カツカレー”等が食べたくなり、謎の肉を作ってカツを作り、根性でスパイスを手に入れて作り上げた記憶がある。


 このスキルと経験があればきっと俺は、この世界でもスローライフができる! といった自信が俺の中に溢れた。

 新たな希望のスローライフを頭に思い浮かべつつも、かといって隠居のような生活をしていくにもお金が必要になると俺は考えて、


「あとでギルドの依頼を見てみよう。……俺の能力は水を生み出すような、といったものがあると話したからそれ系のものでいいか。それでメニューは……謎の飲み物しかない。どれを選べばいいんだ? あ、ウェイトレスさん、よろしいですか?」


 そこでミニスカエプロンで肌が浅黒めの、可愛い女の子のウェイトレスが来たので俺はメニューについて聞き、ここの地方で採れる果実のジュースを頼む。

 ほとんどがお酒の類だったのでそれしか俺が選べなかったといった理由もある。

 すぐにそれは出てきて、それはオレンジジュースのようなものだった。


 それも生の果実を絞ったような味でとても美味しい。

 そう思ってグラスに注がれたそれを飲んでいると、近くにいる冒険者たちが何かを話している。


「だから、そうじゃないって」

「いや、お前の趣味は変だろう。ブレすぎだ」

「ブレてない、何もブレてないぞ!」


 そういって必死になって話しているのを聞きながら俺は、好きな女の子の話でもしているのかと思っていると、


「今度は性別を変えて、美少女とイチャイチャしたいとか言い出したしな。ブレてるだろう。この前は猫になって美少女に可愛がられたいとか言っていたしその前は……」

「ど、どれも美少女と仲良くなる所はブレていないだろう!」


 といった話をしている。

 俺は何も聞かなかったことにした。

 きっと声らの会話もまた彼らの“黒歴史”の一ページに記載されるのだろうから。


 などと達観している俺の耳にある話が飛び込んでくる。


「そういえばここに数日前に来た異世界人の女の子がいるだろう?」

「可愛い子だって話は聞いたがどうなんだ?」

「可愛かった」

「そうか。それでどこで見かけた」

「昨日は、“ムラクモ商店”で見かけた」

「俺、用事を思い出したから今日は“ムラクモ商店”に行くは」

「奇遇だな、俺もだ」


 といった話は、右から左に俺は流していたのはいいのだがそこで、


「その異世界人の女の子は、なんでも依然他の世界の人間にその世界を救ってもらったらしい。そして、ここに転移される前に女神さまからその女の子が聞いたらしいんだが……その世界の“英雄”と呼ばれる異世界人もこの世界に召喚されるらしい」

「え! それはすごい話じゃないのか?」

「ああ。異世界を救った“英雄”様か。この町の水問題を解決してくれないかな」


 といった話を聞いたところで俺は飲み物を飲み終わり、代金を支払う。

 だが今の話を聞くと、


「そんな凄い人物を呼んだのなら、俺なんか呼ばなくていいじゃないか」


 そう、小さく愚痴り、依頼の張られている部屋に向かったのだった。






 それから、依頼のある掲示板に向かう。

 ちょうど新しい依頼をギルドの職員の人が張り付けているようだった。

 幾つにも分かれた灰色の掲示板、そこには大きな空白がいくつもある。


 その空白にはピンがさしてあったり、ピンが床に転がったりしているのを見ると、そこには依頼があったのだろうと思わさせられる。

 もっと早い時間に依頼を皆が皆受けに来るのかもしれない。

 混雑している時間にわざわざ良い依頼を受けに向かうか、それとも今のように空いているがほとんど良い物が取られた後で行くか。


「後者だ。俺はこの世界ではのんびりスローライフをするんだ。大変なことはしたくないんだ! ……でも採取系は行ってみるといいか? 元の世界に戻るためには、この女神さまのつけた変な効果を解かないといけないし。……暗号化されて複雑になっているから、調べるのも時間がかかるだろうしな。後は魔法でごり押しか」


 そこまで呟いてみて俺は、ここに飛ばされた時に女神さまが額にキスをしたのを思い出した。

 突然召喚した女神であったとはいえ、む、胸の大きい美人な女の子にそうされるのは……その……。


「す、少しくらいなら付き合ってもいいか。どのみち“英雄”様がいらしているらしいから、俺の出番はそんなにないだろうしな。さて、依頼は採取系にするか、水を生み出す系にするか」


 どうしようか呟きながら俺は探していく。

 そこでそこまで値段は高くないが、初心者大歓迎と書かれているものを見つける。

 可愛い女の子のイラストが描かれていて、ここならば俺もやってみてもいいかなと思ったのだ。


 それに水が不足しているとの事で、それに貢献できるのはいいことかもしれないなと俺は思ったのだ。

 そして俺はその依頼の紙を持って受付に。


「これをお願いします」

「はい、日雇いの水を作るお仕事ですね。では……」


 そういって受付の女性が、地図を紙に書いてくれて、それを参考に“ウォタ屋”という名のお店を目指す。

 ギルドにほど近いそのお店には長い行列ができていて、若い女の子たちが瓶に水を入れて渡している。

 瓶は持参であるらしい。


 だがここで仕事ってどうすればいいんだと思って紙と、そのお店を見比べているとそこで店員の女の子が、


「もしかして日雇いのお仕事に来られた方ですか? そちらの右側に勝手口がありますのでそちらから入っていただければと思います」

「ありがとうございます」


 俺はお礼を言ってそちらに向かう。

 親切そうな可愛い子だった、と俺が思いながら言われたとおりに勝手口に向かいその扉を開けた。

 だが、中の光景を見た瞬間俺は即座に俺は扉を閉めた。


 今、俺は、言葉では言い表せない、名状しがたい“何か”を目撃した気がした。

 気のせい、だろうか?

 否、俺は確かにそれを目撃したのだ。だが、


「たまたま変な光景を見てしまったのかもしれない」


 俺はそう呟きながら、扉をそっと開いた。

 中にはたくさんの筋肉質な男たちがいて、


「さあ、もっとだ、もっと水を出すのだ!」

「む、無理です、これ以上は俺には無理です!」

「仕方がない、休憩だ。そちらはどうだ!」

「お、俺ももう少し休憩を……隊長、新人が来ています」


 そこで棒立ちになっていた俺に気づいたらしい中のムキムキマッチョの男ががそう言ったのだった。

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