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経験的に知っている

 勢いよく宿の扉が開かれて、そして、


「ここね! あの男のハウスは!」


 そんな声とともに現れた二人の美少女。

 どうしてここに! そう俺が驚愕の思いで彼女達を見ていると、金髪のあの少女が、


「やっぱりいたわ。ふふ……“闇ギルド”の人間を押し付けてそのまま逃げられるとは思わなかったわ」

「……一応は、服は着替えたのか」

「もちろんよ。あの格好のままでいるのは恥ずかしいしね。余計な出費が……いえ、そんなことはどうでもいいわ。どうしていきなり逃げたの?」


 などと聞いてくる彼女に俺はどう答えようか迷っていると、そこで金髪の少女が、


「そういえば貴方の名前は知らなかったわ。ちなみに私の名前はエイダよ」

「俺の名前は霧島颯太です。ソウタと呼んでいただければ……ではなく」


 自己紹介をされたのでついそう返してしまった俺だが、よくよく考えるとこの金髪美少女……エイダは何か目的があるらしい。

 俺に対して何かをして欲しいのかもしれない。

 だが、俺は知っている。


 こうまでして積極的に女の子に追いかけられた時、大抵物凄い厄介ごとが降ってくると。

 どうする、ここまで突き止められたのだ。

 他にどう偽装すべきか。


 そもそも、


「どうして俺がここにいると分かったのでしょうか」

「それはもちろん、そこにいるレオノーラちゃんにお願いしたからよ」


 そう言ってエイダは自信ありげに言い切った。

 エイダがやったわけではない気がしたが、やはり水竜ともなれば俺の隠している魔力すら探知してしまうのかと俺は思いつつも、問題点さえあればそこを直してしまえばいい。

 そう俺は考えて水竜のレオノーラに、


「どうして俺がここにいると気づかれたのですか?」

「抱き上げられた時のにおいで追ってきたのじゃ。エイダがお主の使用済みの服も着ていたし」


 そう返された俺は、まさか臭いで追ってこられたとは思わず凍り付く。

 だが長距離移動をしてしまえばきっと俺は気づかれない……と思っていたがそこで、


「じゃが、妾もお主の事が気になるのだ。妾が捕らえられた時のあの魔法、この世界では見かけないものだった。それをあっさりと解くその力も含めて、おぬしは普通ではない。それに……妾が思うに、あの“瘴気”についてお主は何か知っているな?」


 そうレオノーラは言う。

 どこで気づかれたんだと俺は思っているとレオノーラは、


「すぐに顔に出るのぅ。なに、妾を助け出してくれた時にあの“瘴気”にそこまで恐れを抱いていなかったようだからのう。何か事情を知っているのではないかと思ったのだ」


 そんな的確な指摘に俺は沈黙することしかできない。

 どうする、どうすればいい、俺がそう悩んでいるとエイダが俺に近づいてきて、


「“瘴気”について貴方は知っているの?」

「……それは、まあ、少しは……」

「ぜひ、教えて欲しいわ。あれはいったい何なのかしら。それに、あの“瘴気”には“闇ギルド”が関わっているみたいだし……」

「それで、どうしてそんなにあの“瘴気”が気になるんだ? エイダは」


 一応そちら側ではないと思うが、そう俺は確認のために“嘘”かどうかの判定魔法を隠蔽しながら展開して聞いてみると、


「……私の家族が、“瘴気”に侵されて……しかも、この国のいたるところで“瘴気”の目撃例が増えているのよ」


 そう言ったのだった。





 この世界、正確にはこの国で“瘴気”が発生しているらしい。

 よく分からない現象がこの世界で起こっていると、俺は女神さまに呼ばれただけだったはずだ。

 なのに気づけば前の世界に関係がありそうな何かに巻き込まれている。


 ただ一つ気になるのは、


「国中で噴出した? 自然発生的に?」

「そうよ。それがどうかしたの?」


 エイダがそう返してくるが、俺にとってはそれは奇妙に感じる。

 何しろそういったものが噴き出すのは決まって、“魔族”がそこにいるからだったからだ。

 だが、この世界のあの魔王たちが使う“闇の魔力”からは“意思”が感じられない。


 そもそも“魔族”の元をただせば“闇の魔力”なわけで、『卵が先か、鶏が先か』といったような状態なのかもしれない。

 前の世界では、あの世界に現れた別勢力のようなものだった。

 世界を作った“神”も含めて滅ぼされそうになったがための戦いだった。


 いわば、意志を持って“暴走”した状態があの“魔王”“魔族”といった敵でもある。

 “闇の魔力”も使いようによっては、世界の一部としてうまく働かせられるとも言われているらしい。

 扱いが難しく、神々でもそれが扱えるのは一握りといった話も聞いたことがある。


 だが、ちょっとした雑談で聞いたその話と、前の世界で俺が遭遇した悪夢のような倒すべき敵といったイメージが強くて、本当か? とも思っているが。

 話を戻すが、自然発生的にその“闇の魔力”が噴き出しているらしいが、


「そこに“魔族”がいたりはしないのか?」

「“魔族”? おとぎ話じゃあるまいし、そんなものいるわけがないでしょう? 闇の女神、ハデス様もそんなもの作ったといった話は聞いたことがないし」

「闇の女神、ハデス様?」

「そうよ。でも……へんね」


 そこでエイダが俺に近づいて俺の顔をまじまじと見る。

 どうしたのだろう、というか顔が近すぎる。

 エイダはこう見えても美少女なのでこう、キスするくらいの距離にあるとは言わないが、ちょっと近すぎのような……と俺が思っていると、


「貴方の魔力、何か“変”だわ」

「“変”?」

「そう。あまりにも個性がなさすぎる。純粋な魔力に近いというか、以前本で読んだことがあるけれど、“異世界人”のように見えるわ」

「それはそうですよ。俺、異世界人ですし」

「そうなの?」

「はい」


 とりあえず俺はそう答える。

 今の所この世界は異世界人に対してそこまで偏見がなさそうなのだ。

 だから答えても大丈夫かと俺は思ったのだが、そこで、エイダの目の色が変わった。


「異世界人、女神さまがこの異変に対処してもらうために何人か異世界人を呼んだと聞いているわ。あなたがその一人なのね……追いかけてきてよかったわ。手伝って!」

「ええ! 俺、この世界では大変なことはしたくないんだ」


 俺は素直に自分の気持ちを告げた。

 誰だって大変なことはしたくない、それは当然のことであって……。

 エイダがじっと見てから頷く。


「嘘はついていないようね。それに、ハデス様の事を知らないのも異世界人なら説明がつくし」

「……そのハデス様ってどんな存在なんだ?」

「この世界に“闇の魔力”が影響を及ぼしたり入ってきたりしないようにする、そういった操作する能力を持った女神さまという話よ。プロセルピナ様と一緒にあがめられているわ。……地味でよく分からないけれど、一緒にあがめてくれなければ天罰を下すわよ、といった理由でそうなっていたはず」


 そう、エイダは俺に説明してくれたのだった。


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