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ある日俺は、異世界に再び召喚されてしまった

 俺、霧島颯太きりしまそうたはごく普通の高校生だった。

 背もそれほど高いわけでもなく、成績もそこまでいいというわけではなく、そんな平凡な人間であったはずだった。

 そんな俺が異世界に召喚されたのはつい一月前の事。


 その世界では残虐非道な魔王が人間たちを苦しめており、その世界の人たちによって俺は、その他大勢とともに召喚されたのだ。

 異世界人というものは、異なる世界に呼び出されると『』な理由により特殊な力を得るらしい。

 それらはチート能力と呼ばれて、その力を駆使して俺たちはその世界の危機に立ち向かうことになった。


 ちなみにどんな特殊能力かはその世界では“ステータス・オープン”といった能力や特殊能力を見るといった方法が確立していなかったため、俺は何の能力か分からない“外れ”だと思われていた。

 それでも同じ世界から召喚されたクラスの友人やその世界の人に支えられながら俺は、自身の能力を開花させて魔王を倒し、英雄となった。

 ちなみにこの能力は元の世界に戻っても使えるらしく、能力はそのままだったりする。


 また帰り際に、またどこかの世界に召喚されたら、新しいチート能力が手に入るかもしれないと俺は、その世界の女神さまに言われたのだが……。


「俺、もうこんな大変な思いはしたくないので、召喚しないでください」

「え~……わかりました。救っていただいたのは事実ですから。でも、他の人に自慢するのはいいですよね」


 そう女神さまが言うので、世間話くらいはいいか、と思った俺が愚かだったのだ。

 平穏な学生生活を過ごしながら、異世界でともに戦闘をした友人と時々あの時の話をしながら期末テストに悲鳴を上げて、どうにか赤点を回避して、もうすぐやってくる夏休みに思いをはせた学校の帰り道。

 せっかくだからと寄った本屋で漫画本を一冊購入して、今日はこれを読むかと楽しみに歩いていた時にそれは起こった。


「! これは……異世界召喚用の魔法陣!」


 懐かしい魔力の気配と、以前の召喚で手に入れた能力でそれが何かに気づいた俺は、地面に浮かび上がったそれから即座に飛び跳ねるようにして逃げた。

 だが、そんな俺をあざ笑うかのように光の魔法陣は追ってくる。

 俺自身に狙いを定めたようだった。


「なんでだ。俺は、俺は、平穏な生活が欲しいだけなのに……絶対に逃げ切るか、他の一般人を放り込むか……そうだ、そうしよう」


 俺は俺自身の身代わりになりそうな人物はいないか確認した。

 だが、こんな時に限って周りには誰もいない。

 悔しい気持ちになりながら俺は、この場から全力で逃げようとした、のだが。


「あ! 返せ!」


 そこで俺の漫画がそこで光の魔法陣から手のように伸びた光の触手に掴まれた。

 俺は慌ててその本を取り返そうとするも、その時、つい、その光の魔法陣に足を踏み入れてしまう。


「しまった!」


 そう俺は叫ぶも、時はすでに遅く。

 その魔法陣が先ほどよりも強く白く輝いて俺は……以前のように、この世界から違う場所に転送されたのだった。 







 光の魔法陣を踏み込んでしまった俺。

 逃げきれなかった……そう悲しい気持ちになっているとそこで、周りの景色が変わる。

 そこは宇宙空間のような星空に満たされた場所だった。


 ここはどこだ?

 俺が警戒しながら周りを見つつ、この世界が一体何なのかを確認しようとしていると、


「ここは私たち女神が暮らす、個人的な空間プライベートルームです」


 そういって現れたのは、長い銀髪に青い瞳の、白い服を着た女だった。

 強い魔力を感じると俺は思うと同時に、


「女神?」

「はい。あなたをこの世界に呼び寄せた女神です。名前はプロセルピナと申します。お見知りおきを」


 そう、胸のあたりをさり気なく強調しながら女神が俺に言う。

 そのあたりはどうでもいいと俺は思いながら、


「今すぐ俺をもとの世界に返してください」

「それはダメよ。私たちの世界で、やって欲しいことがあるもの。……ハデスちゃんが何をしようとしているのか分からないけれど、私たちの世界を震撼させる行為はダメよ。もっとも、彼女が原因ではないかもしれないけれど」


 このプロセルピナという女神が言うには、どうやらまた世界の危機を救えというらしい。

 そう聞いた俺の脳裏に一月前の異世界での出来事がよみがえる。

 時間軸の関係上、異世界の数年以上は俺の世界の時間は一秒程度でしかないらしい。


 その関係で日常生活で大変なことにはならなかったのだが……。

 とはいえ、あの異世界での大変な戦闘を思い出して俺は、


「絶対に嫌です。俺はゆっくり元の世界で平穏を楽しみたい」

「残念ね。これは決定事項なの」

「……」

「私を殺そうとしても無駄よ? 貴方にそれだけの力があるのは、お友達のツクヨミちゃんから聞いているけれどね」

「……別に殺しはしませんよ。逃げるだけです」


 そう俺が言い返すと、女神様は不思議そうに目を瞬かせてから楽しそうに笑い、


「倫理観がしっかりしているわね。それとも貴方の能力のせいかしら? でもね……実は逃げられないように、ここに召喚した時複雑な魔法をつけておいたの」

「なんだって?」

「それを解くヒントは私の世界にあるわ。頑張って探してね」

「なんてことだ……こうなったら極力戦闘に従事しない方向で、スローラウフを頑張るしかない」

「ふふ、それでね、この世界での貴方のチート能力は……空間創作クリエイティブ・ワールドというものらしいわね」


 そこで俺は、女神様だから見えるのだろう、この世界で発言してしまうチート能力を告げられる。

 そこで女神様が、


「魔法を作れてしまう能力らしいわよ。……微妙な顔をしているわね。意味は分かるけれど、使い勝手のいい能力なのは確かよ? チート能力の使い方はすでに分かっていると思うから、後は送り込むだけ」

「……わかりました。今、元の世界に戻ろうとしてもうまくいかないので……諦めて送られた世界でスローライフでもしますよ」


 そう俺が、暗に戦わないぞと言い返すと女神が愚か者を見るような目で、嗤った。


「かまわないわ。他にも何人も呼んでいるしね。でも……」

「でも?」

「そのチート能力をもつ貴方を、この世界の人間が逃がすと思っているのですか?」


 そう笑った女神様の顔が、俺には悪魔の嘲笑に見えた。そして、


「まあ、何か困ったことがあったら呼んでね。時々遊びに行って様子を見るから」

「いえ、来なくていいです。というか、女神様本人がそう簡単に行き来できるなら自分でやってください」

「そうしたいのは山々だけれど、今回の件が私が触っても大丈夫なのか分からないのよ」

「……ひょっとして調査をしてほしいというのもあるのですか?」

「そうね。それもあるわ。でも……私としては、ツクヨミちゃんが自慢していた“英雄”の実力をこの目で見たいというのもあるわ」

「……」

「というわけでよろしく~」


 そういって女神さまが俺の近くにまで来て、額にキスをする。

 同時に再び光に包まれて俺は、どこかに転送される。

 こ、こんなキス一つで誤魔化されると思うなよ、で、でも女神さまは美人だったが……などとそう俺は童貞の宿命たる、女耐性の低さを痛感しながら思ったのだった。



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