表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
勇者達の翌朝(旧書)  作者: L・ラズライト
2/13

1.「旧世界 守護者の降り立ち」

序章より前、守護者がホプラス達のいるワールドに、着任した時の話です。守護者の任務や、最終目的、人物紹介を兼ねています。


パーティーキャラ以外の人物照会(旧書)


◎コーデラ王国

○クレセンティス12世…国王。王妃は故人。

○クリストフ …第一王子。ディニィの兄。故人。

○バーガンディナ(ガディナ)…第二王女。

○イスタサラビナ(タッシャ)…第三王女。


○ザンドナイス公爵…クレセンティス12世の叔父。

○カオスト公爵…クレセンティス12世の弟

○マックスオード…カオストの長男。バーガンディナの前夫。故人。

○ヨルガオード…マックスオードの弟。


◎騎士団

○サングィスト…団長。孤児院出身。ホプラスを騎士団に推薦した。

○ベクトアル…副団長。貴族出身。

○クラディンス…養成所の教官

○メイディングス…養成所の教官

○ダストン医師…養成所の医師。女性。


◎騎士団。ホプラスの同期達

○クィントス・オ・ル・タルコース…養成所を二番で卒業。名門貴族。土魔法。

○サディルス・オ・ル・クロイテス…養成所を三番で卒業。名門貴族。クィントスの幼馴染み。水魔法。

○スイ・アリョンシャ…地方の貴族の庶子。風魔法。

○アベル・ガディオス…戦災孤児出身。土魔法。

○カントバーデ…富裕層の平民出身。

○クミオ・キーシェインズ…偉大な軍人だった、ハープルグ将軍の外孫。水魔法。

○エイラス…地方の豪農の出身。格闘が得意。

○アダマント…戦災孤児出身。火魔法。


○魔法院

○ティリンス…魔法院長兼宰相。エスカーの恩師。水と風魔法。

○エパミノンダス…行方不明の魔導師。

○ミザリウス…エスカーの同期。水と風魔法。

○ヘドレンチナ…エスカーの同期。火と土魔法。


◎冒険者ギルド アルコス隊

○アルコス…アルコス隊の隊長。ルーミの恩師。

○フィンカル…副隊長。

○サイオス…先輩隊員

○ディスパー…同上

○ルパイヤ…同上

○キンシー…同上

○ロテオン…ルーミの直ぐ上の先輩。格闘技が得意。実家は道場。

○カイル…ルーミの同期。孤児。


◎ラッシル帝国

○皇帝アレクサンド…ラッシルの皇帝

○アレクサンドラ…第一王女。

○イーヴァン…皇太子。

○パシキン…アレクサンドの兄。故人。ニコラドの反乱で、若くして死亡。

○ニコラド…アレクサンドの弟。クーデターでパシキンを追い、皇帝になるが、アレクサンドに倒される。故人。


旧書 「旧世界 守護者の降り立ち」


「これがあんたが守護する勇者。ホプラス・ネレディウス。20歳。コーデラの神聖騎士。」

連絡者の生意気なちびすけは、鏡玉を一つ出した。真っ直ぐな事が分かる程度の長さの黒髪、穏やかな顔の青年が浮かぶ。勇者候補だが、どっちかというと、神学者に向いていそうな清涼感のある人相だ。ラッシル系に東方系の血が少しまじっているらしく、やや童顔で、砂のような肌色と、黒に近い蒼い目をしている。

「神官?コーデラの神官は女性しかなれないんじゃ。」

「どこに耳がついてるのよ。神聖騎士、正式に訓練を受けた、魔法剣のエキスパート。」

だったら、単に魔法剣士と言えよ、と思ったが、口には出さなかった。

「戦災孤児だけど、水魔法の能力を買われて、騎士養成所に入る。文武両道に秀で、常に全科目主席。卒業後は騎士団に入って、本来ならエリートコースまっしぐら。」

「今は冒険者ってか?結構いい男だし、原因は女か?」

「…その甲斐性があれば、まだましだったかも」

「は?」

「こっちの話よ。そら、その横にいる金髪を見て。原因。」

ああ、やっぱり女か。と思ったが、よく見たら男だった。顔だけ見てれば間違うが、場所が風呂場らしく、ホプラスよりは低いが、すらりとした高い身長と、細めだが、鍛えて引き締まった剣士の全身が見える。色白の肌、ガラス玉のようなオリーブグリーンの目。純金色の金髪は、男性に使うのは何だが、古典的コーデラ美人の特徴だ。

「ルミナトゥス・セレニス。18歳。剣士で火魔法が得意だけど、魔法剣は使えないわ。彼はホプラスの幼馴染みで、故郷の町が最初の複合体に襲われた事件で、八つの時に生き別れ。13の時に再会。最初は冒険者ギルドの団体部にいたけど、14の時に独立。ホプラスは一緒に行くために、騎士を辞めようとしたけど、騎士団長の計らいで、身分は騎士のまま、ギルドに貸し出し。」

「同性愛者の勇者コンビか?一昔前の流行りじゃないか。最近はオーソドックスが主流だと思ってたが。」

「…ルミナトゥスはラーリナ・ライサンドラの相手よ。ホプラスはディアディーヌ王女の方。」

鏡玉の中では、ホプラスが、「もう出るのかい、ルーミ。ちゃんとあったまったかい。」と、友人の背中に声をかけていた。ルーミは「火魔法使いはのぼせやすいんだよ。しってるだろ。」と答えて鏡玉の視点と共に脱衣所に。

そこに、女性がいた。長い黒髪に、ラベンダーブルーの切長の目。色白のラッシル系だが、どことなく国籍不明の神秘的な雰囲気があった。美術品のような、完璧な容姿をしている。

「なんだ、覗きかよ、ラール。」

ああ、この女性がラーリナ・ライサンドラか。ラッシルの皇女の側近だが、始祖の烈女王エカテリンの血を引く、宿命の女性。実は今の皇帝の兄の孫娘にあたる。今回の計画の要の一人。

「服を持って来たのよ。入ってるうちに置いとけばいいかと。」

「エスカーに頼めばよかったじゃないか。」

「エスカーはディニィ姫達と、お茶よ。邪魔するほどの用事じゃないし。たかだか、あんたの服くらいで。」

鏡玉がもう一つ。プラチナブロンドの巻き毛に、ぱっちりした青い瞳の、可愛らしい女性が、優しく微笑みながら、傍らの緋色の髪の少年のカップに、お茶を注いでいた。少年の瞳は、お茶の色を写したアンバーだった。普通、赤毛は色白が多いが、彼は特徴的な赤銅色の肌をしていた。

「ラーリナとディアディーヌ姫は分かるわよね。先に説明しておいたし。ラーリナは風魔法と飛び道具で戦うわ。旋風のラールと呼ぶ人もいる。皇帝の命令でディアディーヌ王女の護衛をしているわ。ホプラス達とは数年前からの知り合い。王女は、聖魔法の最高位の術まで取得している、現在、たった一人の神官。回復役ね。」

ブロンドの女性が姫のようである。コーデラの第一王女。兄の死により、本来なら第一王位継承者だが、コーデラ王家では長女は独身原則の神官になる慣習があり、既に結婚している次の妹の義父が野心家なため、立場が微妙な物となっている。だが彼女は、姉妹の中で唯一、始祖の聖女王コーデリアの血を持っている。計画のもう一つの要。

「横の子はアプフェロルド・オ・ル・ヴェンロイド。15歳。年のわりに子供子供した外見だけど、これでも宮廷魔術師の一人よ。なんと全属性の最高技まで使えるわ。暗魔法も基礎だけならいける。予想外のギフトよ。南コーデラの名門貴族の子だけど、ルミナトゥスの種違いの弟になるわ。エスカーって呼ばれているのは、庶民時代の名前がエスカラルドだからよ。あの髪と目、肌の色はヴェンロイド家の特徴。」

種違いを差し引いても、ルミナトゥスとはにていなかった。強いて言えば、口元から顎のラインくらいか。

その口元に菓子がついているのを、姫が優しく指摘する。澄まし顔の少年は、照れてすぐ拭った。

この優雅な可愛らしい女性がホプラスの相手か。姫と騎士、王道だな。だが、しかし。


もう一つの鏡玉では、ルミナトゥスが、ラーリナに、「静かに」というしぐさをし、浴場のホプラスを「すぐ来てくれ」と深刻な声で呼んだ。ホプラスは、急いで脱衣所に出てきた。ラーリナを見た彼は直ぐには事態が掴めないようだったが、「え、ラール…何で?!」と短く叫び、慌てて浴場に戻る。ルミナトゥスが笑いだした。

「ルーミ、あんた、いったい何がしたいのよ」

「だって、俺だけ見られるなんて不公平じゃないか」

「だってさ、ホプラス、悪かったわね。」

「あ、いや、君は悪くないだろ…て、ルーミ、いつまで笑ってんだ。いい加減にしろ」

「怒るなよ。負債を共有して共に償ってこそ友、と聖典にあるだろ」

「こんな応用はするな!それに正しくは、共に作った負債であれば、共に背負うのが…だ。負債を先につくるんじゃない!」

一見微笑ましいが、これでは、ルミナトゥスとラーリナは無理じゃないか?この状況で、二人の間から、色気がほとんど感じられない。まだラーリナとホプラスのほうが可能性がありそうだ。

「あ。言っとくけど、ホプラスとラーリナってのは無しで。本人達は知らないけど、腹違いの姉弟にあたるから。」

改めて二人の顔を見くらべる。先の種違いの二人より、共通点が少ない。真っ直ぐな黒髪の外には。

「ラーリナは色々民族の混じった母親に似た。ホプラスは多少、祖父の悲劇の皇太子に似ているけど、母親がコーデラと東方のハーフだったから、ほとんど他人の顔をしているわ。いっそこの二人で、血を濃くしては、という意見もあったらしいけど。」

「…さすがにそれはまずいだろう。もっと原始社会ならともかくだが。」

「しらなきゃいいでしょ…と言いたいとこだけど、二人とも、右太股の内側に、三つ並んだ特徴的なホクロがあるのよ。そういう事態になったら、なんぼなんでも、ばれる位置だからね。」

鏡玉では、ホプラスと入れ違いに、小麦色の肌の、かなりな長身の男性が「どうしたんですか。大声出したら、隣の女性用の方にまで響きますよ。」とのこのこと出てきた。先の二人に比べて、背はかなり高いが、ほっそりと無駄な筋肉はない。腕はがっしりしている。

「彼はキーリ。30にはなってないはずだけど…忘れたわ。狩人族っていう、地味な少数民族よ。弓が使えるから、使い勝手はいいわ。土魔法も使えるはずだけど、どうだったかしら。」

黒褐色の髪に、その髪より黒っぽい、濃い褐色の瞳。風呂場なのにも関わらず、小降りだが特徴のある耳飾りをつけている。彼は、ラーリナの姿を見付けると、驚き、先程のホプラスより、素早く引っ込んだ。

「やだ、ごめんなさい!あなたがいたなんて思わなくて、キーリ。」

ラールは慌てて、「エスカーに頼んで、あなたの服も持ってきてもらうわ。」と、足早に出ていった。キーリと呼ばれた小麦色の青年は、「僕は持ってきてますから…」と小声で付け加えた。

「何だ、あの反応。俺たちの時は平然としてた癖に。」

とルーミが面白くなさそうに言った。ホプラスは脱衣所に出てきて、体を拭き始めた。

「ラールにとっては、僕たちのは、幼児の裸くらいの感覚なんだろ。」

とホプラスは弱った笑顔を友人に向けた。

「4つ違いで、幼児扱いかよ。」

「やってる事が幼児な以上、文句は言えないよ。」

「お前、男のプライドないのかよ。一歩譲って、お前の場合は、見慣れてるから感動が薄いとしてもだよ…」

するとキーリが「えっ」と叫んで、二人を交互に見た。ホプラスが慌てて弁解に入る。

「え、あ、違うよ。変な意味じゃなく、以前に、一緒の仕事で、僕が麻痺ガスで意識無かった事があって、ラールが看病してくれたから。」

ほっとするキーリ。その時、

「その話ならわしも聞いた。」

と、奥から、キーリよりさらに日焼けした、壮年男性が出てきた。髪と目は、逆にキーリの物より少し明るいが、体格は長身の三人にまじるとズングリと見える。固い筋肉の盛り上がった、戦士の肉体をしている。

「ルーミが泣きわめいて使えないから、全部私がやった、とか。」

戦士はそれだけ言うと、鼻唄を謡ながら、適当にタオルを巻いて出た。

「あ、ちょっと、ユッシさん。そんな格好で外に出たら、またサヤンに怒られますよ。」

とキーリが声をかけたが、戦士、ユッシと呼ばれた男性は、「平気、平気」と外に進んだ。残された三人は暫し気まずく顔を見合わせる。

「ラールの奴、昔の事だと思って好きに言いやがって…」

ルーミは中途に着替ながら、外に出ていく。

「こら、ルーミ、もっとちゃんと拭かないと。」とホプラスが声をかけたが、聞こえなかったようだ。

鏡玉の視点はホプラスに移ったのか、微妙な表情で微笑む彼を捕えている。

「これでなし崩しに、また飲みくらべで白黒つけよう、って展開になるんだろうな。…酒でラールに勝てるのは、酒神でも怪しいのに、学習しないんだから」

「それじゃ僕たちも行きましょう。後始末とか色々…」

会話の途中で、連絡者はもう一つの鏡玉をさし示した。お茶にもう一人、小柄な少女が加わっている。髪はライトブラウン、目はやや明るい茶色で、くりくりとした表情が可愛らしかった。

「その子はサヤン。魔法は使えないけど、素手の格闘術をマスターしてるわ。さっきの親父は兄のユッシ。盾がわりにはなるかな。兄貴ってなってるけど実は娘で、彼が傭兵時代に…」

「もういい、種とか腹とか、ごちゃごちゃしてきた。要するに重要なのは四人と、ギフトだろ。時間も予算もないなら、脇役をからませる余裕はなかろう。」

「さすがね。まあとにかく、あんたはドライで手早く固い仕事ぶり故の抜擢だから、そのへんはよろしくね」

俺は適当に返事をした。この時は楽観していたからだ。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ