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勇者達の翌朝(旧書)  作者: L・ラズライト
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「序 融合の始まり」

物語は親子二代にわたり、「旧書」は、親世代の話になります。


守護者と勇者が融合した直後の話です。


融合までの話や、番外編は、「旧書・回想」にあります。


人物照会(旧書)


◎守護者

主人公。男性。年齢不詳。「超越界」から、「勇者」を手助けするために、ワールドに降り立った。精神体またはホプラスと「融合」した状態で存在する。


◎パーティキャラ(年齢は旧書本編開始時のもの)


○ホプラス・ネレディウス

第二の主人公。男性。20歳。身長185cm。黒髪に、黒に近い濃い蒼い瞳。

コーデラ王国の神聖騎士(正式な訓練を受けた魔法剣士)出身の冒険者。水魔法が得意。武器は両手剣。

母親は赤ん坊の彼を抱えて行き倒れ、死亡。彼は教会に引き取られる。父親は不明。


○ルミナトス・セレニス(ルーミ)

男性。18歳。純金色の明るい金髪に、オリーブグリーンの瞳。身長177cm。剣士。

剣の他は火魔法が得意だが、神聖騎士ではないので魔法剣は使えない。武器は片手剣だが、機動力重視で、盾は持たない。

パーティのリーダー。

父親は生まれる前に亡くなり、母親の死亡により孤児になったため、教会に引き取られ、ホプラスとは兄弟同然に育った。


○ラーリナ・ライサンドラ(ラール)

女性。22歳。173cm。長い真っ直ぐな黒髪に、ライラックブルーの切長の瞳の、美貌で完璧なスタイルの女性。国籍不明なミステリアスな雰囲気がある。武器は飛道具、ナイフ等。パーティ内唯一の左利き。風魔法が得意。

北の大国・ラッシル帝国の皇室に仕えている。


○ディアディーヌ・デラ・コーデラ(ディニィ)

女性。19歳。165cm。聖魔法を使う神官で、コーデラ王国の第一王女(第二子)。セミロングの巻き毛のプラチナブロンドに、明るいブルーの瞳。

いかにも聖女といった女性だが、しっかり者の一面あり。

コーデラでは長男は王に、長女は神官長になるため、子供のころから神殿で努めていた。


○エスカラルド(エスカー)(アプフェロルド・オ・ル・ヴェンロイド男爵)

男性。15歳。163cm。緋色の赤毛に琥珀色の瞳。赤銅色の肌をしている。

ルーミの弟だが、父親が違うためもあり、外見には、ほぼ共通点はない。

聖魔法を除く全属性の他、使い手の少ない暗黒魔法も基本技だけこなす。

少年の身で、コーデラの宮廷魔術師に名を連ねる。

ルーミと共に一時は教会に預けられるが、彼だけは実の父(先代アプフェロルド男爵の身内)に引き取られる。

「エスカラルド」は、産まれた時に両親の付けた名前。男爵家に引き取られてからは「アプフェロルド」。



○キーリ

男性。27歳。190cm。土魔法と弓矢、ボウガンを使用して戦う、狩人族の一番の戦士。

褐色の髪に黒い瞳。小麦色の肌をしている。狩人族は、宗教体系が異なり、自然崇拝で他者と交流しない民族だが、彼は、世界の危機には外部との強力も必要と考えている。


○サヤン

女性。14歳。155cm。ライトブラウンのショートカットの髪に、明るい茶色の瞳。魔法は使えないが、気功と言われる、素手の格闘術にたけている。

明るく元気よく、気っ風のよい性格。

料理が得意。実家は老舗の料理旅館。


○ユッシ

男性。44歳。172cm。茶色の髪に茶色の目。強靭な筋肉質の戦士。片手斧と、攻撃用のトゲのついた盾で戦う。

魔法が使えないため、外国で傭兵をしていた時期あり。

サヤンの「兄」。

両親は先祖代々、料理旅館を経営しているが、料理より酒が好き。おおらかな性格。


序 「融合の始まり」


光の中で意識が戻った。

目の前には、その光よりも儚い色味の、金色に縁取られた、真珠のような顔があり、そこから、見開かれた空色の瞳が、こっちを見ていた。

「まあ、ホプラス。」

感動でそれ以上、なにも言えなくなったディニィ姫が、ベッドの横に座り、俺を、いや、ホプラスを見つめている。そして白い毛布の上には、緋色の何かがある。

ああ、エスカーの髪だ。少年はその緋色の頭を動かし、半分突っ伏していて、一言、「ホプラスさん、よかったあ…」と眠そうに呟くと、そのまま、既に半開きだった、琥珀色の瞳を閉じた。

エスカーとディニィ、二人は俺の看病をしてくれたのだろう。傍らに、魔法動力の浄化装置が見える。

奥からバタバタと音がして、「早く、早く」というかん高い声が響き、小柄な少女が部屋に入ってくるなり、ベッドの俺に飛び付いた。ライトブラウンの短い髪が、裸の胸に辺り、見上げる顔から、茶色の瞳が濡れていた。

「ホプラス、良かった、もう、心配で心配で!」

いきおいのため、彼女の体重を支えきれず、起こした上体は再びベッドに沈む。

「サヤン、ホプラスは、病み上がりだから。」

「あ、ごめん」

離れた少女、サヤンの背後、黒い頭が二つ見える。やや明るいほうの頭、長身の狩人族の青年キーリが、放心したような笑顔で、静かにこちらを見ている。髪と同色の褐色の瞳から、小麦色の頬には、涙こそなかったが、小さく「よかった」と呟いた言葉が、柔らかく響いた。もう一つ、傍らには、長い黒髪、すらりとした脚、彫刻のように完璧な立ち姿の、ラールがたたずんでいた。

「何よ、無駄足になったじゃないの…」

何時もは冷たいラベンダーブルーの瞳に、暖かい涙を浮かべて。

二人の間から、のっそりと黒い頭の壮年男性が現れ、「もってきたぞ」とどら声で叫びながら飛込んできた。

「兄貴、遅いよ。なおっちゃた。」

サヤンが俺から完全に離れ、年の離れた兄に言った。兄・のっそりとした重戦士のユッシは、妹とお揃いの目をまるくし、

「火竜炎症が?信じられないが、まあとにかくよかった。」

と、荷物を下に下ろした。

俺は仲間を一通り見回した。ディニィ、エスカー、サヤン、キーリ、ラール、ユッシ。

その時、最後の一人が入ってきた。

ちょうど陽のあたる場所から、静かにこっちを見ている。純金のような髪が煌めいている。ゆっくりベッドに近付くと、足を止めた。何時もはくるくると表情を変える、オリーブグリーンの工芸ガラスのような目は、特に何の表情も浮かべず、俺を見ていた。

「ルーミ。」

俺は、ホプラスは彼の名を呼んだ。その途端、俺の意識にホプラスの意識が怒涛のようになだれ込む。これが融合か。俺の意識は事態を把握した。そして、次にホプラスの意識から、絶望的に切ない感情が、怒涛のように溢れてきた。

ルーミ、彼こそは、ホプラスがその全てをかけて、愛しんできた、唯一の存在だった。世界を救う、勇者パーティのリーダーになる、姫と結婚して王になる、今まで示唆してきた全ての道、誰もが焦がれる未来。それらに見向きもせず、たった一つだけ、焦がれたもの。

「起きたか。」

彼は俺を見て、一言いい、俺の返事をまたず、言い放った。

「回復したら直ぐに出発だ。三日もあればいいだろ。」

「ちょっとルーミ、あんたね、ホプラスはあんたの事を。」

サヤンが抗議して口をはさんだが、ルーミは彼女の方をみてから、整然と続けた。

「もう二度とやるな、とか、俺なんかかばうな、なんて言っても、どうせ、こいつ、聞く気なんてないだろ。俺が逆の立場でも、同じことするし。」

心臓が止まるかと思った。その通りだ。俺の中でホプラスの心が肯定する。

「ああ、そうだね。」

俺は微笑んで見せた。ホプラスの笑顔で。

「お邪魔みたいだね。」

ラールが先程の涙はどこへやら、からかうように言った。続いて姫が

「ユッシさん、エスカーを運んでくれる?」

と言ったのに始まり、

「おお、看病づかれだね。」

「ディニィも休んだ方がいいね。」

「あたし達も休もうよ」

と口々にいい、全員、妙なテンションで部屋を出た。最後に、サヤンがにやにやしながら「お二人さん、ごゆっくり」と言い残して。

「その手の冗談はよせといってるだろ。何だよ、サヤンまで。」

ルーミはふくれつらで、「覚えてろよ、ラール。」と、きっかけを作った彼女に、少し毒付いて付け加えた。いつもなら、そういう冗談はエスカーがいい、みんなは言わないが、彼が寝ているせいか、はたまた俺が助かって浮き上がった空気になっていたからか。

「だいたい、あいつらだって、似たようなもんじゃないか。なあ、ホプラス…え、どうした。」

ルーミが振り向いて俺を見て、驚いて駆け寄り、顔を除きこんだ。俺は彼に何か言ったと思う。開けた口の中に、涙が入ってきたからだ。

これは不味い、守護者としての俺は考えていた。融合してしまったら、人の遺伝情報が伝えられなくなるから、子供は出来なくなる。これで監視者の計画から、ホプラスは外されるだろう。後の事を考えると、不味いの一言につきる。

だが、涙はホプラスとしての俺の物だった。融合しようがしまいが、計画が変わろうが変わるまいが、今も昔も、これからも、監視者の計画に、ホプラスとルーミの道はない。いや、それにもましてーー。

「うまく喋れないのか?やっぱり薬いるんじゃないか?ディニィに頼もうか?」

本気で俺を心配し、先程の虚勢はどこへやら、おろおろと、俺の顔を見つめる、ルーミの目。完全な、最高の友情に支配された視線。

そう、道はないのだ。彼を愛する、彼にとっては。


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