エピローグ「受け継がれし魂」
空を見ると、桜が舞っていた。
まるで命が散っていくように、ひらひらと。
今日四月二十四日に祖父は亡くなった。
祖父はいつも家にいない親の代わりに俺の面倒を見てくれて、いつも俺に一人で生きていくことが出来るように俺に生きるための術を教えてもらった。
「鈴音おじいちゃんに最後の別れをしなさい」
お袋に祖父との別れをするよう言われ俺は祖父の棺桶の前に立った。
「爺ちゃん、今までありがとう本当にありがとう」
俺は祖父の棺桶の前で泣きそうになっていると祖父の着ている白衣に何か紙が入っているのに気付いた。
祖父はすでに死期が近かったので病院で白衣を着ていたのである。
その紙をとると、中心に遺書と書かれていた。
俺は、紙を服の中にしまい祖父の棺桶から離れた。
そして俺は、お袋の居る方に足を進め祖父との別れを終えた。
祖父の葬式が終わり家に帰ると、俺は祖父の遺書を開け読んだ。
『鈴音へ私の亡き後は泣かないでください。あなたには日本人として、代々続く武士の子孫として強く生きてほしい。あなたには私の遺品として私が大切にしてきたものを渡します。家の倉庫の奥にある木箱の中を見て下さい、そこに私があなたに最後に伝えたいことのすべてが入ってあります。どうか強く生きてください』と書かれていた。
俺は手紙を読み終えると家の外にある倉庫に向かって走り出した。
倉庫の中を調べると、細長く腐りかけた木箱があり箱を開けるとそこには桜の柄のついた鞘に納められている刀があった。
刀を鞘から抜くと刃の部分に紙が巻かれていた。
巻かれていた紙をとると紙の裏に字が書かれていた。
「この刀を受け継ぎし者が現れし時我の意思を受け継ぐことを願ふ 夏樹響」