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気になるフォロワー数

画面の前のみなさま、ご機嫌よう。それではさっそく自己紹介いきます。せーのっ、〝ミステリアスかつピュアキュート、みんなのユルフワ♡海月クラゲ女子的お嬢さま〟沙羅ちゃんでぇす☆ 近頃ますます寒さが増してきて、暦は一年で最も忙しいという師走となりましたが、みなさまはご存知ですか? 25日の夜になると、たったひとりで日本全国のみなさまの家まで素敵な贈りものを届けてくださるという聖人君子、さんたくろおす氏を!! わたくしは昨日氏のことを初めて知りましたが、氏の献身的なボランティア精神にいたく感激してしまいましたので、みなさまとこの気持ちのたかぶりを共有したくなってしまったのです。何故なら、さんたくろおす氏はーー


「ねえお嬢、その話、何が何でも絶対にしたい?」


ーー隊長、何故そんなことを聞くのですか?


「サンタって世界中の誰もが知ってる超超超有名人なんだよ? すでに知ってる話で感激するのは難しいとあたしは思うなあ」


ーーそうですか。さんたくろおす氏のことはもうすでにみなさまご存知ということですね。では一言だけ、この場を借りて、さんたくろおす氏にお伝えしたいことがあります。


「この動画をサンタ(お嬢の親)が見てくれるかは分かんないけど、一応言ってみな」


ーーお伝えしておきたいのは、わたくしがくりすますぷれぜんととして貰えたらうれしいな♡というもののことです。


「それはなに?」


ーーそ、そそそそそそそれは..........(ゴクリ)


「..........それは?(ものすごいタメてくるなあ)」


ーーそれは...............。ファン100人。


「..........ファン100人。」


ーーはい。


「一年生になったら、友だち100人できるかな♩ 的な?」


ーーはい、100人で笑いたい♩ 世界中を震わせて♩ わっははわっははわっはっは♩!!


「何故ファン100人なのか聞いておきましょうか」


ーー理由は単純ですわ。トップアイドルになりたいから!!


「う〜ん、100人じゃトップアイドルとしては足りない感じかな??」


ーーだって、だって..........ミヒ様や、隊長のファンはたくさんいるのに..........認めたくありませんがわたくしのファンは未だに現れません。わたくしを推してくれる人、ゼロです。もうここまで徹底して人気ないとみじめすぎて笑えてきます。一体わたくしのどこがダメなんですか? 色気が無いからですか? もしわたくしを応援していただけるなら、タダでとは言いませんわよ。ファン第1号になってくださった方には、ささやかながらわたくしの使用済みぱんつを納めさせていただきます。誰でもいいのでどうかわたくしを愛してくださいませ。


「あたしは、お嬢のこと好きだよ?」


ーーありがとうございます。わたくしも隊長が大好きです。


「ありがとう、お嬢。でもパンツは早くしまって」


ーー近頃みなさまの関心がほしくて、沙羅ちゃん公式ツイッターなるものも始めてみましたが、フォロワーは未だ2人です。


「あたしと美妃だね」


ーー人様のアカウントフォローしたらフォロバしかえしてくれるかもと思いやってみましたが、未だ効果無しです。


「その手使ってもダメか〜」


ーーちなみに氷の女王・ミヒ様の公式ツイッターのフォロワー数は、何と驚異のーー


「やっべー! うわやっべー!! やっべぇよマジ半端ないって!! 原作では絡みが一切無いけど密かにもえもえキュンしてた2大キャラがカプってる薄い本と出会ったときくらいやっべぇよ!!」

「「..........ん?」」


たしかに日本語ですが、意味の解せない言葉を羅列しながらわたくしたちのアパートの一室に雪崩れこんで来た美少女は、ミヒ様です。


「美妃、この夜中に来るなって言ってんじゃん! ..........まあやっぱいいや、前言撤回。いま沙羅が人気者になるためにファンへの動画を撮影中だから、サラミカップルの絡みをお願い」

「えっ、たしかに私生活では私たち、あれやこれやにいそしんでるけど..........さすがにカメラの前では、恥ずかしいよ.........(>_<)汗」

「最後の顔文字がウゼェです。あれやこれやって何ですの」

「いやそれは..........沙羅がソファでかわいい顔していねむりしてたときに少々の、性の暴発がね」

「.................(性の暴発とは)」

「はいっ、モエ(??)エピソードご馳走さまでした〜。つかそろそろカメラ止めていい?」

「しまった!! ついうっかり暴露してる場合じゃなかった! 大事件! AFTERSCHOOLの今後を揺るがす大事件発生だよ!!」


ようやく話が戻ったようですが、ミヒ様が薄い本が何だのと取り乱す大事件とは一体何でしょう?


そんなに騒いでおいて大したこと無かったらぶっ叩きますわよ。


「何? 大事件って」

「何かさっきツイッター開けたら、私のツイートが数万規模のリツイートやらいいねやらリプライやらでにぎわっちゃってるの!!」

「いきなりそれ自慢ですか?」


一言言わせてください。うぜえ、最高にうぜえです。リツイートなんてされたこと無いです。


「それで何これすげえマジ卍と思って内容見てみたら、とんでもないワードが..........なんと、あの、中原錠次なかはらじょうじが、AFTERSCHOOL信者なんだって!!」

「えぇーーーーーー!!」


絶叫したのはシホ隊長です。


わたくしの脳味噌はその瞬間、フリーズしました。


隊長は絶叫ののち、テンパっております。


「えっ、そっ、それ..........冗談でしょ?」

「冗談じゃない、これ現実だよ。ファンに言われて中原錠次の公式ツイッター見たら、何てツイートしてたと思う?! 見てよこれ!」


ミヒ様が自分のスマートフォンを見せてきました。画面は中原錠次ーー間違いなくわたくしの兄さまの、オフィシャルツイッターです。


「ほら、この前撮影したBang! のライブ動画が貼ってあるでしょ?!」

「ま、マジだ..........ツイートは..........〝僕が最近、こっそり応援しているグループ。この子たちの一生懸命で全力なライブを見てると、僕も仕事頑張ろうって気持ちになれるんだ〟」

「二度じゃ済まなくて三度見したよね、このツイート!!」

「マジで本物?! アカデ◯ーノミネート常連のカメレオン俳優、歌だって出した途端にランキング第1位、日本中の老若男女に愛される国民のカレシ、中原錠次が、何であたしたちを?! まだ(・・)知名度ほぼゼロのただの超底辺地下アイドルだよ?」


2人の黄色い声がわんわんと頭の中で鳴っていますーー。


ーー兄さま。あなたの妹はあなたに再会したい一心で、あなたとの約束を破ってまで上京して、あなたにわたくしはここにいると気が付いてほしくて、アイドルをやっています。


そのはずなのに。やっと兄さまに気付いてもらえて、正しい感情は、〝嬉しい〟のはずなのに。何なのですか、この脳内に狂気のように渦巻く〝復讐〟の二文字に、呑みこまれてしまいそうです。


あなたは、わたくしに呪いをかけたまま、わたくしを捨てました。それは、人との出会いという奇跡を禁じる呪い。生涯、わたくしの行動を制限する呪い。生涯、わたくしの心をあなたへと縛りつける呪い。


ーーそして兄さま。〝こっそり応援している〟そうですが、それをフォロワー500万人越えのツイッターに書いてる時点でアザとさがキワドイです。最高に兄さまらしいです。


「中原錠次のファンがAFTERSCHOOLの3人の中の誰推しなのか聞いてるツイートしてるんだけど、それに本人がちゃんと返信してて..........」

「つかお嬢、さっきから黙りこんでどうしたの? ..........もしかして具合悪い?」

「沙羅? 何か顔が青いよ」

「わたくし、少し気分が優れませんわ。自分の部屋で休んできます」

「大丈夫? 熱があるんじゃない?」


隊長が心配そうな顔で出ていこうとするわたくしの額に手を当てました。


ーー2人に兄さまとのことを何と説明すればいいのか、まだ、分かりかねます。


「ゆっくり休めば大丈夫です。では、おやすみなさい」

「熱は無さそうだね。うん、じゃあしっかり休みな」

「おやすみ、沙羅。また明日ね!」




自分の部屋に戻って何となしにツイッターを開いてみると、わたくしのフォロワー数はもはや2人ではなく、100人をゆうに超えていました。

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