後日談
わたくしはとあるネットニュースを見て、愕然といたしました。
「瑞樹きゅんが.........モグラ女と.........熱愛発覚.........?」
わたくしの激推しアイドルが、モデルやらグラビアやらそれから女優なんぞもちょこっとやっているチャラそうな女と愛し合っている、だとーー。
そ、そんなことってーー。
「これは.........ガセだな........」
わたくしは情報を遮断することとしました。
ーーそれなのに。
「あ、その男、共演したときLINE交換しようってすげえうざかったやつだ」
「............。」
ミヒ様がわたくしのケータイ画面を覗いて、余計な一言を言いました。
「っつか!! 沙羅ってもしかしてそいつのファンなの.........gkbr」
ああ、瑞樹きゅんの爽やかイメージ、あっけなく崩壊ーー。
わたくしは打ちひしがれました。
「ねえ聞いてる沙羅?! そいつなんかやめて私にしなよ.........じゃあ、これを現実にしよう」
そう言ってミヒ様が堂々と見せてきたのは、女の子同士が情事の真っ最中ないやらしいスマホ画面ーー。
「この、ピクシブにうpされてたファンによるサラミカップルの百合漫画を今夜、現実にしよう......だってファンもそれを望んでるから、ね.........? 今夜は寝かせないよ.........?」
悲しみに打ちひしがれてばかりもいられません。わたくしは無言で、床の上で柔軟体操を始めました。
「え、沈黙はつまりおkってこと?」
「お嬢、いきなり何してんの」
隊長が雑誌から顔を上げて、怪訝そうにこちらを見ています。
わたくしは膝を伸ばしながら、言いました。
「わたくしは、グループの中で更に目立つために特技を作ることにしたのです。わたくしが目をつけた特技はずばり、軟体技」
「(アイドルが)軟体技」
「わたくし結構身体が柔らかいのです。もっと体グニャグニャ人間になって、みなさまの前で股の間から顔を出してみせます!!」
「ほう?」
「料理が得意とか、ポワポワ天然キャラを公言して爆発的人気を得ようとしましたが、そんなのでは生ぬるいようですからね」
「じゃあさっきから目を異様に見開いてるのは、何なの?」
「特技その2として、5分間ノーまばたきに挑戦しているのです」
「ほう」
「そうすれば5分間画面を独占できるでしょう。この前テレビで北◯景子がやってました」
「あれは美女がするから画面がもつんじゃないのかなあ」
ああ、だんだんと目が乾いてきますーー、あっという間に目が水分を失って、もうまばたきさせてよう沙羅ちゃん!て言ってますーー。
すると雑誌をパラパラとめくっている隊長が言いました。
「あ。沙羅、〝中原錠次、女優とお家デート〟だって」
「ああそうですか」
「〝女性の影の無かった最後のイケメン俳優が.........〟だって」
「ああそうですか」
瑞樹きゅんの熱愛発覚とは違い、わたくしには関係のない話です。
兄さまが元気でいてくだされば、わたくしはそれでいいのですから。
「てかこの相手の個性派女優、どことなくお嬢に似てるような.........うわ、引くわあ」