はじまりの王女
む〜かしむかし、崩壊しかけていたこの世界は白銀の巫女により救われたのである。
その後、数百年後に再び姿を見せると、世界を確立したことにより安定し崩壊の心配がなくなり、完全に平和となった事により、人類繁栄に誰もが数百年の間、喜んでいたが⋯⋯。
更に長い年月が経過すると、いつしかその話も当たり前のように風に流されるように無くなっていき、人類が繁栄した事により邪な心を持つ者が現れるようになった。
こうして再び世界は、領地争いの戦争時代へと陥る事になる。
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「はぁ⋯⋯はぁ、はぁ」
森の中を頑張って走る。
正直、体力などの自信はない。
っというか今にも倒れそう⋯⋯。
「けど⋯⋯ここで私が倒れたら、民が奴隷になってしまいますわ⋯⋯」
更に頑張って走るが、少し経つと立ち止まる。
「もう⋯⋯無理。っていうか⋯⋯」
周りは兵士で囲まれている。
「お姫様よ⋯⋯もうちっと頑張って走ろうや⋯⋯。民の為と言いつつ全然進んでないじゃねぇか!!」
「失礼ね!! 私にとっては全身全霊をもって走ったわ!! それに、この私に対して武器なんてもっても無意味よ!!」
「なんだと、では失われた魔法使いなのか⋯⋯! ならば体力がないのも頷ける。辺境の小さい国だからといって侮ってしまったか⋯⋯各員魔法攻撃には注意せよ!!」
兵士達は、防御形態をとる。
「私に武器など必要ないわ!! コケて死ぬLVの弱小だからね!!」
辺りがシーンと静まる。
「は? わるい。もう一回言ってくれないか?」
「しょうがないわね! しっかり聞いておきなさい! 私を倒すならデコピン1つで充分よ!!」
兵士たちが脱力し、膝をつく。
「隙ありですわ!!」
再び、トロトロと姫が森の中に走り出す。
「おい!! 逃げ!! ⋯⋯るぞ⋯⋯↓」
余りのトロさに士気が下がる。
「はぁ⋯⋯とりあえず、姫様の体力失うまで歩いて追うぞ⋯⋯」
へ〜いっと掛け声をして、ゆっくりと行動に移る。
「ふふふ⋯⋯油断さして脱出とは、私⋯⋯もしかして怪盗の才能でもあるんじゃないかしら」
追っ手が迫って来ているのが分かる。
「はぁ⋯⋯ はぁはぁ⋯⋯もう駄目⋯⋯私頑張った。もう一回油断さすしかないかも⋯⋯ふぇ!!」
大きな木の根っこに足を取られ、コケそうになるがそれを踏ん張る為、大股でジャンプしているように見えた。
後ろにいた兵士達も驚きの表情と追いつこうと必死に追いかけようとするが中々進めない。
だって⋯⋯。
超下り坂ですもん!!
木の枝が当たるたびに、意識が飛び死にかけるがあまりの必死さにそれを耐えている。
弱小姫が一生の中で1番輝いているのかもしれない時の瞬間である。
そして山の下り坂でいえば、あとは崖しかないのである。
「ぴゃぁぁっぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」
途中で止まる力もない私はなすがまま、大空を舞ったのである。
ただし、綺麗に舞ったのではなく何かに足を捕らえられた為、逆さまの状態である。
逆さまのまま、兵士がギリギリまで来てくれたのを目撃するが、手を顔に当てあちゃぁ〜みたいな顔であった。
(捕まっておけば良かった⋯⋯)
そのまま、重力の法則により身体は落下していくのだが、一緒に落ちていく縄が見え必死にとろうとする。
縄ではなく長い木の根っこであった。
咄嗟に根っこを掴むと、落下から半円を描くように落ちていく。
「やはり私には怪盗の心得があるみたいですわ! それでは皆様! 御機嫌よう」
カッコよく去れるとおもったが、その1秒後に絶望に変わる。
だって、半円描くっていっても、先は結局な所壁ですもん。
(あ、これ死んだわ。壁にぶつかるなんてこの美しいボディが半分にへちゃげるって事だよね)
後世に壁から生える女として語られていくのだろうか⋯⋯それなら、下半身だけ潰せばまだ綺麗に⋯⋯。
そうこう言ってる間に、壁が迫る。
「南無三!!」
根っこに覆われた壁を突き破り、そのまま通路を転がり疾走する。
回転最中に転がりつつ何かのボタンを押し、壁が迫るのを綺麗に抜け、矢が飛んで来てもタイミングよく当たらないでいた。
弱小姫は、いつまで転がっていたのだろう。
回転が緩くなり、回転していた身体は遠心力で起き上がる状態になった。
「ここ⋯⋯どこなの⋯⋯かしら?」
頭にヒヨコが何匹も舞っている中、立っていられないからとりあえず目の前の石碑に手を置く。
ブゥンと石碑が作動すると中から1枚の黒いカードが出て来たと同時に黒い服に包まれた女性が現れる。
「ふぁぁ、なんか物凄く久々に呼ばれた気がする」
黒い長いマフラーが特徴的な女の子は背伸びをする。
「あぁ、ここのか。もうクリアは無理だとおもったんだけど。で、迷宮のゴール者にはなんでも願いを叶えるんだけど⋯⋯取り込み中のようね」
端っこで弱小姫は、姫らしからぬものをオエェっと口からキラキラしたものを出していた。
「大丈夫? 落ち着いた?」
「は・はい⋯⋯なんとか⋯⋯ウプッ」
「で、私はどうなったんですか? ここは一体?」
「幸か不幸か分からないけど、私が昔に創り直したダンジョンを偶然転がってクリアーしたっぽいね。私自身もビックリしてる。こんな攻略法があったなんてね」
指を指すと、壁が出来たり、矢が大量に壁に突き刺さったりしていた。
「で、攻略の証として、この黒いカードが渡されるんだけど、これで私を呼んだって訳かな。一応クリアの特典として、なにかお願いしたい事ある? 大抵の事なら叶えてあげれるよ」
「えぇっと、ならわたしの世界を取り返してくれたりも出来ますか? 私が負けを認めてしまうと民が一部を除いて奴隷のような生活になってしまいます⋯⋯それだけはなんとしても避けたいのです」
「見た所若いけど⋯⋯、父と母は?」
「いません。家臣達は国を守る騎士に捕まり連行されました。国の証であるこのペンダントを私に渡してたお陰で最悪は免れていますが、攻められて逃げていた所です」
「要するに売られたってことね」
「違います! なにか理由があったに違いませんわ!」
「まぁ、そこらへんはどうでもいいよ。興味もないし、とりあえず国を取り返すのは承諾したから、このまま女の子の姿がいい? それとも男の子になって姫様の騎士になろうか?」
「⋯⋯⋯⋯ふぇ?」
少し悩む。
いや、この女性のままでいくと、間違いなく弱小を残して私に勝るものはないと判断する。
ってか、何歳なんだろ?
「⋯⋯男の子でお願いします⋯⋯」
「りょうか〜い」
片足を床にコンコンっと当てると、黒い影が下から彼女を覆い、男の姿となる。
「ふぉぉぉぉ!!」
(かっこいい!! これは自慢できるLVですわ!)
じゅるりとよだれをたらす。
「⋯⋯あのさ⋯いや、やっぱりいいや」
思ってる事程度なら、すぐに読み取れるけどなんか言うとめんどくさそうだな。
「さて、とりあえずこの遺跡も畳むか」
手で軽く操作すると、部屋がどんどん折り畳んでいき、最後には手のひらサイズの四角形の箱になる。
「あの⋯⋯ここどうなるんですの?」
「ん? それは支えが無くなったから崩れるんじゃないか?」
激しい音が鳴り響き、どこから崩れる音がする。
「ひぃぃ、ちょっとお待ちになって!! 最初にいっておきますわ!! 私はコケても死ねる自身があるほど弱小姫ですのよ。私の騎士になるならそこらも考慮してくださいませ!」
「はいはい⋯⋯わかりましたよ」
ガシッと姫のお腹に肩を当て担ぐ。
「なんですの?! この荷物を運んでいるような持ち方は! 一応、姫ですからお姫様抱っこというものを⋯⋯」
「ちょっと跳ぶから喋るな。あと口噛むなよ」
「とぶって⋯⋯⋯⋯ぴゃ」
姫が転がって来た所まで跳んでいるかのように走る。
「くそ!! まさかあの弱小姫が崖から落ちるみたいなドジを踏むとはおもわなかった。どうだ? 下にはいたのか?!」
通信機で確認するが、答えはNOである。
急に地響きがなり、大地が揺れると、姫が落ちた所に黒い服装の男が立っており、肩には弱小姫を担いでいた。
「貴様! 何者だ! その姫さえ置いていけば見逃してやる!」
「ん? なんだこんな奴らが相手なのか⋯⋯って、完全に気絶してやがる⋯⋯。にしても、大分寂しくなった世界になってるな。マナが眠っているように感じる」
パンっと鳴り響くと、足の近くに白い煙が上がる。
「姫を置いていけと言っておるのだ! 次はその頭を撃ち抜くぞ!」
「なるほど、マナが少なくなったのは、物質文明に入りすぎたからか」
男は笑う。
「何が可笑しい!!」
「いやぁ、悪い悪い。傑作すぎてな。今の一撃で地面が崩れたみたいだ。その防具でどこまで走れるのかな」
地面に亀裂が強く入っていく。
「まぁ、頑張って生き残ってくれ。じゃあな」
姫を担いだ男は、その場を瞬時に離れる。
「ま・まて!! くそ! 総員! 退避ぃぃぃ!!」
激しい地鳴りと地崩れが起こり、崖は3分の1以上埋まる事になった。
ーー弱小姫の城ーー
「まだ、姫は捕らえられないのか! やっとこの国が手に入る思ったが、国の権限を娘に譲渡しやがって⋯⋯まぁ、その分娘にはたんまりと遊ばしてもらおうか」
ーー城下町ーー
「思ってたよりひどいな」
姫といっているから、城持ちだと思ったが、城壁はボロボロで城というより大きな館だ。
中に入ると、民だろうか直ぐに駆け寄ってくる。
「兵士様、お願いします。姫を城には連れて行かないで下さい。必要な物はその首飾りだけでいいはずですから⋯⋯」
おどおどしながら、数人が寄ってくる。
「それだと姫は助かるが、あんたらは奴隷になると思うんだが?」
「私らの事は、気に病む必要は姫にはありません。自分らの裕福より私達、民を優先にして頂けた御身を少しでも返したいのです」
(まぁ、姫の平和を思う心は偽りは無かったしな⋯⋯これが、証拠か)
「⋯⋯安心しろ。俺は兵士でもない。コレに仕える騎士になったばかりだ。最初の任務はココを取り返せって事なんでな。直ぐ終わるから安心して待ってろ」
「お一人でですか? 無茶だ! 相手は何百人もいますのに、こちらには武器も戦える人もいません!」
「いや、戦力は俺1人で十分だ。メンドくさいからとりあえず結果だけを見ていろ」
そういうと、姫を担いだまま跳ぶ。
「な⋯なんなんだ? あの人⋯⋯人間1人を担いで飛ぶなんて⋯⋯」
口をポカンと開けて、跳んで行った方を、見続けた。
ーー城門前ーー
「姫様捕まえて来たんだけど? 領主に合わしてくれませんかね?」
入り口の2人は、担いでいる姫を確認する。
「確かに⋯⋯、少しお待ちください」
少しして直ぐに通される。
「ほう? 貴様が姫を捕まえてきたのか。褒めてやろう」
「それはそれは光栄ですが、そんな事より報酬はいかほどで?」
「くくく、やはり報酬か。ならついでだ、面白い余興も含めてしないか? こちらから出す報酬と貴様が求める報酬では差がありすぎるだろうからな」
「っというと?」
「なに⋯⋯ルールに基づき、今から姫と貴様でワシと国取りをしようじゃないか」
「ルール?」
「なんだ? そんな事も知らんのか? まぁよい。戦闘ルールを決めて互いの国と国をかけた勝負をするのだ」
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対人ルール。
いわゆる単体の決闘であり、好きな異性などの取り合いなど個人に関するものが多い。
集団ルール。
村規模などの争いの決闘になる。領地争いなどもあり、傭兵を雇う事もある為、50対50以上の争いも発展する事も多い。
大きいとこだと、自動撮影機により各国に流される事もある。
国取りルール。
完全に各国に流される戦場規模の争い。
1つの国に1つある国宝を賭けると同時に負ければ勝者に属さないといけなくなる。
国だけど、人口が低い国や勢力が低いと国ではない勢力からも勝負を求められる。無論勝てば勢力の増加になる為の措置である。
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「なるほど⋯誰か知らないけどしょうもないルール縛りで籠を作ったのか」
「何を言ってる? 最高のルールではないか。実力さえあれば好きに出来る。人数さえ揃えれば国さえも取れるんだ」
「了解。ならその勝負を受けようか」
「そうか。なら姫を起こして、開始の合図を出してもらおうか」
肩に担いでた姫を下ろす。
「おい、姫様。国取りの開始の合図ってどんなのなんだ?」
「ほぇ⋯⋯えぇっと、SHOWTIMEですわ」
ペンダントが強く輝くと、あちこちからカメラ型の機械が飛んでくる。
「がはは!! やっとここまでたどり着いたわ!! 初めまして各国の皆様。傭兵グループの我らがこの弱小国を乗っ取り血祭りに上げる所をお見せする」
「え? え? 何事ですの! なんで勝負が成立していますの!」
「だって、姫が受けたじゃん」
「嘘ですわ! 別に国同士でないなら断る事もできますのに⋯⋯」
「ただ、それだと面白くないだろ? ここで断っても次はもっと卑劣にくるかもよ?」
「いえ、領地内での存続は禁止されてるので、もし断った場合でもこの土地からは去るしかないのですわ」
「⋯⋯なるほどな⋯」
「ルールは? ルールは一体どうなっていますの?」
姫が何かを調べる。
「そ・そんな⋯⋯」
傭兵側:持ち得る全領地の所有権と民の完全奴隷。
弱小国シェラザート側:傭兵
ルール:相手側が死ぬか、完全に敗北を認めるまで。
「そんな事より逃げなくてもよろしいのですかな?」
ニヤニヤと相手の頭は笑う。
「まずはココから離れないと! ⋯⋯⋯⋯ぁ」
出口も傭兵にとっくに固められている。
「おやおや、始まる前から、そんな唆るような顔をしてもらうと堪りませんな!!」
《国取り戦間も無く開始します》
この間は多分賭け事に使われているんだろうと感じる。
「⋯⋯なんともつまんねぇ世界に堕ちてんな」
姫をお姫様抱っこをする。
「さて、しょうがないから遊んでやるよ。せいぜい後悔のないようかかってこい」
開始です。
「何が後悔のないようにだ!! それはこっちのセリフだボケがぁぁ!」
一瞬で何十人の兵士に串刺しにされる。
「ひぃ、私を殺すのに武器などつかわないで、デコピンでしてほしかったですわ!!」
銃などを使わないのは仲間内で当たるのを恐れている為だ。
「ば⋯⋯ばかや⋯⋯ろう。ワシじゃない」
串刺しにされていたのは、傭兵の頭領らしき人物であった。
「ん〜、玉座の割に硬いな。もう少し座り心地考えないと腰に響くんじゃないか」
いつのまにか入れ替わっていた男は玉座を確かめると肘掛けに肘を置き、足を組み、大きくふんぞりかえっている。
「私⋯⋯まだ生きていますの?」
「ん? あぁ全然生きてるよ。まぁ、まだこれからなんだろうけど」
顎でクイっと目の前を見せると、兵士が全員銃を持っている。
「はわわわわ⋯⋯わふぅ」
再び脳のブレーカーが落ちる。
「一方方向にしかいないのはドジったな! ココから銃を撃ち放題だぜ。死ねや!」
大量の銃弾が飛んでくるが、一切動じる事もなく、手を前にだす。
「風打ち【弾】」
大量の銃弾は一斉に、撃った方法にベクトルを変え向かっていき、傭兵達を貫いた。
頭を撃ったものは頭に、身体を撃ったものは身体に。
「ふぁぁ。拍子抜けだな」
かざした手を次は指をクイクイと動かすと、傭兵の1人が痛みに耐えながら人形のように起き上がる。
「なんだよ⋯⋯これ、俺どうなってんだよ」
まだ、生きている者の頭に照準を定め、撃っていく。
「やめてくれ。やめてくれ」
叫ぶが身体が勝手に動く。
動ける傭兵の1人が操られている奴の頭を撃つ。
が、身体だけは動き、撃った奴を仕留める。
「終わってるんなら早く連絡よこせよ。お前らだけで楽しむなんて⋯⋯」
最初から嬲り殺す予定だった為、後続の傭兵達が連絡が直ぐにこないことから、お楽しみ中だと思い入ってくる。
入った直後に、銃を頭に突きつけられる。
「お前、何してんのか分かって⋯⋯⋯⋯」
言葉が詰まる。
銃を突きつけられる相手の頭には銃弾の跡と血が流れているのだから。
「第2波か。たしかこの勝負、死ぬか完全降伏しかないらしいが、お前達はどうするんだ?」
異様な光景である。
ふんぞりかえった、男には返り血すら浴びてなく、兵士達は全滅している。
「誰が!! きさ⋯⋯⋯⋯」
その瞬間には頭を撃たれていた。
「はぁぁ〜所詮こんなもんよな。物質文明に頼り、銃に頼り兵器に頼るぐらいじゃあな」
館から出てくるのは、全滅した傭兵達であり、ゾンビのようにゾロゾロと第2波の部隊に向かって行く。
撃たれても前進をし、その虚ろな目ははっきりと元仲間の目を合わさり、殆どの傭兵が腰を抜かした。
相手の戦意喪失により、弱小国の勝利です。
なお必然と、この傭兵達の所有権も国に移ります。
ふんぞりかえったままでいると、何かを言ってくれとばかりに映像機が寄ってくる。
男は少し喉を触ると、抱っこしていた姫の顔を両手で挟み、口をパクパクさせる。
「初めまして、今のこの世界は間違っていますわ。武器など持たなくても、人と人が手を取り合っていればよかった世界を、私めとこの魔術師で変えていきますわ。ただし、あからさまな殺戮を求めている方はご覚悟を。この傭兵達みたいに容赦は致しません⋯⋯ふがっ」
「ん? いいところで起きたか」
「私の声がしますわ!」
「あぁ悪い。いま、それにお前のしたい事を伝えてたんだよ」
声を元に戻す。
「何を言ったんですの!」
直ぐに何かを調べると、あからさまな宣戦布告であり、口から魂がピュルっと抜けていった。
結局、血だらけになった館は取り壊し、新しい土地に立て直す事になった。
戦意喪失した傭兵達は本来は奴隷扱いになってもおかしくはなかったが、姫様はあくまで領民として扱う姿勢を見せ、傭兵達は改めて修繕に全力を尽くし、あの布告をみた武器を持たない賛同した人達も流れるように国に入り、見違えるほど街は生まれ変わったのである。
姫も相変わらず、民の為に動くがその弱小ぶりは足手まとい以外の何者でもなかったが、場の雰囲気を変え、他者を喜ばす為一生懸命やっている姿は皆に元気を与えていたのである。
そして、黒の魔術師はというと。
まだ、この国に滞在している。
「っていうか、お前の国は取り戻したよな?」
「なにを仰いますの!! 私はあの時に国ではなく世界と言ったのですわ。だから、この世界を平和にするまでは、貴方は私を守る義務があります。っていうかあんな布告した上に貴方がいなくなったら一瞬で消滅ですわ!!」
「それは運命ってことでいいんじゃね? 願い事の時に国を世界って言ってるほうがずりぃわ」
「なんとでも! それより貴方の名前聞いていませんでしたよね。今更ながら、シェラザード小国の姫を勤めていますシャルロッテと申します」
「今更、名前なんてどうでもよくないか?」
「それは駄目です。これからは切っても切れない関係になりますからね!」
「めんどうだな」
偽名も考えたが辞めておく。
まぁ、久々にこの世界を見るのも悪くない。
再びこの世界に魔力を取り戻してもいいしな。
「宵宮」
「え?」
「宵宮 凪だ」
「はい、ナギ様。これからよろしくお願いしますわ」
【テレッテー♪ シャルは凪の心を手に入れた】
ふんぞり返っている凪の隣で、長いマフラーをした黒い女性が現れていた。
「おい⋯なにしてるんだ⋯。っというか、2人同時に出現さしてるってことは⋯」
【ピンポーン♪ 前から密かに造ってたのよね。ミキとヒタリ以来着手できてなかったんだもん。やっとこれで自律型人形の性能試せるから凪はこの世界でしっかり遊んで来てねー】
それだけ言うと肩に乗っていた猫が膨らみ少女と共に消えた。
「⋯まじかよ⋯最悪だな⋯俺」
「??」
シャルロッテには、やりとりの意味は分からなかったが、凪にはかなり堪えた様子で玉座からずるりと落ちかけた。
物質文明に入ったこの世界、いま映像に流れていたナギがした事の解明を全力でもって行いはじめていた。
銃火器などや様々な兵器がある中、今更廃れていた魔法らしき力をあの威力で出せることに脅威を覚えたのである。
ーー何処かの山の頂上ーー
長いマフラーをなびかせ、黒い少女は地平線を見渡している。
「なるほどね。私の知っていた世界ではなくパラレルワールドみたいな並行世界か。ただこの誓書の力だけは統合されてるから呼ばれたのね。元々異世界が銃火器の知識を手に入れちゃったから魔法も廃れたってワケね」
まぁ暇つぶしにはいいかな。
少女は何かを思い、一瞬クスリと微笑み何処かへと消えていった。
洞窟内で王女が転がって最後まで行けたシーンはピタゴラスイッチのイメージです。
あの曲が流れながら、転がりつつ、迫りくる壁や生えてくる槍、飛んでくる矢を寸前に避けながら行くって感じですねw
アニメだとNGシーンもいっぱいあったのかもしれません。少なくともウチの頭の中には王女は何千回死んでいます(´・ω・`)