???≠異世界
ノリと勢いで書き始めた処女作になります。更新不定期です
◇王都西の森
まだ日も高く木漏れ日の差す森の中。
慣れない足場に苦戦をしながら、一つのパーティーが遁走していた。
「ッ……おい!本当にこの方角で合ってんのか!?さっき通らなかったか!!?」
「…目印はしっかりと辿れています。このまま、無事に逃げ切れれば出られるかと…」
「うるっさいこの脳筋!さっさとついてきて!?足遅いのよ!」
「ッ…あ゛ァ゛ッ!?覚えてろよお前!」
「………喧嘩をしている場合ではないというのに……はぁ」
剣士の男の怒声に冷静に答える神官。しかし盗賊が苛立ったように答える。
場違いに始まる喧嘩に神官は目眩がしてきた気さえした。
現在の隊列は盗賊を先頭に神官、殿を剣士が務めている。一見するとバランスが良いように思えるが、そもそもこのパーティーは三人ではないのだ。全て脳筋が悪い。
「おい!目印つけた木はこの道のヤツだけだろ!?他の奴らどうするんだ!」
「むこうは安全区域に近いし隠密性高いでしょ!なんとかなるのよッ。そもそも、こうなったの、あんたのせいよ!?」
ただでさえ視界の悪い森の中だというのに、『体が慣れて』いない。
「まだ『森』抜けないんですか……足が疲れてきました………ッ横からきてます…!!」
脳筋のせいで酷い目にあう。帰ったら1発ぶん殴ってやろう。と、余計な事に意識を割いていたせいで索敵が疎かになっていた。だが、『奇跡』でパーティーを守る神官は一定範囲内であれば『感知』ができる。
二重の索敵網を抜けるのは容易ではない。安定性はある。ただ脳筋の『運』が悪すぎるのだ。
「後ろのデカイのは…もういないな。撒いたか…?おい!こっちの『狼』代われ!俺が『ゴブ』のカバーやる!」
「はっ、ッ……そもそも、あんたが、足が遅いから、狼撒けてないんでしょ!?もう!」
「二人とも早くしてください。バフ、かけますよ?」
ひたすら走っていたおかげで『アイツ』は何処かに行ったようだ。二度と遭いたくない。
『アイツ』がいないならどうとでもなる。
「タイミング合わせて!しくじってもサポート行けないからね!」
「ハッ、誰に言ってんだ。俺が助ける側だろ?」
「勤勉なウサギ様と鈍臭い亀じゃ頼り甲斐が違うじゃない?」
「ウサギは色々とないからな笑笑」
「あァッ!?先に殺してやろうか!」
自分から煽りかけておいて先にキレる盗賊。結局『戦闘』を専門にしているやつらは気が短いのだ。
「準備、終わりました。合図はこちらで出しますから、さっさとしてくださいね?」
「「了解」」
◇◇◇◇◇サービス終了15分前◇◇◇◇◇
「おつかれさまでしたー。」っと
随分と長く感じたβテストもついに終わる。いまだにタイトルが決まってないあたりはどうかと思うが…大事なの中身だし?
それに、今はこれまで一緒に遊んできたパーティーメンバーと楽しくチャットをしている。正式サービスが始まってもいないゲームで過去を振り返っているのだ。まだ歳をとった覚えはないけど最近は年寄りみたいなことをよくしている…気のせいだと思いたい。
このゲームはいわゆるmmoRPGってやつだろう。レイド戦なんかは特にキツイ。hp特化の回復特化は絶対に実装されないでほしいところだ。あんなの泥沼である。
「あー、βテスト終わったら俺の『神喰いソーセージ』ちゃんは初期レベルに戻るんだよな…つらみぃ…」
『神喰いソーセージ』ってのは俺のステキなネーミングセンスで生み出された素敵な女の子アバターのことだ。完全にネタである。
「でもまぁ他の人に比べたら名前がアレなだけだし…ん?『お前のは装備もひどい』…?いやいや、『†虎†馬次郎』さんに言われたくない…」
馬次郎さんは馬のマスクに種族が獣人(ケンタウロスが良かったが、なかったので妥協したそうだ)で武器が人参(弓)で生肉(矢筒)という特徴的すぎる有名プレイヤーである。
むしろ、「よくそんなネタ装備があったな」と初めて見た時は感心したくらいだ。見事なマッチである。
俺?俺の装備は…伏せておくわ…。他にも『†堕天使†』とか『イチ☆コロ』など独特なセンスの人がたくさんいた。まともな人もいるのだが際立つところが尖りすぎである。
「あと1分で終わりか…」
楽しいことをしていると時間はすぐに過ぎるものである。2時間も前からチャットをし始めていたというのに、もう終わりが見えているのは寂しいところだ。
「ま、みんなどうせ正式サービスやるだろうし…その時までのお別れ、だな」
2時間に比べれば、1分など一瞬である。
最後の10秒はみんなで一緒に秒読みをしながら終わった。そこまでは、覚えている。
一話目読了ありがとうございます。かきだめもプロットもほとんどないようなものなので更新が長く開いてしまうかもしれません