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80 バイバイ

 鬼王領――今では旧鬼王領かノスト領と呼ばないといけないね――のその後のことを、僕はノストに全て擦り付けることに成功した。


 ちなみに鬼王のヘタレ息子さんは、進化したノストの力に圧倒され、その前で跪いて完全に臣下の態度をとってたよ。

 鬼王の部下だった連中も、全てノストの放つ魔力の波動にやられて全面降伏。

「我々は本来であれば死んでいたものを、シリウス陛下によって再び生き返った身です。そのシリウス陛下がお選びになったノスト様に、絶対の服従をお誓い申し上げます」

 なんて言って、ノストに跪いてたね。


 生き返らせる前には「鬼王様万歳」とかどうとか言ってたのに、そんなこと完全に忘れちゃってたよ。



(皆ボケる歳でもないのに、記憶力悪すぎない?)

≪……鳥頭のご主人様(マイロード)がそれを言いますか≫

(あ、それもそうだね~)

 スピカに指摘されて、なるほどなるほどと納得したよ。


 人間でも魔族でも、不都合なことなんて、3歩も歩かないうちに忘れちゃうなんて至極当然で、当たり前のことだよね~。

 悪いことなんて忘れて、調子よく生きてくのが人生ってもんだ~。



 その後スピカさんが残念な子供を見る様な顔してため息ついてる気がしたけど、スピカに体はないから、そんなことできるはずないよね~。



 で、鬼王城での一件すべてが終わると、ディアブロは姿を消し(どうせまた僕の影の中でストーカー再開してるだけだけど)、城の上空にいた悪魔(デーモン)共も退散。

 城を包囲していたノストフィーネ山脈から連れてきた魔物たちは、その後鬼王城へ入場し、ノストの忠実な部下としてこれからも働いていくことだろう。

 まあ、働いていくも何も、あいつらの思考回路は悪魔(デーモン)どもによって完全に支配されてしまったので、ノストの命令には絶対服上することしか出ない人形(マリオネット)状態なんだけどね。


 とはいえ、これで鬼王領改め、ノスト領の全ての問題が解決だ。

 人間の大陸にあるクライネル王国へ侵攻しないよう、僕からノストに言っておいたので、クライネル王国の平和もこれで見事保証されたわけだ。

 ただし逆にクライネル王国がノスト領に無謀にも侵攻してきた際、領内に侵入した人間を血祭りにあげてもいいとは言っておいたけど。


 基本的に専守防衛。だからと言って、「武器を持たず一方的に殴られてやれ」などとは、僕はノストに言ってないからね~。

「殴ってきたら、殴り返せ」と、ちゃんと言っておいたさ。


 ただ、そのことを言った時、傍にいたラインハルト君が顔を引きずらせてたね。



「大丈夫だよ。あくまでも攻めてきたときの話だから。このことはラインハルト君からちゃんと国王に言っておいてよ」

 僕はラインハルト君の肩に手を置いて、真剣に話しておいたよ。

 ラインハルト君は、コクコクと頭を縦に振って頷いていてくれたね。


 だけど、なんでさっきからラインハルト君は一言も話さないんだろう。

 今も僕の前で狼狽えまくっていて、友達である僕を怖がっているようにしか見えないんだけど?


≪それはご主人様(マイロード)の配下に、伝説の大悪魔であるディアブロがいることや、悪魔(デーモン)の大軍団の存在。それに鬼王の部下たちを蘇生させたり、ノストを進化させたりなどなど……少しはご自分の異常性を自覚されたらどうですか?≫

(……ハテ、僕はただの幼気なプリティーボーイなので、スピカが何を言ってるのか理解できないけど?)


 その後スピカが盛大にため息ついたけど、

(ため息を付くたびに幸せって逃げて行っちゃうんだよ~)

 と、言ってあげた。




 そして僕は、レオンとラインハルト君の2人を伴って、カタリナちゃんたちが気絶している(気絶させた)場所まで、転移魔法(ジャンプ)で戻ってきたよ。

 その場所では、いまだにカタリナちゃんたちは地面に突っ伏して気絶中。

 まだ気絶して半日くらいしか経ってないから、仕方がないよね~。


 でも、この場所には既に悪魔(デーモン)によって、鬼王の頭が持ってこられてるね。地面の上にバカでかい鬼の頭があって、その顔が恨めしそうに僕たちの方を見ている。


 うわー、こうやって改めて見ると、おっかない顔してるね~。



「ラインハルト君、これで僕たちは国王からの約束は果たしたよ。召喚した"勇者様"が、ちゃんと魔王を倒してくれたわけだからね」

 そう言い、僕はレオンの方を見る。


 レオンは特に反応がないけれど、

「……ありがとうございました、レオン様」

 と、ラインハルト君はおっかなびっくりしながらも、レオンにお礼を言った。


「気にするな。俺はこいつ(シリウス)の部下だからな。単に我がままに付き合っただけだ」

「そうそう、レオンの事なんて気にしなくていいから。それより僕の方を褒めて欲しいな~」


 チラッチラッ。

 露骨にラインハルト君に褒めて褒めてアピールをする僕。

 12歳の女の子がやったら効果絶大だろうけど、僕はプリティーでも"男の()"じゃないから、さすがにそこまでの効果はないね。


「う、うん。スバル……いえ、陛下ありがとう……」

「ノウノウ、僕とラインハルト君は友達だからそんな堅苦しい呼び方をしなくていいよ。僕のことはシリウス……いや、スバルと呼んでくれればいいからさ」

「じゃあスバル、おかげで助かった」

「エヘヘ~」


 ラインハルト君に、とうとう僕は認められたぞ!!!

 今まで散々"いらない子"、"痛い子"、"頭の足りていない子"、"気の毒な子"、"手遅れ"、"守銭奴"扱いされてたけど、その僕がとうとうラインハルト君に認められたのだ!


 うっ、ううっ。

 ここまで本当に長かった。

「ラ、ラインバルトグンガ、ボグノゴドヲ~」

 感極まりすぎで、涙がボロボロと出てきてしまった。自分でももう何を言ってるのか分からないよー。


「お、落ち着いて冷静に……はあっ、スバルって本当に、魔皇帝なんだよな?」

 あれっ?なんだかかラインハルト君が僕を見る目に、再び気の毒な子扱いをしているような気配が……



 とりあえず僕は、ティッシュで鼻をチーンして、それから答える。


「そうだよ~、僕は魔皇帝シリウス・アークトゥルスなのだ~」

 僕が気楽に答えるものだから、ラインハルト君が物すっごい複雑な顔をしていたね。



 フフフ~。

 ドヤッ、僕の存在感って半端ないやろ!


≪ハアッ≫

(はいっ!?どうしてスピカまで複雑な顔して、ため息つくの?)


 レオンも表面上は変化がないけど、こいつはただ口数が少なくて表情が分かりにくいだけ。なんか瞳の奥に、思いっきり僕に呆れてる色が宿ってないか?



 でも、そんなわけがあるはずないよね~。




 それよりもラインハルト君には、頼んでおかないといけないことがある。


「ラインハルト君、鬼王も始末したことだし、僕たちはこの国を出ていくことにするよ。だけど鬼王を倒したのが、僕たちだったことは君から国王にちゃんと伝えておいてくれ」

「分かった」

「まあ、その倒した相手が実は魔皇帝とその一派でした。なんて言っても信じてもらえないだろうから、その辺は適当な感じで……そう、魔王を倒したら僕たちは元の世界に戻っていったとかなんとかって、適当な話を作ってくれればいいから」

「……ああ」

「それとカタリナちゃんが意識を取り戻したら、これを渡しておいて」

 僕はポーチの中から、ずっしりと重たい革袋を取り出して、ラインハルト君に手渡す。


「これは、一体?」

 あまり重いものだから、ラインハルト君が手から取り落としてしまう。すると袋に入っていた、丸くて黄金色の塊がジャラジャラと音をたてて地面に零れ落ちた。



「金貨5000枚(5億円)」

「き、金貨!?」


 そうですよ、僕がこの国にきてから溜めていた金貨の"一部"ですよ。

 いやー、この国でやった薬作りと言う名の金貨集めは、とっても楽しいお仕事だったね~。

 エヘヘ~。



「ほらさ、カタリナちゃんって僕たちが鬼王を倒したのに、自分が倒したんだって言って功績を横取りしちゃいそうでしょ。おまけに今じゃ軍で一番偉い大将軍だから、ラインハルト君の言葉より信用されちゃうだろうし。

 だから、このお金を渡して、功績を横取りされないようにして欲しいんだ」

 うんうん、僕はカタリナちゃんの魂の友(ソウル・フレンド)。カタリナちゃんがやりそうなことは、この僕には手に取るように分かるのだよ。


 ぶっちゃけ鬼王を倒したからって、それで手に入るのは名声だけだろう。けど、名声と共に魔王を倒した英雄になって、いろいろな人から贈り物をされるかもしれない。

 そう言う物をカタリナちゃんなら欲しがるだろうから、先にこっちが贈り物をしておいてあげないとね~。


 ……さすがに僕からの金貨(プレゼント)を手に入れて、あまつさえ自分が鬼王を倒したんだって言い張ることはないよね~?

 ないといいな~?

 どうなるかな~?

 う、うーん……


 まあ、疑い出せばきりがないので、それ以上のことは考えないでおこう。


「分かった。カタリナ様に確実に渡しておく」

 ラインハルト君も、"王都の山賊"と呼ばれていたカタリナちゃんのことは理解しているようで、僕の意見に素直に頷いてくれた。


「あと、国王には"約束は必ず守ってもらう"と言っておいてね」

「約束?」

「そうだよ、フフ」

 そう、国王は僕たちととっても大事な約束をしたんだ。僕たちは魔王を倒すという約束を守ったんだから、国王の方もそれを守ってもらわないといけないよね~。



「それじゃあ名残惜しいけど、僕たちはこれで行くね。バイバイ、ラインハルト君」

「それじゃあな」

 僕はラインハルト君に手を振り、レオンは短い言葉だけ。


「ああ、もう会うことはないかもしれないけど……」

 ラインハルト君もそう言う。



 僕は転移魔法(ジャンプ)を用いて、レオンと共にその場から姿を消した。


お知らせ



 次回原稿のストックが尽きてしまったので、次の更新がいつになるか不明です。

 というか、いつものように未完(エター)にならないといいな~

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