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78 新興宗教お断り!

「僕はレオンが勝つって信じていたよ。ただ君にもっと強くなってもらうために、鬼王を応援していただけなのだー」

 ちょっと棒読みになったけど、そういうことにしておけばいいよね。


 僕を見るレオンの目は……あ、これは完全に僕の言葉を信じてないね。疑うとかってレベルじゃなくて、確信してる。

 僕が本気で鬼王のことを応援してたんだって。



「お疲れさま。疲れただろうから、これでもグッと飲んでちょうだいな」

 早速、話題を逸らすことに決定。


 ベルトに収納している"即時完全回復(フル)ポーション"をレオンに渡した。


 レオンはしばし無言だったけど、それでも僕が差し出したポーションを受け取ってそれを飲んだ。


 さすがは世界樹の葉を原料に使っている、神級(ゴッツ)レベルのポーション。飲んだだけでレオンの体にできていた傷が塞がり、"暗黒闘気(ダーク・オーラ)"でできた呪いも即座に消え去る。

 このポーションなら、"魔王覇気(ダークネス・キング)"による呪いだって消し去れるから、当然の効果なんだけどね。



 戦いを終えたレオンの姿は、金剛魔族の黒鉄の肌から、再び人間の肌の色に戻る。


「……」

 ただそんなレオンに、ラインハルト君はどう接すればいいか分からず、無言でいた。

 レオンの方も、何も言おうとしない。



 そこで僕は2人の仲を取り持つために……なんてことはしないよ。




「それじゃあラインハルト君、君には魔王を名乗っていた鬼王の頭をプレゼントしよう」

 僕は地面に転がった鬼王の頭を持ち上げて、それをラインハルト君に渡してあげる。


「ちょっ、ちょっと待った!」

「ほへっ?」

 どうしたんだろうね~。


「あ、そうか。こんなにバカでかいと、ラインハルト君1人じゃ持てないよね」


 僕が持っている鬼王の頭だけど、1メートルぐらいのデカさがある。これだけで成人男性1人分以上の重さがあるね。僕は身体強化魔法(バフ)を使えるから、これぐらいなら持ち上げれるけど、それが使えないラインハルト君だと無理だよね~。

 いやー、これは失敗失敗。


「しょうがない。じゃあこれはカタリナちゃんたちの所に置いておこうか」

 僕は近くにいた悪魔(デーモン)を1人呼び寄せ、これを気絶しているカタリナちゃんたちがいる場所へ運ばせることにする。


 命令を受けた(悪魔)デーモンは、鬼王の顔と共に影の中へ沈んでいく。


 彼らは影移動(シャドウ・ムーブ)と言う移動方法を使える。僕の使っている転移魔法(ジャンプ)みたいに、離れた空間へ瞬間移動するほど便利じゃないけど、長距離をかなり短時間で移動することが出来る。悪魔族(デーモン)がよく用いる移動方法のひとつだ。

 それほどの時間をかけず、鬼王の頭は、カタリナちゃんたちの元へと送り届けられるだろう。


 ただ鬼王の頭が影の中へ消えていく中、この場にいる鬼王の残党どもが、自らの王の頭が消えていく光景を涙ながらに見ていた。


「鬼王様!」

「我が主よ!」

「父上!」

 皆悲壮な声を上げ、嗚咽すら漏らしている。

 おまけに"父上"と呼ぶ声がしたから、この場には鬼王の息子までいたということだね。


 そんな悲壮な声が轟く中、

「王が死しては、もはや我らが取るべき道はただ一つ!王殺しよ、死ね!」

 歳を取っていた鬼王の側近の1人が叫ぶ。


「うわああああっ!」

「鬼王様万歳!」

「我が主の敵!」

 様々な声が上がり、鬼王の部下たちが一斉に僕たちへ向かって突っ込んできた。



 彼らも僕たちに勝てない事は承知しているだろう。だが、それでも一太刀浴びせようと、決死の覚悟をしていた。


 でも、本当に無駄なんだよね。


 ディアブロが、指をくいっと引く動作を見せる。

 次の瞬間、引き連れてきた悪魔(デーモン)どもが黒い影と化して蠢く。瞬きの間すらない間に、僕たちに向かってくる鬼王の部下の背後へ回り込む。悪魔(デーモン)たちの手の爪がサーベルのように長く伸び、それが鬼王の部下の頭と胴体をスッパリと切り離した。


 20を超える頭が空中を飛び、頭を失った胴体から、どす黒い血が噴水のように飛び散る。


「ああ、皆、なんてことを……」

 鬼王の部下たちは、何もできずに犬死した。

 そんな中で鬼王の息子だけは、この光景を呆然と見ていた。

 彼だけが、鬼王の部下たちと行動を共にできず、ただ成り行きを見ているだけだったのだ。



「ちょっと、これはひどくない?」

 しかし、息子さんよりも気になることが一つ。

 悪魔(デーモン)の1人が爪で切らないで、頭を握りつぶしたんだよね。魔族の頭がトマトのようにはじけ飛んで、その中にあった肉や脳漿、骨などがペースト状になって周りに吹き飛んだんだよ。

 それがよりにもよって僕の顔にまで飛んできたから、ちょっとひどくない?

 僕の不満な様子を見たディアブロが、ハンカチを差し出してきた。僕はそれを受け取って肉片を拭きとる。


「ひっ、うわああっ」

 あとラインハルト君なんて、べちょりと言う音を立てて、自分の顔に魔族のペース化した肉が張り付いたものだから、悲鳴上げちゃってるしさ。

 駄目じゃない。

 ラインハルト君は戦闘経験はあるけど、こういう殺し方には慣れてないんだからさー。



「血だけならともかく、肉片はないでしょう。汚い!」

「申し訳ございません」

 僕が不快を伝えるけど、鬼王の部下の頭を潰した悪魔(デーモン)には、悪びれた様子など微塵もない。


「クフフ、あの愚か者には教育しておきます、我が君(マイロード)

「ヒイッ。ディアブロ様、お許し……ウグガアアアアアッ」

 で、僕相手だとちっとも反省する素振りのない悪魔(デーモン)だったけど、なぜか突然頭を押さえて、苦悶の表情を浮かべて床に寝転んじゃったよ。そのまま床の上でゴロゴロ転がりまわって、口から泡を吹きしちゃった、

「ほらほら、こんなところでお仕置きしない。床の血が飛び跳ねて服が汚れるでしょ」


 ここの床は今血でドロドロ。というか、ビチャビチャ。こんなところで転がりまわられると、迷惑極まりないよ。

 と言うわけで、ディアブロが手で合図して、床の上を転げまわっている悪魔(デーモン)を、別の部下(デーモン)がこの場から連れ出した。


 ところで連れてかれる悪魔(デーモン)だけど、悪魔(デーモン)のくせしてまるで死人みたいに真っ青な顔になってたね~。

 やーい、ざまーみろ~。




「ああ、父上、皆よ。私を残して、どうしてこのようなことに……」

 その一方で、父親とその部下たちを殺されてしまった鬼王の息子が、茫然と呟いている。


 そんな鬼王の息子の前に僕は歩いていく。

 歩くたびに床を流れている血がピチャピチャと音を立てる。雨水ならそれほど問題じゃないけど、跳ね返る血のせいで僕のズボンも汚れちゃってるね~。まあ、さっき鬼王の部下の首が一斉に切られた時点で、すごい血しぶきが飛び散ったから、僕の全身は既に血塗れだけどね。

 ただロングコートも下に着ているシャツもズボンも全部黒一色なので、汚れが目立たないのが幸い。それに僕の装備一式は竜帝さんと黒竜王さんの皮でできてるから、飛び散る血を弾いてくれる防水効果も抜群。なので水洗いするだけで、汚れが全部落ちちゃう優れものだよ。

 まさに洗濯物の心強い味方。洗剤いらずでクリーニングも必要ないから、1人暮らしの人でも、手間がかからなくて超便利な服だよね。




 で、僕は息子さんの前までたどり着く。


「ど、どうかお許しを、魔皇帝陛下」

「許すも何も、僕は君の事なんてなんとも思ってないよ」

「はいっ?」

「殺す意味も必要性もないから、生かしておいてあげよう」

「ほ、本当ですか!」

「本当」

 すがるように僕を見てくる息子さん。鬼王は僕に威圧されていたけど、それでも最後は正々堂々と戦って死んだ。その部下たちも無駄と知りながら戦いを選んだ。

 なのに、この息子は小心者だね。

 まあ、全ての人間(まぞく)が戦いの中で行き、戦いに死んでいく……なんて生き方してたら、それはきっとひどい世界だろうね~。


 きっと世紀末の世界だろうね~。

 モヒカンした雑魚がたくさんいるような世界かな~?


『ここは修羅の国、誰かれ構わず目につく存在全てを切り伏せてしまうのじゃー!』なんて世界だったら、僕も勘弁してほしいな~。



「ただ生かしてあげる代わりに、君にはこれからのことを見届けてもらう必要がある」

「は、はい。どのようなことであれ、見届けるなど、たやすいことです」

「そう、それはよかった」

 命が助かると知って、僕にすり寄るようにして近づいてくる息子さん。


 ただ、このまま僕に向かってザクリッ。なんてことがないように、密かにレオンが僕の背後まできていた。

 そのまま無言で、息子の方を威圧している。

 それを見て鬼王の息子は、僕に近づくのを辞めてしまった。レオンの強さは先ほど見ていたから、自分では勝てないと分かっているのだろう。


 まあ、それにしてもレオンの奴も心配性だね~。

 この僕が、こんなのに寝首をかかれるなんてあるわけないじゃない。……あ、いや、昔結構いろんな方法で寝首かかれて、刺されたりしたことがあるから、やっぱり僕の近くにいてください。

 僕、"不老不死"だから心臓を背後から刺されても、首を落とされても、頭を粉砕されても死なないよ。でも、物凄く痛いから勘弁してください。

 だから、いざってときは僕を守ってくれないと嫌だよ~。




 で、そんなことを内心で思っていても、僕は表情にそんなそぶりは全く見せない。

 だって僕って魔皇帝陛下だから、オドオドしないで偉そうにふんぞり返ってないとね~。



「それでは皆。殺した鬼王の部下どもの傷を回復してや……れ……ないじゃないか!」

 首を切り落とした鬼王の部下たちの死体。その首と胴体を回復魔法で元に戻してやれ。そう命令したかったのだけど、僕はトンデモなことに気付いてしまった。


「クフフ、我々悪魔族(デーモン)は回復魔法が使えませんからねえ」

「……お前ら、こういう時に役に立たないな」

「申し訳ございません」

 そう言いながらも、ちっとも申し訳なさそうでないディアブロ。


 悪魔族(デーモン)は個々人が非常に強力な存在なのだが、破壊や精神操作といった方面に長けている反面、回復系の魔法は生まれながらにして使えない種族的な欠点がある。

 そもそも悪魔族(デーモン)は精神生命体で、本来は肉体を持っていないため、回復魔法が必要ないという側面もある。

 彼らが現在取っている肉体は、地上で活動するために一時的にとっているだけの仮初のものにすぎず、必要がなくなれば肉体を捨てて、本体である精神生命体の部分だけで悪魔界(デモン・ワールド)へ帰ってしまえばいいのだ。




 だけど、僕がこれからしようとしていることのためには、どうしても鬼王の部下たちの肉体を、傷のない元の状態に戻してやる必要がある。

 とっくに頭と胴体が離れていて、それを回復魔法でくっつけたからといって、生き返るわけではない。魔族と言えども、そこまでの生命力を持っている存在はごく一部で、鬼王の部下たちには、それだけの生命力は存在しない。



「仕方がない。お前ら頭と胴体を手で引っ付けて持ってろ」

 僕が命令すると、ディアブロが頷く。

 その姿を見て、悪魔(デーモン)どもは、先ほど殺害した鬼王の部下たちの、頭と胴体を手で引っ付けた。

 ただ、無理やり手で引っ付けているだけだから、傷はそのまま。手を放したら、頭と胴体は、再びその辺に別々に転がって落ちてしまうだろう。


 そんな鬼王の部下たちの死体の前にいき、僕は回復魔法をかけてやる。

 表面上の傷だけでなく、内部にある気道や血管や神経といった細かい部分まで、回復魔法で修復していく。

 毛細血管や細かい神経。あと細胞レベルでの破壊を修復する必要があって、見ているだけだと非常に地味だけど、物凄く神経と集中力が要求される魔法になる。

 魔力の消費量はそこまでなくても、精神的にかなり苦労させられる作業だ。


 それを僕は1人当たり1分とかけずに完了させ、20分ほどの時間をかけて、鬼王の部下たちの頭と胴体を結び付けて行ってやった。

 あと、ついでに失った血液もある程度再生させているけど、結構疲れるんだよね~。


 まあ、途中で飴玉を何度も舐めながらしたので、僕的にはそこまで疲労を感じずに済んだけど。

 だって甘い物は僕の命の源泉。甘い物ある限り、僕の活力は無限に湧き出てくるのだから~。


 で、そうやって鬼王の部下たちの体を元に戻していったけど、最後に1人だけ難儀する死体が残っていた。

 それは馬鹿な悪魔(デーモン)が、頭を丸ごと砕いちゃった死体だね。




「うーん、これはさすがに回復魔法じゃどうにもならないから、"時間回帰(リターン)"させようか」


 時間属性魔法の中にある時間回帰(リターン)。これは特定の空間や物に影響を及ぼして、そのものの時間を過去に巻き戻すことができる魔法だ。


 例えばお皿を床に落として割っちゃったけど、時間回帰(リターン)を使えば、お皿が割れる前の時間に戻して、お皿が割れていなかった状態に戻すことが出来る。


 もっともこの魔法を使っても、過去へタイムスリップとかはできないので要注意。あと、壊れた物を元に戻すことはできても、失われた生命を復活させることはできない。


 僕は時間回帰(リターン)を使い、頭がペースト状に粉砕されてしまった鬼王の部下の体を、元の状態に戻るまで時間を戻してやった。


 その作業をしている間、この場にいる息子さんやラインハルト君、悪魔(デーモン)どもは、まるで奇跡を目の当たりにするかのような目で僕のことを見ていたね。

 あのディアブロですら、狂信的な光を目に宿しているよ。それは僕と最初に出会った時、いきなり「我が神よ(マイゴット)!」って、叫んできたときの目と全く同じだ。


 時間回帰(リターン)ぐらいで、何もそんな目をする必要ないでしょう。

 大体魔力消費が大きいけど、足りていればこんなこと誰にでもできることだろうに。


≪……無理です≫

 スピカはそう言うけれど、僕はできてるんだけどな~?




 それからほどなくして、頭を粉砕されていた鬼王の部下も、元の姿に戻ったよ。


 でも、さすがにち僕も魔力を使いすぎで、ちょっとしんどいね。

 と言っても、僕は前世でプレーしていたゲームでは、成金課金によって、課金でしか手に入らないチート級の回復アイテムを、五万と手にしていた男だよ。

 そして今回、ここに来る前に"即時魔力完全回復(フルマナ)ポーション"だって作っておいた。


 てなわけで、ベルトに収納しているポーションの瓶を1本取りだして、"即時魔力完全回復(フルマナ)ポーション"を飲む。

 このポーション、魔力量の少ない者が飲むと即死する副作用があるけど、僕くらいの魔力量を持ってたら、その副作用は全然心配いらないね。


 てことで、僕の消費した魔力は一瞬で元通り。

 あとこのポーションを飲むときに、なぜか死者の悲鳴や雄たけびが聞こえてくるって言う奴がいるけど、僕はそんな声一度も聞いたことがないね。

 でも原材料のことを考えれば、そう言う声が聞こえても全然不思議じゃないよね~。




 そうして一瞬で魔力を回復させた僕。


 続いて僕は腰に吊るしている短杖アキュラ(ヴォンド・アキュラ)を取り出した。


「皆、見ているのです。これから奇跡が始まります」

 ディアブロがゴクリと喉を鳴らし、厳かな声で告げる。

 まるで神を前にした聖職者の如き敬虔な姿。……まあ、敬虔も何も、こいつは悪魔(デーモン)。それもただの悪魔(デーモン)でなく、数多存在する悪魔(デーモン)どもの頂点に君臨する、大魔王クラスの悪魔(デーモン)だけどね。



「何大げさのこと言ってるの?そんな大層なものじゃないって」

 ディアブロは大げさすぎるんだよ。でも、なんでか悪魔(デーモン)どもも、僕の方を食い入るような視線でマジマジと見つめてくるし。

 もう、そんなに注目したって、何もいいことなんてないのにね~。


 そんな中で、僕は短杖アキュラ(ヴォンド・アキュラ) の先についている黒く見える石――霊魂吸収液ゾルディアック――に、張り巡らせしている次元結界(ディメンション・シールド)を解除する。


 宝石を思わせる霊魂吸収液ゾルディアックが黒い液体となるが、それが液体として流れ出すより早く、僕は"念動"の魔法を用いて空中に浮遊させる。

 まずは鬼王の部下の1人を、霊魂吸収液ゾルディアックで包み込む。


 そして傍から見れば特に何かしているように見えないけど、僕は霊魂吸収液ゾルディアックの中にある魂を選別して、鬼王の部下の肉体に、体の持ち主だった魂を入れた。


「ゴフッ、ゴホッ、ゴホッ」

 その途端、咳き込んで鬼王の部下が息をし始める。


「い、生き返った!」

「き、奇跡だ」

「ああ、我らが神(ゴッド)よ!」


 なぜか周囲からいろんな声が飛んでくる。

 でも、ぶっちゃけそう言うおべっかはいいので、僕はさっさとここにいる死者全員を生き返らせていく"作業"を終わらせてしまいたい。


 この場で鬼王の部下たちが死んだけど、死んだ魂は僕の持ってる霊魂吸収液ゾルディアックに全部吸収されてるんだよね。



 で、周りがやけに興奮した声を上げまくるけど、僕はそれを無視。霊魂吸収液ゾルディアックで死んだ肉体を次々に包み込み、魂を肉体に入れていった。

 この作業は大した労力も魔力もいらないので、作業自体は流れ作業で簡単にこなしていくことが出来る。


 まあ、霊魂吸収液ゾルディアックの内部にはかなりの量の魂があるので、たまに肉体の持ち主の魂を探してやるのに時間がかかるけど、そういう時にはスピカが大活躍。


(よ、スピカさん。こういうちまちました作業がお得意!)

≪おだてても何も出ませんよ≫


 前世では"ウォウォーリを探せ"っていう。たくさんの人が入り乱れた絵の中から、"ウォウォーリー"っていうキャラを探す絵本があったけど、これをスピカにやらせたら、きっと直感だけで"ウォウォーリ"を見つけてくれるだろうね~。



 そうして僕は、ほどなくして死んだ鬼王の部下全員の蘇生を終わらせた。


「き、奇跡だ。まさに神の御業!」

「はいはい。そう言う宗教はお断りしているので、勧誘しないでくださいね」

 鬼王の息子に一連の作業工程を見せ続けたけど、なんかこいつ、僕を拝みだしたぞ。


 ちょっと気に食わないので、足蹴り。……いやね、鬼王の息子って言っても全長3メートルだから、僕が足蹴りしても足の膝のかなり下の方に当たる程度。だけど、とにかく思い切り力を込めて足蹴りだ!


 でも、お子様な僕が蹴ってもちっとも痛くないようで、息子は平気な表情でいる。



「神よ、どうか我が父の復活も……」

「あ、それはやらないから」

「……分かりました。我が父と言えど、神に逆らったが故に復活がならないのは当然の事ですな」


 ……なんかしょんぼりした様子になるけど、それでも素直に納得する息子さん。



「なんだかなー」って気がするけど、いちいち面倒な説得とかする必要がないので、これでいいということにしておくか。



「ワ、ワレワレ、ハ、イッタイ……」

 そうしている間に生き返った部下どもが、舌ったらずな言葉を話し始める。


「いきなり起き上がるなよ。まだ生き返ったばかりで、頭も体も満足に働かないから。しばらくは安静にするように。ま、お前らなら半日もせずに、大体元に戻るだろうけど」

「イキ、カエッタ?」

 部下どもが不思議な顔をしているけど、

「ああ、そうだ。お前たちは神の御業により蘇ったのだ」

 と、息子さんが力強い声で言った。


「……おーい、アホ息子よ。さっきから神々言ってるけど、どこにそんな危険生物がいるって言うんだ?」

「何をおっしゃられるのです、神とはまさにあなた様の事です」

 そう言い、息子は僕の方を見てきた。


 えーと、僕はとりあえず近くにいるディアブロの方を見る。

 だけどディアブロは狂信的な光を宿した目で、嬉しそうな顔をして僕の方を見てくるのみ。

 いけない。こういう危ない人と目を合わせちゃいけない。とっても危険だから、視線を逸らさないと。

 続いて、悪魔(デーモン)どもを眺めてみるけど、こいつらもディアブロと似たような目をしているので、僕は目を背けて見なかったことにした。


 ラインハルト君……も見たけれど、こっちも悪魔(デーモン)どもがしている目に似ている。ただし口をポカーンと開けていて、まるでアホの子みたいな顔をしてるけど。


(やーい、やーい、アホの子、ラインハルト君~)

 普段アホの子扱いされている僕としては、この世界にカメラかスマホがあったら、ぜひとも撮っておかないといけない間抜け顔だね。

 しかし、どっちもないのが残念だ。


 でも、息子さんが言う神って誰なんだ?

「えーと、レオン?」

「お前のことだ、シリウス」


 なにを言う、レオン?

 そんな馬鹿なことがあっていいはずがないだろう。


 それでも僕は仕方なく自分の顔を自分で指さしながら、息子さんの方を見た。


「おお、神よ」

「黙れ、新興宗教などお断りだ!」


 僕は新興宗教など興味ないんだよ。

 だから手にする短杖アキュラ(ヴォンド・アキュラ)を、身長3メートルの息子の頭へ投げつけた。コンと乾いた音を立てて杖が命中。直後、魂が体からが抜けだして、鬼王の息子はその場で受け身もとらず、派手に床にぶっ倒れてしまった。


 後で魂は戻しておくけど、体の外に出ている魂には、しばらく臨死体験だか幽体離脱だかをしていてもらおう。


後書き


 "ウォウォーリを探せ"……"ウォーリーを探せ"。

 うっ、頭が……

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