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6 王宮通路にて

 王様から自称"伝説の武器"をもらい、旅の仲間を加えた僕たちは、その日はもう遅いということで、王城に一泊していくことになった。



 そんなわけで僕とレオン、それに魔王討伐の旅の仲間となった魔女アイゼルちゃんの3人は王様の前を辞した。


 そして寝室へと、王宮に仕えている執事さんが案内してくれる。

 そんな寝室へと向かう途中、王宮の通路でのこと。






「あ、そうだ、これはめておいてね」

 僕は足の太ももにつけているポーチをまさぐる。


「あれ、おかしいな。えーと、これでもないし、あれでもないし」

 レオンに渡しておきたい物があるけど、おかしいな?探してる物が出てこないな~。


 なんか紙の束とか、瓶とか……この丸いのは、だいぶ前に試作した丸薬かな?

 手で探るだけではわからないので、ちょっとポーチの口を広げて中を確認する。



 案内の執事さんは前を歩いているので気づかないようだけど、僕のすぐ傍にいる魔女のアイゼルは、僕がポーチをゴソゴソしている様子を胡乱げに見ている。と言っても彼女からはポーチの中身が見えていないから、僕が小さなポーチの中に手を突っ込んでどうして困っているのかなんてわからないだろう。


 だってこのポーチ、見た目は大した容量がないように見えるけど、中は物凄く広いんだよね。それこそ、僕の体どころか、この国の王宮そのものが入っちゃいそうなぐらいの広さ。


 "空間拡張魔法"なんてものがあって、それが使われていると小さなポーチでも見た目以上に物が入るようになるんだよね。このポーチには"空間拡張魔法"……と似たようなものが使用されていて、収納量がものすごいんだ。

 ムフフフ、ゲームっぽく言えば"アイテムストレージボックス"かな~。


 ――え、「なんでそんな便利なポーチを僕が持っているのか」だって?

 小さなことは気にするな。禿げるよ~。



 ただこのポーチはね、ゲームみたいにソート機能とか、頭で考えたものがすぐに出てくるなんて便利機能はないよ。ついでに内部の時間が停止していたりとか、生物は入れられないなんて代物でもないよ。

 何しろ見た目と違って、単純に収納容量が桁外れているだけのポーチだから。



「あーと、えーと」

「……そのポーチを普段ゴミ箱替わりにしていろいろ放り込んでるから、探してるものが出てこないんだろう」

「エヘヘヘ~」

 レオンの奴、どうして僕がこのポーチをゴミ箱に使ってることを知ってるんだ。

 そしてレオンの隣にいるアイゼルちゃんが、黙って僕を見る視線が痛い。


「で、でもでも、ちゃんと役に立つ道具だってしまってるんだよ。……しまった物のことを、年単位で忘れてるものも多いけど」

 後半部分はぼそりと小さな声で呟いたけど、レオンの奴、耳ざとくも僕の小声まで聞こえていたようだ。

 アイゼルちゃんには聞こえてなかったようだから、なんて聴力をしてやがるんだ。


「あったあった。はい、これ」

 そうしてるうちに目的のものをやっと見つけた。僕は鉄製の腕輪をポーチから取り出す。


「これはめておいてね」

「……」


 とりあえず、レオンは僕が差し出した腕輪を黙って受け取って、腕にはめ込んだ。

 それからおもむろに、手を握ったり開いたりを繰り返す。

 アイゼルちゃんはただのおもちゃの腕輪程度にしか見えていないようで、腕輪には関心がない様子。


「この国にいる間は外さないように。ま、いざっていうときは、外してもいいけど」

 超簡単な説明だけど、レオンは黙って頷いてくれた。


「ウムウム、察しがよくていいぞ。わが第一の臣下よ。

 フワーッハッハッ、ゲホンゲホン」

 高笑いしようとした僕は、盛大にむせてしまった。


 なんだか案内の執事さんとアイゼルちゃん、それに通路で王宮の警備している兵士たちが一斉に僕を胡乱げな目で見てきたけど、僕は咳が止まらなくてそれどころじゃない。


「テッ、テヘッ」

 それでも僕は、あざとく笑って恥ずかしさを全て誤魔化した。






「で、私にプレゼントはないのですか?」

 と、そこでアイゼルちゃんが僕に尋ねてきた。


「ああそうか。レオンにだけってのはダメだよね。じゃ、これどうぞ」

 僕はコートの内ポケットから丸い飴玉を取り出す。


「丸薬ですか?それも茶色?」

 僕が取り差し出した飴玉を見て、アイゼルちゃんの顔が明らかにガッカリしたものになる。


「それ、とっても体にいいんだよ。疲労回復、美容美肌効果抜群の飴玉」

「いただきます」

 美容と聞いた途端それまでのガッカリモードが一転、アイゼルちゃんは飴玉を口の中に入れた。


「うぐっ。なんですかこれ。ものすごく苦い」

 そして、すぐに渋面を作った。


「だから美容健康にもいい飴玉だよ。……ただ、味は保証しないけど~」

「な、なんて物を食べさせるんですか!」

「でもでも、ちゃんと飴玉みたいに甘くなるように、砂糖はたくさん入れて作ったから~」

「ムウウッ。マズい上に粘りつくような甘ったるさが、余計にまずさを増幅させている」

「えー、とりあえず甘ければおいしいよ~」

「おいしくなんてないです!この味覚音痴!」


 アイゼルちゃんに叱られちゃったけど、僕にニヘッと笑顔を浮かべておいた。

 とりあえずプリティースマイルを浮かべて、全てを誤魔化してしまうのだ~。


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