75 シリウス・アークトゥルスが会いに行く
僕的には、
「"シリウス・アークトゥルス"が会いに行く」
なんてメッセージを送って、鬼王に少人数で会いに行こうと思ってたんだよ。
だけど、現実って奴は僕の予想通りにいかないね。
現在鬼王城は、ドラゴン率いる部隊によって完全包囲状態。上空にいる悪魔どもは、地上の様子を眺めているだけで戦いに手を出すことはない。だけどあいつらはただそこにいるだけで、とてつもない圧力を与えているから、地上にいる鬼王とその部下どもは、気が気じゃないだろうね。
それに、50万ってどういうこと。
あんな雑魚魔王相手に、悪魔軍団を大量投入する必要性がどこにあるの?
鬼王城への道すがら、ディアブロに僕が尋ねると、
「すべては我が君の示威を示すためのもの。なんなら悪魔界からさらなる軍勢を呼び寄せましょうか?」
「いらないよ。というかお前はそのまま余勢をかって、鬼王どころか世界まで征服するつもりか?」
「我が君がそれをお望みならば」
「いらないので勘弁してください!」
あんかわ。この子はマジで世界征服しちゃいそうだから、僕がここで釘を刺しとかないと、世界が大変なことになる気がする。
だいたい世界征服なんてして、何かいいことあるの?
おいしいくて甘い物を、ただで食べられるかな?
もしかして、まだ知らいない甘味料に出会えるとか……
――ブンブンブン。
い、いけない、いけない。
一瞬、甘い物の為にディアブロに世界征服を命令しちゃおうかって気の迷いが起きたけど、さすがにそれはダメだよね。
まあ、そんなことはさておきまして、
「とりあえず鬼王への挨拶は、悪魔を70体ぐらい連れてでいいよな?」
「我が君は少数で赴かれるとの話でしたので、私の方で7000ほど用意しておきましたが?」
うん、ドン引き女のディアブロとは、どうも数字の桁が合わないな。
「じゃあ、間を取って700ってことにしよう」
「畏まりました」
その後は特に揉めることもなく、僕たちの背後から700体の悪魔どもが姿を現した。
「気を付けて行ってらっしゃいませ、シリウス様」
これから僕たちは鬼王の元へと向かう。その後をドラゴンさんが見送る。
「クフフ、弱小魔王相手に我が君に気を付けろとは、ドラゴン風情が生意気ですね」
「はいはい、こんなところで怒ってないでさっさと行くよ~」
ディアブロがヤヴァイオーラを立て始めたけど、こんなところで喧嘩をしなくてよろしい。
こいつって、昔初代竜帝さんと戦って引分けてるからか、竜族が嫌いみたいなんだよね。
僕はディアブロの手を掴んで、そのまま引っ張りながら歩かせることにした。
ところでこんな状況なんだから、僕の方から鬼王を城の外まで呼び出してもよかったよね。
けど、やってきたのはこっちからだから、ここは相手への礼儀を尊重して、僕たちの方から会いに行こうじゃないか。
まあ、これはあくまでも礼儀に関する話。
どうせどう話が転んでも、鬼王の今後の運命が変わることがないのは確定だけど。




