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74 貧弱、脆弱!弱すぎ!

 気絶した兵士たちをそのままにしておいて、魔物とかに食われたら困るので、とりあえず50体の悪魔(デーモン)どもには、警護をさせておいたよ。

 そして僕とレオン、ラインハルト君、ディアブロの4人は、転移魔法(ジャンプ)で目指していた魔族の王、魔王城の近くにまで一瞬で到着。

 というか、魔王を名乗る奴らは多いので、ここは魔族の一つ鬼族の王であるところから、"鬼王"さんと呼ぶべきだね。そして僕たちが到着したのは、魔王城改め、鬼王城。



 転移した先では彼方に、鬼王が住む漆黒の城の姿を見て取ることができる。

 空には黒く禍々しい雲が立ち込め、それが天からの光を遮っている。地上は暗黒に支配され、空気には陰鬱とした重さが加わり、思わず身震いしたくなるかのような威圧感。

 まるで命あるものを死の世界へ引きずり込むかのような気配が漂う。



「こ、ここは一体!?」

 周囲の景色が突然変わったことに驚くラインハルト君。

「ただの転移魔法(ジャンプ)だよ」

「転移魔法……そんな魔法聞いたこともない……」

「僕は"シリウス・アークトゥルス"ですから」

 とりあえず偉そうに自分の名前を名乗るだけで、全てを説明してしまう僕。





 ところで、僕はラインハルト君より、もっと気になることがあってね~。


「おい、なんだよこれは?」

「私の配下の一部でございます」

 答えてくれるのはディアブロ。


 さっきから鬼王城の周囲では物々しいオーラが漂っているけど、空に立ち込めている黒く分厚い雲は、実はディアブロ配下の悪魔(デーモン)軍団なのだ。

 たぶん数で50万ぐらいが雲の中に存在しているけど、なんでこんなにいるんだよ!

 ――桁がおかしいだろ、桁が!

 突っ込んでやりたくなるよ。


 そうそう、ちなみに空気が陰鬱だとか、命がどうたらと言うのも、鬼王なんてまるで関係なく、全部悪魔(デーモン)どもが放っている気配が原因だ。



「なあディアブロ。あの中にいる悪魔(デーモン)で、鬼王より強い奴って、何百体いるんだ?」

「はて、鬼王とか名乗っている魔王ですが、ド辺境を治めているだけあって、魔王と呼ぶのもおこがましい弱さです。……なので、少なくとも1000以上はいるかと」


 あ、うん。

 鬼王さんには悪いけど、これ完全に勝負にならんわ。



 で、ただでさえ悪魔(デーモン)どもの存在感が半端ないというのに、

「シリウス様、ご訪問を心よりお待ちしておりました」

 10メートル級のドラゴンが、僕の前で顎を地面に深々とこすりつけながら平伏してきた。


 ノストフィーネ山脈の頂点に立っていたドラゴンさんだね。

 ちなみにこのドラゴンさんには、悪魔(デーモン)どもに"精神操作"させた魔物を5万ほどつけていたけど、なんでかそいつらがこの場所にいる。

 ドラゴンに与えた魔物どもが、鬼王の住んでいる城の周囲を、ずらーと包囲してるんだよね。


「これ、どういうこと?」

「どうと申されましても、シリウス様より与えられた兵力をもって、鬼王配下の魔将軍の1人が率いる部隊を破りました。その後恭順するものは配下に加え、逆らう者は滅ぼし……以後は敵なき荒野を進軍し、現在では我が軍勢をもって、鬼王城を包囲しております」


 へー、はー、ふーん。


「おい、鬼王って弱すぎないか?」

「シリウス様のお力の前では、鬼王ごとき塵芥の存在でしょう」

 ドラゴンさんが威勢のいい言葉を言ってくれるね~。


 鬼王個人の実力もアレな気がするけど、率いている勢力まで貧弱過ぎない?


 ただ山にいただけの魔物の軍だよ。

 特別訓練されてるわけでも、強いというわけでもない。

 まあ、その辺の原っぱにいる最底辺の魔物ほど弱くはないけど、だからと言って上位の強さを持った魔物もいない、寄せ集めの軍団だ。

 そんなのに負けるって、どんだけ貧弱なの?脆弱なの?

 ……まあ、悪魔(デーモン)どもの精神操作のせいで、死を恐れることなく戦い続ける魔物軍団にはなってるけどさー。



 なんか僕は、それでいいのかと思って、困った時の年長の保護者ディアブロへ視線を向けた。


「クフフ、所詮辺境で魔王を(かた)るゴミクズです」

 ああ、ドラゴン以上にディアブロの意見はひどいね~。



 でも、ちょっと考えればすぐに分かる事だよね。

「仕方ないよね。あのド貧乏国家クライネル王国と互角に戦ってたぐらいの弱さだもんね」

「だな」

 僕が考え直したら、ドラゴンやディアブロの意見と見事に一致。ついでにレオンも同意してくれた。



「僕たちが直接手を出す必要が、全くない状態だね」

 本当、鬼王ってどんだけ弱いんだよ。もっと踏ん張れよ。居城を包囲されて、このまま全滅させられるか、それとも城下の盟を誓うしかない状況に陥ってるとか、本当に弱すぎない?


 ところで僕たちが話している間、ラインハルト君は一言も話さなかったね。

 もう何が何だか理解できないという状態で、完全に頭がフリーズしちゃってない?



「ラインハルト君、ちゃんと魔王を抜かしてる鬼王は倒しに行くから安心してね」

「……」

 ニッコリ語る僕だけど、ラインハルト君は既に白目剥きそうな感じになってるね~。一応意識はまだあるみたいだから、大丈夫だろうけど。


後書き



 おかしいな?

 当初の予定では、ノストフィーネ山脈の魔物が、鬼王の城を包囲するなんて予定はなかったはずなのに……どうしてこうなった?

(by作者)

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