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今日も異世界チートしてますが、それが何か?  作者: エディ
第4章 北の地での戦い
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50 一番いい解決方法

「ディアブロ、兄さんに伝言があるんだけど。ゴニョゴニョゴニョ……」

「フフフ、ついに決意されたのですか、シリウス様」


 ただいま僕は、見た目は完璧美人モデル、中身は誰からもドン引きされちゃう残念女、ディアブロにちょこっと頼みごとをしている最中。


 ディアブロは我が意を得たりと、妖艶な悪魔の笑みを浮かべる。うん、これだけでその辺にいるバカな男どもを100人、200人くらい簡単に手駒に取れそうだ。

 もっとも日本に大量生息しているロリ幼女趣味のオタクから見れば、美しくもなんともない女だろう。そして古代からのオタクという生物は、基本的に二次元の存在にしか恋をできない病を患っている。だからディアブロが三次元の存在という時点で、色々とアウトだろう。

 まあ、最近のリア充オタクなどと呼ばれている新種族に関しては、どうなのか知らないけど。



 そんな僕とディアブロだけど、僕たちを見てるレオンが呆れてるね。




 まあ、仕方ないよね。

 何しろ現在僕とディアブロ、ついでにレオンの目の前では、相も変わらず停止した時間に囚われているアイゼルちゃんとラインハルト君。そしておまけのサイクロプスが1体いるんだもの。


 とはいえ、時間が止まっているから、その間に僕たちが何をしていようが、この場に2人の知らない人物がいようが、2人には知ること自体できない。


 それをいいことに、僕は困った時の"保護者"であるディアブロを呼び出したわけだ。

 この女、「おーい、ディアブロー」と僕が一声掛けただけで、僕の影の中からすぐさま出てくるんだよね。

 さっすがー、僕のストーカー第2号。

 ドン引き属性が格上げされて、超ドン引き女と呼んでやりたいよ。


≪……≫

(いえいえ、僕は決してスピカさんのことを、ただのストーカー1号などと思っていませんよ。スピカさんはスーパー……)

≪黙れ、ガキ!≫

 おっと、これ以上スピカで遊ぶと、僕の身に危険を感じてしまう。

 これ以上いじると、こっちが火傷しちまいそうだな~。





 で、いつものように話が脱線しまくりだけど、とりあえず僕は目の前の現実をいったん棚上げして無視と決め込み、ディアブロに頼みごとをしているのだ。

 もっともその内容は、アイゼルちゃんたちが見てしまったレオンの正体をどうやって誤魔化すかとは、全く関係ないんだけどね。



「ところで我が君(マイロード)が望まれるのでしたら、あの人間たちの記憶を操作しておきましょうか?」

 ストーカー2号さんなだけあって、僕たちの事情もよく知ってるディアプロ。

「……お前の"記憶操作"って、いつも勢い余って"洗脳"までしてるよな」

「クフフ、私は我が君(マイロード)の偉大さを知らしめるために、少し記憶をいじっているだけなのですが」


 いやだなー。

 ディアブロの言う、僕の偉大さとやらを教えられちゃうとね、とっても怖いことになるんだよ。

 僕に対して「我が神(シリウス)よー」と叫びながら五体投地し始める、超危険な信者様が出来上がるの。



「あんな危険物はいらん!」

「そうですか……」


 しょんぼりとするディアブロ。

 残念そうな顔をするな!

 なんか美人のしょんぼりした顔を見せられると、それだけで罪悪感が沸いてしまうが辛い。

 12歳児とはいえ、僕だって男の子だから美人には弱いのかも……。

 でも、それにつられてディアブロの記憶操作(せんのう)をアイゼルちゃんとラインハルト君に施せば、確実に狂信者と化してしまう。


 僕はそんなことを断じて許すわけにはいかない。

 ラインハルト君は友達であり、そしてアイゼルちゃんは……うん、あの子に「我が神(シリウス)よー」なんて呼ばれだしたら、僕はどうすればいいの?

 あのアイゼルちゃんにそんなことを叫ばれたら、気味が悪くて体中にじんましんができちゃうよ。


「とにかく、却下だからな!」

「……はい、我が君(マイロード)

 つくづく残念そうな顔をして頭を下げるディアブロ。



 ディアブロが頭を下げている間、僕はレオンの方を向いて「なんだかなー」って顔をしたけど、レオンの方も僕と似たような顔をしていた。

 そりゃそうだよね。

 レオンのお気に入りのアイゼルちゃんが洗脳されたりしたら、それはもう悲劇としか言えない。



 ただ、再び顔を上げたディアブロは、

「では、我が君(マイロード)が2人の記憶を奪われるのですか?」

 と、言う。


 うーん、それはね、僕としてはやりたくないことだね。

「嫌だよ、友達とか付き合いのある人間の記憶いじるのは、僕的にやらないって決めてるから」

 僕はこの国に召喚された直後、第一王女の記憶を短期間消したけど、初対面の相手なら別に躊躇しない。ただね、それを友達とか付き合いのある人間にするのは嫌なのだ。

 都合の悪い記憶を意図的に操作して消して、自分に都合のいい記憶しか持たない人間を作るというのは、正直まともなことじゃない。


 なぜまともじゃないかと言うと、僕に都合をよくする場合、僕の生き様全てを否定することになるからだ!

 そして僕にとって都合が悪いっていうことはだよ、『普段の超アホで頭のねじがぶっ飛んでる、僕の行動全てを消さなきゃいけなくなる』ってことだよ。


 てことは、僕に関する記憶の99%以上じゃん!

 下手すると100%(ぜんぶ)


 僕って素の性格は結構悪いけど、あのアホな僕だってちゃんと素の自分なんだから。その記憶全部消すなんてことになったら、僕の知り合いが僕のことを覚えてる余地がなくなっちゃうじゃない!


 僕との友情と信頼関係の全てが、なくなっちゃうよ~。



 いや、この場合はレオンの魔族としての姿を見られた箇所だけ消してしまえばすすんだけど、とにかくそれは嫌だなーと言うのが、僕の思いなのだ。


 別に信念とか、確信をもって、しないと決めてるわけじゃない。

 単に一旦やりだすと、また次も、また次もってやりだして、ついついエスカレートしていっちゃうんだよね~。




「アイゼルちゃんたちのことはこっちでどうにかするから、ディアブロは兄さんへの伝言を頼むよ」

「畏まりました、我が君(マイロード)

 そう言い、ディアブロは影に溶けるようにして、この場から姿を消した。



 ただ、ディアブロは姿が完全に消える直前、こう言った。

「しかしレオン、種をまくのはいいですが、植えた種はどうするつもりです?」

 と。




「?」

「なんじゃそりゃ?」


 ディアブロの残した言葉の意味を理解できないレオンと僕。



 どういうことだと聞こうとしたときには、既にディアブロの体は完全にこの場から消えていた。



「なあレオン。今のディアブロの言い方だと、まるで誰かが妊娠したような言い方だけど?」

「ありえないだろう。俺は"魔族"。この国に来て関係を持った相手は、全員"人間"だぞ」

「だよね~」

 そこで僕とレオンは顔を互いに見つめる。


 別に深い意味なんて何もないぞ。

 マジでレオンの奴、誰かを妊娠させたんじゃないだろうな?

 いやいや、そんな馬鹿なことがあるはずない。

 異種族間で子供ができる確率って極端に低い上に、金剛魔族は子を宿すことが滅多に起きない種族だ。




 僕はそう考えて、話題を切り替えることにした。


「ところでレオン君や」

「なんだ?」

「君はどうして、女の子たちに刺されることなく、4人も同時にベッドに引きずり込むことができるのかね?」

「俺は普通にしているだけだが?」


 ノウッ!

 お前、一体なんなんだよ!

 王女3姉妹に、アイゼルちゃん。このドロドロの四角関係にしかなりようのない連中と、ただ普通にしていただけで、皆で一緒にベットへゴールインだと。

 訳が分からんよ。

 普通にしてたら死ぬよ?



「このままレオンが魔族だからって理由で、アイゼルちゃんたちと戦いになる展開が、一番いい気がしてきた~」



 てなわけで、僕はアイゼルちゃんたちの周囲に展開していた"時間停止魔法(コキュートス)"を問答無用で切った。


「ウラボー」

 その途端、時間の流れが復活。

 停止した時間に囚われていたサイクロプスが、雄たけびを上げてアイゼルちゃんに殴りかかった。


「シリ……スバル、お前って奴は!」

 レオンが僕に文句を言おうとしたけど、それより早く行動した。アイゼルちゃんに襲いかかろうとしていたサイクロプスの腕を、拳で殴る。

 レオンの一撃を受けたサイクロプスの腕が、あらぬ方向に曲がってしまった。


 とはいえ、腕輪にかかっている弱体化魔法(デバフ)の効果によって、レオンは先ほどサイクロプスを一撃で粉砕したほどの力を発揮できない。

 まあ、それでも規格外の腕力なのは相変わらずだけど。



「レオンさんが、魔族……」

 そんな中、アイゼルちゃんがぽつりとつぶやいた一言。


 アイゼルちゃん、そしてラインハルト君は、いまだ驚愕した目でレオンを見ていた。ただし、2人の目の前に立っているレオンは、既に金剛魔族としての黒鉄色の肌をした姿でない。

 腕輪の能力によって、その外見は完全に人間のものにしか見えなくなっている。


「えっ、あれっ?」

「今のは一体?」

 時間を停止させられていたアイゼルちゃんとラインハルト君にとって、レオンの姿が一瞬で金剛魔族の姿から、人間の姿へと変わったように見えただろう。


 あるいは、さっき見たレオンの魔族としての姿を、目の錯覚程度に感じてしまうかも?



 そんな2人の前で、レオンはサイクロプスと肉弾戦を繰り広げ、ほどなくしてサイクロプスが動かぬ屍と化した。



 その戦いの様子を、アイゼルちゃんとラインハルト君の2人は、半ば呆然と眺めていた。


 さっき見たレオンの姿は、一体何だったのか?

 そう思っているだろう。



 ただ、そこで2人の意識が途切れることになる。


 僕が"気絶魔法(ショック)"をこっそり使うことで、2人の意識を刈り取ったからだ。


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