表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
今日も異世界チートしてますが、それが何か?  作者: エディ
第4章 北の地での戦い
49/82

47 永遠の友達(ただし条件付き)

 悲しいお知らせがあるんだ。

 この国に僕たちが召喚されて1年がたった。


 昔は欲に塗れた金貨色の瞳をして、互いに"永遠の友情"を誓い合った僕と商人のバウマイスターおじさんだったけど、その友情が今や潰えようとしていた。


 ――あのおっさん、マジでがめついんだよね。

 肉ばかり挟みまくったダブル?それともトルプル?もっと多いよね。そんな肉ばかりのハンバーガーみたいな腹してるくせして、度し難い男だよ。

 まったく、あの腹を見ていると誰かを思い出しちゃうね!プンプン。



≪ジー≫

 スピカさんや、僕を見ないでちょうだい。

 この世界での僕は、前世の僕のような腹にはならないんだからね~。


 う、うん。

 前世で30過ぎた僕の腹と、バウマイスターの腹が似ているなんてことは、決してあるわけがないじゃないか!。



 で、なんで僕とバウマイスターおじさんの仲が、悪くなったかの説明を始めよう。







 そもそも事の発端は、道具屋のおばあさんが天寿を召されてお亡くなりになったこと。

 とても元気だったけど、もともと90歳の高齢者だったから、仕方のないことだよね。

 っていうか、この世界の人間って、基本的に50まで生きれれば物凄い長寿扱いされるんだよ。

 70歳まで生きた人なんていれば、もう天然記念物並の扱い。

 そんな世界でおばあさんは妖怪みたいな感じで、90まで生きてたわけよ。


 だから王都に住んでるご老人たちから見ても、道具屋のおばあさんは自分たちが子供頃から老婆の姿をしていたんだよね。そして自分たちが老人となった今でも、老婆のまま生き続けてるわけだ。


『あの人は永遠に老婆の姿のまま生き続けるのではないか?』なんて語り継がれていて、ある意味都市伝説的な存在になってたみたいだね。


 でも、残念なことについにお亡くなりに。

 死ぬ直前まで元気だったのに、亡くなるときはある日突然コロリ。朝になるとベットの上で息を引き取っていたそうだよ。



 僕もバウマイスターおじさんも、おばあさんの死を悼んで、せっかくだからとお金をかけて豪華なお葬式をしてあげたよ。

 そもそもバウマイスターおじさんは、おばあさんの孫娘さんと結婚したから、一族の1人として喪主を務める資格だってあったしね。




 で、道具屋のおばあさんがいなくなって、僕とバウマイスターおじさんはニッコリ……おっといけえね。悲しみを抱きつつ、高級料理屋の最上階で話し合ったんだ。


「おばあさんがいなくなったから、これからはバウマイスターおじさんにお薬を直接売るね~。仲介業者(おばあさん)がいなくなったんだから、もちろん今までより高く買い取ってくれるよね~」

「フフフ、ばあさんの取り分がなくなったので、これからは余計な仲介料なしですからな。ということで、このぐらいの額でいかがでしょう?」

「わーい、今までよりも高いね~。でもさー、もっと高く買ってくれないの~?僕も最近じゃ弟子をたくさん抱えてるから、なんだかんだでお金が飛ぶようになくなってくんだよ~」

「ううむ、仕方ないですな。では、これで……」

 渋い顔をし始めたバウマイスターおじさん。


 で、確かに提示された額は増えてるんだけど、微増って感じ。


「ええっ、物凄くけち臭くない?」

「しかしですな、最近スバル殿が卸す薬の質が落ちているのですが……」

「ありゃ、おじさん鋭いね。最近僕が売ってる薬って、弟子の作ったやつが大半占めてるんだ。もちろん僕もちゃんと薬作ってるけど、せっかくいる弟子だもの、馬車馬のように働かせて、たくさん薬を作らせないとね」

「それで、質が落ちたのですな」

「そりゃ確かに僕が作るより質が悪いけど、それでもその辺で売られてる薬よりいいものだよ~」

「しかし以前に比べて品質が落ちているのは確か。なので、やはりこれ以上の額で買い取るわけにはいきませんな」

「ええーっ、そんな!おばあさんは僕の薬なら言い値で買ってくれるほど、度量が広かったのにー」

「それは、あのばあさんだったからですぞ」


 そんな感じで、僕とバウマイスターさんは薬の値段で言い争いを始めてね……。

 一応2人の間で落としどころを見つけて、薬の値段は決まったんだけど、なんだか以前みたいに仲良くできなくなっちゃった。


 どうしてだろう?



 今までは僕とバウマイスターおじさんの間に、クッションとして道具屋のおばあさんが挟まっていたけど、そのクッションがなくなった途端にこれだよ。


 きっと僕もバウマイスターおじさんも、金貨色の瞳して金に憑りつかれてるから、どっちもがめついて利益を増やそうって野心が強すぎたんだろうね。

 だから欲と欲がぶつかり合って、昔誓い合った"永遠の友情"なんて、クソくらえって感じになっちゃった。




 そうしているうちに、王都の商人たちを牛耳っていた警備隊のカタリナちゃんが昇進して、中隊長から大隊長になったよ。

 大隊長になると、兵士を600人以上率いることが出来るんだって~。


「ワー、カタリナちゃん昇進おめでとう。これからも王都の商人どもを牛耳って、またただでおいしい物を一緒に食べに行こうね~」

「これも日頃からの上司への賄賂……オホホ、"功績"が評価されたおかげね。何しろ私って国家反逆罪を犯した罪人を始めとして、罪に汚れた罪人どもを日々捕えているわけですから」


 ま、カタリナちゃんが捕まえてる犯罪者って、基本的に商人かお金持ちなんだよね。ろくな金もない貧乏人が犯した犯罪なんて、捕まえる気すらないんだって。

 そりゃそうだよね。お金のない貧乏人をいくら強請ったり(たか)ったりしても、大した賄賂(おかね)をよこしゃしないもん。それよりは金持ち相手に強請り集りをして、それが通じないなら、罪をねつ造して襲撃だ~。

 で、その資産の一部をこっそり自分の懐に。


 でも、カタリナちゃんはちゃんとしてるから、自分1人が稼いで喜ぶだけじゃなく、そこで稼いだお金をちゃんと上司さんに"上納金"として納めてるんだよね~。

 おかげでカタリナちゃんの評価は警備隊内で随一。


 罪のねつ造に、ばれたやヤバイ事実なんて、上司さんが全部揉み消しちゃってるよ~。


 ちなみに、人事権を持っている"お偉方"って呼ばれてる人たちは、書類上では国家反逆罪を犯した罪人すら見事に捕えてしまうカタリナちゃんのことを、高く評価してるみたいだよ。

 全く書類ばかり見てるから、市井では"王都に住む山賊"って呼ばれて、恐れられてるカタリナちゃんの正体に気付かないんだよ。

 "お偉方"って、頭のめでたい馬鹿どもだね。




 とはいえ、その時の僕とカタリナちゃんは浮かれていた。

 後日、カタリナちゃんが配置換えになって、王都警備隊から北の国境にある砦に人事異動になるまでは。


「い、いやー。どうして"北"に配置換えになるのよ。"北"ってことは、つまり魔族との戦争の最前線じゃない!あんなところでどうやって稼いでいくのよー!」

 うん、あまりにもカタリナちゃんの評価が高かったせいで、戦争の最前線に送られることになっちゃった。

 この国って魔族と戦争中だから、優秀な人材は1人でも多く前線に送りたいんだろうね。


「ううっ、カタリナちゃんがいなくなったら、僕もおいしい物がただで食べられなくなっちゃう。カタリナちゃーん」

 しかし僕にとっては、戦争とかそんなものはどうでもよろしい。

「魔族相手じゃ、金目の物を巻き上げることすらできないじゃないー!」

 お金大好きなカタリナちゃんも僕も、とんでもない絶望に襲われてしまった。


 そのまま、カタリナちゃんは大隊長として王都を発って、北の砦へ行っちゃった。


「い、いやー、私の王都がー」

 王都を後にするカタリナちゃんは、最後まで叫び声を上げてたよ。



 ……ところで、いつから王都はカタリナちゃんのものになったのかな?

 まあ権力を笠に着て、"合法的"に略奪しまくってたから、カタリナちゃんの所有物みたいなものだったしね~。


 とはいえ僕、大切なお友達がいなくなってショックだよ。






 でもね、このことにもっとショックを受けたのが、僕と仲違いしてたバウマイスターおじさん。


「ヤ、ヤバイ。今までカタリナ様に潰してもらっていた商売敵どもが、一斉に反撃を仕掛けてくる」

 バウマイスターおじさんって、カタリナちゃんにたくさん貢ぐことで商売敵を片っ端から破滅に追いやっていたけど、そのカタリナちゃんがいなくなると、途端に大ピンチなんだよね。

 敵が多すぎるから、自分を守ってくれる権力者(カタリナちゃん)がいなくなると、1人では戦えない。


「……もともとこんな貧乏な上に、魔族に攻められている国に未練はない。かねての計画通り国外脱出して、もっと豊かな国で悠々自適な余生を暮らすとするか」

 そんなこと言を言い残して、たくさんの金貨を持って、夜逃げ同然で行方知れずになっちゃった。


 さすがに土地まで持っていくことは出来なかったけど、金貨はたくさん稼ぎまくっていたから、他の国で一生豪遊しながら暮らしていくつもりなんだろうね。



 ……なんだか、僕の前世での老後みたいだね~。






 し、しかしだね、諸君。


 仲たがいしていた僕とバウマイスターおじさんだったとはいえ、僕が作った薬はバウマイスターおじさんがいてくれたからこそ、買い手がいたわけだよ。

 そのバウマイスターおじさんがいなくなってしまっては、僕は一体どうしたらいいのだね!?


 あんなケチな男でも、それでも一般の薬より高値で買い取ってくれていたというのに……ハヒ~ン。


 ま、とりあえずこの国は魔族と戦争状態だから、ポーション関係はいくらあっても飛ぶように売れるんだよね。

 バウマイスターおじさんも、軍にポーションを大量に納入していたようだけど、その後別の商人さんが軍へ納入するようになったよ。



「ハハッー、このたびはスバル様のお力により、軍へポーションを納入できるようになりました。これからもなにとぞ、よしなにお願いいたします」

 そんなこと言いながら、バウマイスターおじさんの後釜になって、軍へポーションを納入するようになった商人さんが、今僕の前で平伏してる最中だけどね。


 僕がちょっと協力してあげて、このおじさんをバウマイスターおじさんの後釜に据えてあげたの。

 大量のポーションを取り扱えれば、その実績で軍へ納入できるようになるんだ。

 で、僕の工房で弟子たちを動員してポーションを量産するなんて朝飯前だから、大量のポーションを商人さんに常に売ってあげてたら、それだけで商人さんは軍へ大量納入できるようになったんだって~。



 薬関係の事なら、僕にとってこれくらいチョロイよ。



 そして僕はその商人さんと、

「僕たちの友情は"お金の関係が限り永遠"だよ」

「さすがはスバル様。私たちは"永遠の友達"です」

 そう言いながら、ガシリと握手を交わす。


 やっぱり"永遠の友情"って大切だよね。

 そして友情を誓い合ってる僕も商人さんも、目の色はとってもキラキラと輝く金貨色だね~。

 わーい、この商人さんも、すっかり金貨の魔力に憑りつかれてる~。

 僕とまったく同じ色の瞳だね~。



 お金がザクザクだ~。




 ……とはいえね、それでもポーションだけだと儲けが今一つなんだよね~。

 今度の商人さんはバウマイスターおじさんほどの販路もないから、正直以前ほど稼ぐことが出来ないの。

 現状だと、薄利多売って感じかな~。


「ふうっ、お金を稼ぎ続けるのも楽じゃないね」



≪そう言いながら、毎日王都の高級菓子店に通い続ける財力があるじゃないですか≫

 えっ、えっへへ~。

 ほら、僕って砂糖がないと死んじゃうから、毎日甘くておいしいお菓子を食べないとね~。



 どっちにしろ、僕の懐の金貨は日々増え続けてるし~。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ