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45 ハニー、ハニー、ハニー、ハニー、ハニー……

 ハニーシロップにハニーシュガー、ハニージャム、ハニージュース、ハニー歯磨き粉、ハニーメロン……


 ああ、こここそが楽園(パライソ)に違いないでゴザル。



 あ、ちなみに最後のハニーメロンは果物の名前で、蜂蜜とは関係ないんだけど、味がなんとなく蜂蜜っぽいんだよね。

 おいしいのかって尋ねられたら、返事に困る味なんだけど、でもとっても甘いよ~。



 でねでね、僕は"蜂蜜の森"で蜂蜜を無事に採集した後、無事に王都へ帰還。僕は"旧アイゼルバーグ邸"隣の薬の研究所で、たくさんの蜂蜜を使って、いろいろな食べ物を作ったわけ~。


 ああ、この蜂蜜サンドイッチおいしいな~。

 パンで挟んでいるのはトロトロの蜂蜜だよ。サンドイッチを齧るたびに、齧っている反対側でパンの隙間から蜂蜜がこぼれ出して、僕の手は蜂蜜でドロドロのベトベト。

 ああ、我が理想郷(アヴァロン)ここにあり。



 とはいえ、そんな僕を見る弟子たちの視線は、ちょいとばかしおかしいね。


「あ、あんなに蜂蜜ばかり食べて大丈夫なのか?」

「虫歯になるよな」

「太るわよね」

「病気になるな」



 ま、弟子どもの中でも比較的常識をもっている子たちの言葉に過ぎないよ。

 もっと頭のおかしな子たちは、僕が蜂蜜(らくえん)をにかぶりついてる姿を見ても、我関せずって感じで、自分の研究に没頭していたね。


「絶対に将来デブになるわね。大人になったら大変だわ」


 ――チクリッ

 な、なぜだろうか。

 弟子の1人がぽつりとつぶやいたセリフが、僕のトラウマを刺激した。前世の僕は30過ぎてから、見るも無残なデブへと変貌を遂げていった。

 ……フフフ、ぼ、僕が醜く肥えた"豚人間"になるわけないじゃないか。こんなに愛らしくてプリティーボーイな僕が、まさか"豚人間"に突然変異するようなことはありえないはずだ。


「さーてと、ご飯を食べたら、次は歯磨きしないとね~」

 僕は虫歯予防のために、ハニー歯磨き粉をつけた歯ブラシで歯磨きすることにした。

 もちろん甘い。そして虫歯予防効果は甚だ疑問以外の何ものも残らないおいしさ。

「ああ、至福じゃ~」


 年に似合わない老いた声が、つい口から出ちゃったよ。

 これじゃあまるで、前世の72歳だった僕みたいじゃない。



 あ、もちろん蜂蜜中毒者であり、蜂蜜こそが世界より重いと確信している僕だから、ちゃんと冒険に役立つ"ハニーポーション"も作っておいたよ。


 とっても甘くて、おいしいんだ~。


 効果は中級ポーション並みの体力回復効果に、魔力回復効果も中程度ある逸品。もちろん品質はいつものように"伝説級(レジェンド)"だ。

 とても残念な事実だけど、品質が神級(ゴッツ)になるためには、素材自体に神級(ゴッツ)レベルの素材を持ちいといけないんだよね。なぜ、こんなにも美味しい蜂蜜が神級(ゴッツ)レベルの素材じゃないのか、僕としては大変に受け入れられがたい事実だね。


 でもでも、神級(ゴッツ)の素材って、本当に超レアで、手に入れるのが簡単じゃないんだ。それこそ"世界樹"とか、"竜帝の肝臓"みたいな、世界に一つ二つしかないくらいの超レア。

 もしも蜂蜜が神級(ゴッツ)レベルの素材になっちゃったら、今みたいに食べ放題できないから、神級(ゴッツ)素材でないことが、むしろ正しいことだよね。


 ああ、幸せ~。





 まあ、僕はこんな感じで至福に包まれているのだけど、王宮の方では"不帰の森"に伝説の大悪魔ディアブロが、悪魔の大軍勢を率いて降り立ったとかって噂が飛び交っていていたね。

 なぜか、国王や大臣を始めとして国の重鎮たちが、絶望した顔で機密会議を執り行ってたよ。


「この国はもうおしまいだ」

「国どころか、我々人間に未来はないー」

「魔王どころの災禍でない。もはや世界滅亡の兆しだ!」


 そんな絶望感満載の悲鳴で包まれたよ。

 きっとディアブロのふたつ名が、"世界終焉(ワ-ルドエンド)"なんて呼ばれてるのが原因だよね~。



 あ、もちろんこれらの情報を提供してくれたのは、いつものようにスーパーストーカーとして日夜この国のあらゆる情報をストーキングしているスピカのおかげ。

 前世でも僕の頭の中に住んでいたスピカだから、きっと日本中のスマホの電話番号とメールアドレスぐらいなら、全情報を掴んでるくらいはしてたはずだね。


≪あなたは私のことを何だと思ってるのですか!≫

 ごめんごめん。

 "日本"じゃなくて、"世界中"の間違いでした~。

≪このクソガキ!≫


 テヘッ、スピカさんが切れちゃった。




 ただ、その後"不帰の森"に王都から兵士が派遣されたのだけど、森の中には以前蠢いていた亡霊(ゴースト)たちは全ていなくなり、さらに肝心の悪魔たちの大軍勢も影も形もなく消え去っていたことが確認された。


 結果的に被害は何もなかったので、なぜかまたしても"勇者レオン様"の功績ということになってたよ。




 レオンは王宮に呼び出されて大歓待を受け、お決まりでいつものように王女3姉妹に捕まってたね。

 で、当然ながらそこにアイゼルちゃんも乱入。




 ……どうして、あんなことになってしまったんだ。


 僕の信頼できる義兄弟レオンは、嫉妬で発狂した女どもにメタ刺しにされて、帰らぬ人に……。

 一体何がいけなかったというんだ。あいつ物理防御は滅茶苦茶高いから、そんじょそこらは刃物では傷一つ使いなほど頑丈だというのに、あいつを殺せるほどの武器なんて一体どれだけの業物なんだよ……。


 僕は、義兄弟の死に涙したよ。



 ……うん、本当に僕は涙を流したんだよ。


 ただし、レオンがメタ刺しにされたというのは僕の"完全な妄想"で、実際の奴は、3人の王女とさらにアイゼルちゃんの4人と一緒にベットで全裸の一夜を過ごしたんだよ。


「はあっ、何それ!?お前そんなラノベのハーレム主人公みたいなことリアルでできるわけないだろ!それこそアラブの王様のハーレムでもなけりゃ、女全員に恨まれて嬲り殺しの刑に遭うだろう!」


 ……グスリ。

 涙だけでなく、鼻水まで僕は垂らして泣くしかなかったんだ……

 なぜそんなことが出来る。

 レオン、貴様はマジでどうやってあの女どものドロドロ地獄の被害に遭うことなく、涼しい顔してそんな偉業を成し遂げられる。


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