表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
35/82

33 ドワーフの鍛冶師ドルゼン

 ラインハルト君の鎧を作ろということで、僕はガルガチュア山系にあるドワーフの里にやってきたよ。もちろん、次元属性の転位魔法(ジャンプ)でひとっとび。


 ちなみにクライネル王国から神獣の森の地下にある僕の秘密基地まではうん千キロ離れてるんだけど、あそこからドワーフの里までは千キロどころか、1万キロ以上離れているよ。

 クライネル王国がある大陸とは、完全に別の大陸だしね。

 それでも消費する魔力量が変わらないから、次元属性の転位魔法(ジャンプ)ってすごく便利なんだよね。


 昔、転移魔法(ジャンプ)を使って衛星軌道上に行って、そこからこの星を眺めたことがあるくらいだよ。あの時は大宇宙の偉大さを感じたものだよ。

 あ、ちなみに衛星軌道になると完全に宇宙空間になっちゃうから、その時は自分の周囲に次元結界(ディメンションシールド)を展開させて、その中に空気をちゃんと入れておいたから。だから宇宙でも窒息する心配はなかったよ。

 まあ、結界内の酸素が切れたら大ピンチだから、あまり長く衛星軌道にいられたわけじゃないけどね。




 で、話を元に戻して、僕はドワーフの里にある"ドルゼン鍛冶屋"ってとこを訪ねたよ。


「たのもーう」

 そう言って、鍛冶屋のドアを開けた僕。


 鍛冶屋の中にはドワーフのおっさんがいたよ。子供の僕とたいして身長は変わらないけど、横幅はドワーフっていうだけあって大きいね~。筋骨たくましいから、あの腕に掴まれたら、僕のほそっこい腕なんて折れちゃいそうなぐらい、すごい体してるよ。

 この人が、この鍛冶屋の主ドルゼンさんだ。


「だれじゃ、お前さん?」

「知り合いが尋ねてきたのに、ヒドイ言われ方……」

 ねえねえドルゼンさん。僕だよ、僕。この僕のことを忘れちゃうなんて、ひどいじゃない。

 これでも昔はつるんで、各地のいろんな素材を集めて回った仲でしょう。


 僕は薬草を、ドルゼンさんは鍛冶に仕える鉱石を。

 そんな採集仲間である僕の事、忘れちゃうなんてひどい!




「ドルゼンさん、耄碌するような歳になっちゃったんだね……」

「失礼な奴が。ワシはまだそんな歳ではない!」

「でも、僕のことを忘れちゃったって……」


「というかお前さん、その顔につけてる変な仮面を取れ。素顔が見えんじゃろ!」

「あ、そうだった」


 いけないいけない。

 このドワーフの里なんだけど、僕が素顔を見せてやってきたらすごーーーくマズいことになるんだよね。

 たぶん指名手配されてる凶悪犯罪者が発見されたような感じで、僕の周囲に、街にいる警備兵がなだれ込んできそうなぐらい、ヤヴァイ状況になるだろうね~。


「僕だよ僕」

 とはいえ、ここは鍛冶屋の中。ドルゼンさん以外に人目がないから問題なし。僕は仮面を取った。


「へっ、へっ、へっ、へ、へ、へい……」

 その途端、ドルゼンさんの顔が真っ青に変わっちゃったよ。おまけに顎が外れたように口を開けている。目ん玉も見開かれ、まるで死んだ親父が目の前に現れたかのような驚きようだ。


 ……いや、ドルゼンさんのお父さんは高齢で体も悪くしてるけど、まだ存命だって聞いてるけど~。


「シー」

 しかしドルゼンさんが、ここで叫び声をあげたら超大変だ。




「僕のことは今は"スバル"って呼んでね。いいね」

 僕がニコリと笑うと、ドルゼンさんがコクコクと顔を上下に動かした。


「ですが、へい……」

「シー、だから"スバル"だって」


 駄目だよ、ドルゼンさん。いくら昔の仲間だからって、「ヘイッ」なんて気軽に呼ばれちゃ、僕でもちょっと困っちゃう。




「今、僕って職務放棄して休暇を取ってる最中なんだよね。だから面倒臭い奴(にいさん)に見つかったら、僕の命がマジで超ピンチなの。きっと兄さんに頭を掴まれて、ギリギリって締め上げられちゃう」

「兄さんって、さい……」

「シー」


「へい……スバル様の顔が描かれた手配書が国中にばらまかれていましたが、原因はそれだったのですか」

「えへへー、だからもし誰か来ても、僕がここに来たことは内緒にしておいてね」


「まあ、努力はしましょう。ですが自分の命が関わる事態になったら、当然ここに来たことは自白しますぞ」

「う、うん。さすがに命が懸ったら仕方ないよね。その時はゲロっちゃってもいいよ」


 うーん、そうだよね。きっとこの国の連中なら、僕の居所を調べるために、友人知己を拷問してでも吐き出させようとする奴がたくさんいるもんな~。その時はさすがに仕方ないよね。



「ま、そんなことはおいといて、今日はドルゼンさんに頼みごとがあってね」

 そう言い、僕は秘密基地から持ってきた白狼王宮石(はくろうおうきゅうせき)を取り出した。

 その途端、ドルゼンさんの目の色が変わる。


「こ、これは、ただの石ではないですな。この感触、見た目、輝き」

 しげしげと観察し、僕が手に持つ白狼王宮石(はくろうおうきゅうせき)を撫で始めるドルゼンさん。


「ふふふ、"解析鑑定魔法"をかけてごらんなさい」


 僕の口車に乗って、ドルゼンさんが解析鑑定魔法を使う。



「……ただの白い石と出て、詳細が何もわかりませぬが」

「あっ、いけない。僕が解析鑑定魔法に情報を秘匿させてたんだった」


 いやー、困ったもんだね~。

 冗談抜きで解析鑑定魔法って僕がこの世界に広めた魔法なんだよね。そして一部の情報を秘匿してたり、誤情報に書き換えていたり。


(スピカ、スピカ。情報を開示してあげてちょうだいな)

≪はいはい、今やりますね≫

 頭の中でスピカさんに指示を出す。

≪情報を開示しました、ご主人様(マイロード)

 さすがスピカさん、優秀でゴザル。



 ん、僕のテンションおかしくなってないか?


 ま、いいや。


「"白狼王宮石(はくろうおうきゅうせき)"……ま、まさか。かの魔王に匹敵するという、あの大魔族の王宮に使われていた建材ですか」

 クライネル王国ではたぶん白狼王のことを知ってる人はいないだろうけど、ここでは話が別だ。白狼王って結構有名人だったみたいよ~。

 あ、人じゃなくて狼型の魔物だから、有名狼って言うのかな?



「どう、すごく珍しいでしょう。世界中探し回っても、手に入れることが出来る代物じゃないよ」

 僕がそう言うと、ドルゼンさんはジュルリと口から涎が垂れそうなほど興味を示す。



「へい……ス、スバル様。なにとぞ、私めにこの石をお恵み下さいませ」

「フフフ、もちろん僕のかつての仲間であるドルゼンさんのお願いだから、聞いてあげちゃうよ。ただ、僕の頼みも聞いてほしいんだけどさ~」

「して、どのような願いで!」


 うむ、目の前にあるレア素材に完全にドルゼンさんは釘付けだ。視線は僕の手にある白狼王宮石(はくろうおうきゅうせき)に注がれたままだ。でも、ちゃんと言葉のキャッチボールは成立してるからすごいよね~。


「この白狼王宮石(はくろうおうきゅうせき)を使って、鎧を作ってほしいんだ。ちなみにサイズは」

 そこで僕はロングコートのポケットをごそごそと探って、丸い魔法石を取り出す。

 ちょこっと魔力を込めてやると、魔法石から光が立ち上り、ラインハルト君の姿が等身大で浮かび上がった。

 ファンタジー風に言うなら、"投影魔法"とか"幻影魔法"とか言ったらいいのかな?

 もっとも僕は、"3D写真"って呼んでるけど。



「人間ですか」

「そうそう。この子のために鎧をプレゼントしたいから、白狼王宮石(はくろうおうきゅうせき)でちょちょいと作ってあげてよ」

「ちょちょいとは申しますが、期限はいかほどで?」

「うーん、そんなにせっぱつまってるわけじゃないけど、早い方がいいかな~」

「では、1週間ほどで仕上げて見せましょう」

「おおっ、さすがドルゼンさん。超早い~」


 ちなみにドルゼンさんはラインハルト君の"3D写真"を眺めながら、全身をくまなくチェック。本当は触ることが出来る実物の方がいいのだろうけど、目視だけで鎧の作成に必要な寸法を測っていく。

 いやあ、さすがにできる鍛冶師は違うね~。


 これなら、もし鍜冶屋が潰れたとしても、日本の衣料品店に楽勝で就職できそうな便利スキルだね~。

 ま、ドルゼンさんが日本にどうやっていくのか、そんな方法僕は知らんが。



「それで、へい……スバル様。鎧を作成した後の残った白狼王宮石(はくろうおうきゅうせき)は……」

「もちろんドルゼンさんに全部あげるね」


 僕はにこりと笑い、ドルゼンさんに白狼王宮石(はくろうおうきゅうせき)の塊を手渡した。

 手に取った瞬間、ドルゼンさんは物凄くにやけた顔をしてたよ。


 普通に手に入ることができないレア素材に、完全に心奪われちゃってるね~。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ