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31 地下の秘密基地

悪魔(デーモン)に捧げる生贄の書・初級』



 僕は秘密の地下室で昔のことを思い出しながら、そんなタイトルの執筆作業を続けていたよ。

 完全に邪教の書だね~。


 捧げるものが人間の血液10リットルとか、きわめて強力な幻覚作用のある薬を服用させた処女とか……いやー、こんなものを魔方陣に捧げて悪魔を召喚するなんて、とんでもないね~。


 ちなみに今のは"初級"の内容だけど、"上級"になると一国を捧げて100万人以上の犠牲者を出すことで召喚する、魔王クラスの悪魔(デーモン)なんてのもあるよ。

 あとは星を飲み込む悪魔なんてのもいるけど、あれは召喚して出てくるようなものじゃない。でも、僕が書いてるのは生贄に関することなので、この悪魔が好む生贄についてもそのうち書かないといけないね。



「……ところで、捧げないといけない生贄って何だったかな?確か昔作った拠点に、関係する資料を残してた気がするから、少し行ってくるか」


 善は急げ。

 と言うことで僕はクライネル国から、ほんの数千キロほど離れた距離を"転移(ジャンプ)"した。



 えーとですね、魔法には転位魔法(ジャンプ)と呼ばれる魔法があって、早い話が瞬間移動してどこにでも行ける魔法があるわけです。

 ちなみに転位魔法(ジャンプ)と一口に言っても、転移(ジャンプ)するには複数の方法が存在してるんだ。

 で、僕が使う転位魔法(ジャンプ)は次元属性を用いたものだね。

 この"次元属性による転位魔法(ジャンプ)"は物凄く便利で、転移(ジャンプ)に必要な魔力量は距離に関係なく常に一定だけど、理論上はこの世界の中であればどこにでも行くことが出来るよ。

 ちなみにどこでもって言うのは、このクライネル王国が存在している惑星の中はもちろん、衛星軌道上にだって行ける。さらには夜空に光り輝いている星にだって、転移(ジャンプ)することが可能だよ~。

 宇宙船もなしで、他の星にも行けちゃうわけ。

 超便利でしょう、次元属性の転位魔法(ジャンプ)って。


 ただし他の星に転移(ジャンプ)したからって、そこに酸素がある保証はゼロだけど。




 そんなわけで、僕はクライネル王国の秘密の地下室から、昔作った秘密基地の一つに転移(ジャンプ)した。


 ここもクライネル王国の地下室と同じで、完全に黒一色でできた地下の部屋。

 全く内装にこだわりが見られないけど、この地下室は僕がこの世界で6歳の時に作った、秘密基地第一号なんだよね。いや~、一番最初に作った秘密基地だから、僕としては感慨深いものがあるな~。


 ちなみにこの秘密基地の上には、"神獣の森"と呼ばれる大森林が広がってるね。神獣が住んでいる森って呼ばれてるだけあって、貴重な薬草が結構生えてるよ。あと、エルフの里なんかもあるね。

 もっともそういったものは森のすっごく奥深くまで行かないといけなくて、普通の人間ならそこに辿り着く前に、森に棲んでいる獣にパクリと食べられちゃうのが確実だね。あるいは、水か食料がたどり着く前になくなるってパターンの方が多いかも。

 もっとも、転位魔法(ジャンプ)が使える僕には、水や食糧が不足する危険なんてないけどね~。



≪そもそも水筒やポーチの中に、大量の水と食料が詰まっているじゃないですか≫

 あ、そう言えばそうだった。

 さすがスピカ、よく気が付くね~。



 あと、神獣の森の最奥には"世界樹"もはえてるよ。


 世界樹の葉についた滴は、その一滴で死者を生き返らせることが出来ると言われる伝説があるほどだね。

 僕、その世界樹の葉もそれなりに所持してるよ。

 伝説では滴で死人が生き返るんだけど、実際に試したところ、残念ながらそこまでの効果はなかったよ。とはいっても、世界樹の葉にはかなり強力な回復効果があるから、これを原料に薬を作れば、死人を蘇らせるのは無理でも、体力も魔力も即時完全回復させちゃう即時完全回復(フル)ポーションを作れちゃうね~。



 ま、今大事なのは"世界樹"じゃなくて、悪魔(デーモン)に捧げる生贄に関する資料。


 僕の秘密の地下基地らしく、ここにも本棚が置かれている。

 ただクライネル王国で作ったばかりの地下室と違って、ここの蔵書量は10000冊を超えてる。

 しかも、どれもが1000ページを超える分量がある、分厚い本なんだよね~。


 あまりにも本が多いものだから、地下室を何度も増設してるほどだよ。




 で、あまりに本が多いから、僕はスピカに探知魔法を使って目的の資料を探してもらう。


≪ご自分で探知魔法を使えばいいじゃないですか≫

 スピカにはそう言われたけど、

「やだよ。ここにある資料って、ミミズが這い回ったような文字で書かれてるんだよ。感知魔法を使って探すにしても、クソ読みづらいから嫌なんだよねー」

≪その資料を書かれたのは、ご主人様(マイロード)でしょう≫

「あーあー、何も聞こえない。何も聞こえないぞ~」


 その後スピカさんにため息をつかれたけど、僕の脳内に住んでいる妖精さんは、ちゃんと目的の資料を探し出してくれた。

 その資料を見ながら、僕は『悪魔(デーモン)に捧げる生贄の書・初級』の続きを書いていく。

 あ、ちなみに参考にしている資料は『代償を要求することで発動する魔法』について書かれてるものだよ。

 短くすると、"代償魔法"を扱った本ってことになるけど。

 そして、この資料を書いたのも僕だけどね。


「……っていうかさ。この"代償魔法"って、僕とレオンをクライネル王国に召喚した魔方陣と全く同じのが描いてあるね~」


ご主人様(マイロード)はお忘れかもしれませんが、クライネル王国に描かれていた魔方陣は、ご主人様(マイロード)が今から100年ほど前に描かれたものです≫

「へっ!?」

≪描いた当時の場所とは違う場所に移されていたため私も気付くのが遅れました。おそらくは魔方陣を書いた石板ごと移設されたのでしょう≫

「へー、あー、うん。そうか」


 誰だよ、あんな迷惑極まりない魔法陣をわざわざ移設までして残したバカは!

 っていうかさ、昔の僕は何やってんだろうね。

 昔の自分が原因で、100年後にクライネル王国に召喚されることになっちゃうなんて。


 いや~、人生って何が起こるか本当に分からないな~。




 あ、ちなみにスピカさんが100年前とか言ってたけど、僕は間違いなくピチピチの12歳児なのでお忘れなく。


≪少なくともご主人様(マイロード)の体が12歳児なのは間違いありません≫

 ほら、スピカだってちゃんと証明してくれてるでしょう。


≪あくまでも"体だけ"ですからね≫

 うんうん、そうだよね。

 僕って12歳+前世での72歳だから、見た目と中身がちょこっと違うんだよね~。

 あれ、それで足しても100歳にも届かないよ~?


≪……≫


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