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30 新しい工房

前書き



 今回から新章になります。

 中級ポーションをチョイチョイと作って、おまけで"超美肌パック"も1000個ほど作成。

 薬の作成専用に、"旧アイゼルバーグ邸"の隣に新しく買った館(今では建物内は完全に薬作成専用の工房と化している)で、僕はそれらの薬を作っていった。

 見た目には、ただ普通に大釜で材料を煮立てて、そこから薬効のある成分の抽出をしているようにしか見えない。


 ただそう見えるだけで、僕って鍋で煮ている間にいろいろと魔法を加えて、薬剤の成分を"魔改造"と言っていいレベルで、別次元にまで昇華した代物に変えちゃってるんだよね。

 いや、"魔改造"ってなんとなく言ってみたかっただけだよ。

 もとの材料から、いきなり不老不死の薬の成分に作り変えられます!なんてことは完全に不可能だから。

 とはいえ、もとの原材料ではありえないくらいの薬効が出るようになるのは間違いないけどね~。


 "解析鑑定魔法"の結果では、作った中級ポーションの品質は"最高級"。これは解析鑑定魔法で調べられる品質の中では、一番いい品質のことだよ。

 ただし、上位互換の"精密解析鑑定魔法"で調べると、品質は最高級よりもさらに上である、"伝説級(レジェンド)"になるんだけどね。


 見た目は普通に薬を作っているだけにしか見えないのに、僕が作る薬の完成度は、あきらかに常識外れな品質を誇っている。


「さすがは師匠、素晴らしいです」

「普通に作っているようにしか見えないのに、一体どうしてこのような出来になるんだ……」

「美容を、美容にいい薬の作り方を……」


 僕の弟子3人は、目の前で薬を作っている僕を見ながら目を丸くしてるね。

 1人だけ頭のおかしい子がいるけど、"超美肌パック"を作っている時だけは、この子物凄い目で僕が薬を作る様子をガン見してたよ。


(女って、怖ェなー)




「フフフ、いいかね君たち。薬と言うものはただ普通に作っていてはいけない。ときには魔法を使って、ギュギュギュッと素材を生かしてやらなければならないのだよ」


「えっ?師匠、薬を作っている間に魔法も使っていたのですか?」

「でも、魔法の気配なんて全然感じなかったのに」

 魔法使いとしての素質もある優秀な弟子たちだね。魔法使いであれば、魔法を使った際に生じる、魔力の反応に気付くことが出来るわけだから。


「チッチッチッ、僕ぐらいのレベルになると、魔法を使っていてもそれに全く気付かれないなんてことは、当然のようにできるのだよ」

 普通の土属性や水属性の魔法に、"次元属性魔法"を付加してやれば、それだけで魔法から発生する魔力を隠蔽してしまうことが出来る。

 同じく次元属性魔法を使える相手なら感知できるけど、しかしここには僕以外に次元属性魔法を使える人間がいない。だから感じ取ることが出来なくても、仕方がないんだよね~。



 そんな僕に弟子たちは関心の声を上げて、「お師匠様」「賢者様」と、称賛のこもった眼差しを向けてくれる。


 ウフフ~。

 どうよ、僕っだってやればできる子なんだよ。

 とっても優れた天才薬剤師なんだよ。


 どうだ見たか、アイゼルちゃん、ラインハルト君!


 そう言ってやりたいのだけど、残念ながらあの2人はここにはいないんだよね。

 アイゼルちゃんはそもそも僕の薬づくりなんて興味なしし、ラインハルト君も工房には来ないんだよね~。


 ちなみにレオンに関しては、この国に召喚される前からの付き合いで、僕とは義兄弟にまでなっている仲だ。だから、僕がどれほど優れた子なのか分かっている。


 ……分かっているけど、あいつってクールでしょ。

 僕のパーティー内での扱いを見てても、全く助けてくれないんだよね。


 ……僕、やっぱりパーティー内でのいらない子状態から抜け出せないのかな~。



 そんなことをぼんやり考えつつ、

「それでは弟子たちよ、あとは精進するのだぞ」

 偉そうに言って、僕は工房にある"所長室"へ1人入っていった。




 いやさー、何しろここって元は大きなお屋敷なんだよね~。

 だから薬作成用の工房(へや)が、建物内にいくつもあるの。

 薬の作成と実験用に改築したわけだから、その時おまけで、僕専用の"所長室"まで作っちゃったんだよね~。


 で、所長室には壁一面を埋め尽くす本棚があるのだけど、その中の一冊を僕は押す。


 するとガタガタガタという音がして、部屋の一部に地下へと続く隠し階段が現れた。


 薬の作成・実験施設なのに、まるでカラクリ忍者屋敷だね~。




 ちなみにこういう工事が得意な人にたくさんの金貨を積んで、この仕掛けを作ってもらったんだ~。

 なんでも昔、王宮の秘密の隠し通路の設計にも関わったとかって人だよ。

 でも、王宮の機密を知っているわけだから、それが外部に漏れてはいけないと殺されそうになったこともあるんだって。その時はなんとか隙を見て逃げ出すことができたけど、その後は裏社会の中でひっそりと生きることを余儀なくされたんだってさ~。

 と言っても裏社会で設計の腕を持ってても、金を稼ぐのは難しいんだって。

 で、貧乏して苦しんでいたところに僕が金貨を積んであげたら、頼みごとをあっさりと聞いてくれたね。



 で、僕は"所長室"に現れた地下へと続く階段を1人で降りていくよ。

 仕掛けの出来も完璧で、僕が階段を下りるのと同時に、"所長室"にある階段の入り口は再び隠れてしまう。


 そうして僕は、薬の研究所の地下室に辿り着いた。


 僕は火魔法を使って、太陽の光が届かない地下を照らしている。でも、ここは天井も壁も床も、すべてが真っ黒な石で造られてる。

 ものすごく不気味な地下室だよね~。


 まあ、作ったのは僕だけど。




 ちなみにこの地下室ができる前。ここは普通に地面の中だったので、土で埋もれていた場所だったんだ。だから僕がちょこっと魔法を使って、地下室として作り直したんだ。

 その時ここにあった土は、次元属性魔法で空間ごと隔離して、土魔法と重力魔法を使って超高圧縮して固め、黒い板状に作り変えたんだ。そしてそのまま、現在の地下室の天井と壁、床の建材として使ってるよ。

 ところでこの黒い建材は物凄い強度を持ってて、ドラゴンが体当たりしようが、地球の大型トラックが突っ込んでこようが、傷一つつかないほど。

「いっそ、武器や防具の素材に使えばいいんじゃないか?」って突っ込まれるかもしれないけど、この材質って元が土とはいえ圧縮しまくった影響で、重量もバカみたいに重いんだよね。

 もしもこれを使って剣を作っても、筋肉マッチョな大男でも持ち上げることができない重さになるだろうね。



 あと、この地下室を作っている時に、偶然地下空洞を見つけたんだよね。

「これ、何かな~?」

 地下にある空洞に、僕は好奇心が刺激されたね。


 で、その空洞なんだけど、入ってみると細長い地下通路になっていたんだ。それで地下通路を進んでいくと、なんか王宮にある部屋の一つにまでたどり着いちゃった。

 わーお、何かがあった際に王族だけが逃げ出せる秘密の通路って奴だね。ちなみに地下通路のもう一つの出口は、王都の外にある川の傍にあったよ。


 ……

 ……

 ……


 僕は何も見なかったことにして、こっそりと秘密の地下通路の壁を元に戻しておいたよ。

 そして僕が作った地下室も、ちゃんと秘密の地下通路に被らないようにして作っておいた。


 うん、そうしておかないと、何かあった時絶対ヤヴァイよね~。




 地下室を作っている時にはそんな些細な出来事があったけど、この地下室には机や本棚などを置いてるよ。

 フフフ、僕専用の秘密の地下基地なんだよね。

 入口だって僕しか入れないように、わざわざカラクリ仕掛けを仕込んでもらったんだから。

 地下にある秘密基地は、男の子の憧れって奴だしね~。


 まあ、大きさが基地でなく、部屋レベルなのはご愛敬だけど。




「さーてと、魔法の復習でもしておかないとね~」

 そして僕だけが知っているこの部屋で、僕は紙とペンを取り出して、普段使うことのない魔法のことを思い出しながら、魔方陣の図面や魔法の理論を書いていく。


 こういうことって、"今世"だけでなく、"前世"の地球にいた時にもやっていたんだよね~。

 偉大なる黒歴史って感じで、前世の僕の部屋の壁一つを占領するほどの量の、"自称魔法書"の山を書き連ねまくったわけだ。


 やつぱり人生長いと、昔の記憶とかいろいろと忘れていくから仕方ないんだ~。

 特に普段使わない魔法の理論なんて、こうやってわざわざ書き起こしていかないと、完全に記憶の中から抜け落ちちゃうし。


 ほら、日本でもお年寄りがボケ防止のために、小学生がやってる算数のドリルの問題を解いてる、なんて話があるでしょう。

 僕が今やってるのもそれと似た感じ。

 まあ、僕の場合はボケ防止じゃなくて、忘れかけていることを改めて掘り返して、思い出してる作業だけどね~。


 いや~、僕がいくら12歳だと言っても、やっぱり前世は72歳まで生きてたもんだから、頭は結構歳を食ってて大変だね~。



 だからって、僕をヨボヨボの年寄扱いしないでね~。


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