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28 なにこのパーティー。超怖い。

 ノストフィーネ山脈を後にした僕たちは、山脈近くにある村にたどり着いた。

 その途中でアイゼルちゃんが意識を取り戻していて、「キャアアア。ド、ドラゴンは、ドラゴンは」と叫んで、かなり混乱した様子だった。


 だけどご安心あれ、

「フフフン~。あのドラゴンなら僕にビビって逃げて行ったよ」

 僕は事実を言ってあげた。

 実際には逃げたわけではないけど、似たようなものでしょう。何しろ僕に平身低頭しまくった挙句、2度と関わりたくないとか抜かしていた腰抜け野郎なんだから、逃げていったも同然だよね~。



「なるほど、レオンさんが撃退してくれたわけですね。さすがは勇者レオンですわ」

 そう言い、レオンの方に熱い視線を向けて抱きつくアイゼルちゃん。



 ――はい、えっ、どうして、なぜだ!?

 僕はほぼ100%の事実を言ったのに、なぜあの時僕の傍で何もしないで突っ立ってるだけだったレオンの功績になるのだ。



「ぼ、僕が活躍したのに~」

 叫ぶ僕だけど、アイゼルちゃんの耳には僕の叫び声など届いていなかった。


≪さすがはご主人様(マイロード)、日頃の行いのせいですね≫

 ハヒン、スピカが僕に全然優しくないよ~。





 ただ、アイゼルちゃんは単に気を失っていただけだから問題ないんだけど……

 っというかアイゼルちゃん、レオン。お前らなんで無事を確認し合った後に、宿屋の寝室へ入っていく?

 そしてなぜ服を脱ぎ出す。


 いや、もう嫌だ。

 こいつら爛れすぎてんぞ!



 ……ア、アイゼルちゃんや。あとついでにレオン。お前らパーティーの仲間にラインハルト君がいることを忘れてるだろ!

 ラインハルト君ってば、岩石魔人(ロックゴーレム)に顔面ボコボコにされて、まだ気絶してるんだよ!

 ひ、ひどすぎる。

 けが人放置して、勝手に2人で盛り上がるとか、お前ら人間のクズだ!


 僕の存在完全無視の次は、ラインハルト君までその犠牲ですか?

 おまけに気絶状態でだ!

 なんか、僕以上に扱いひどくない?

 もしかして僕が大怪我しても、あなたたちは見捨てるつもりじゃないでしょうね。


 なにこのパーティー。超怖い。





「ラインハルト君、とりあえず中級ポーションがあるから、これを顔にかけておくね~。もちろん意識が戻ったら料金をいただきます。というか今もらっちゃおう」

 僕はニカッと笑い、意識のないラインハルト君の懐から代金を回収して、ポーションを使ってあげた。


≪人間のクズ……≫


 はて、何か幻聴が聞こえましたかな?

 いやまあ、いつも幻聴と変わらない、妄想の妖精さんの声が聞こえている人間が言うのもおかしいけれど、今何か聞こえた気がするのは気のせいだよね~。




 それから3日間、この村に僕たちは滞在した。

 中級ポーションは怪我の回復が早くなるだけで、即時回復するわけじゃないけど、これは僕が作った品質が伝説級(レジェンド)のポーション。

 ボコボコにされていたラインハルト君の顔は、3日の間にほとんど回復した。さすがに完全回復まではいかず、まだ顔の各所が赤くなってはいるけど。


「スバル、君の持ってるポーションすごいね」

「フフフ、ラインハルト君。僕たちは"ズッ友"だよ」

 なんだかパーティー内での扱いが同じになった気がして、僕はラインハルト君にものすごい同族意識(シンパシー)を感じてしまった。


「あれ、懐にあった金がなぜか減ってる。所持金の半分なんだけど!」

 あ、気が付かなくていいことにもすぐに気づいちゃったね、ラインハルト君。

「当ゲームでは"戦闘不能"になった場合、所持金の半額を奪われて教会で復活するシステムとなっております」

 ま、ここは宿屋の一室で教会じゃないけど、そんなちっちゃなことはどうでもいいよね。



 ――お前が犯人か!

 そんな顔でラインハルト君が僕を見てきたけど、

「効果の高い薬ほど高いから、仕方ないよ~」

 僕は病み上がりのラインハルト君に、優しく現実と言うものを教えてあげた。

 たとえ死にそうな大怪我をしても、金と言うものが常に付きまとうのが世の中なのですよ。


 毎度、ありがとうございました。


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