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25 泥沼ハーレム結成かな?

 王都に戻ると、僕たちは国王に呼び出されたよ。

 玉座の間に呼び出されると、毎度のごとく「勇者レオン様はすごいですねー、大活躍ですねー」という賛辞が飛び交う。


 ――え、「今回石化回復薬を持っていた僕の活躍」?

 そんなもん、ここにいる連中が評価するわけないだろ!


 あれ、全部僕が作った薬だったのに(ただし作った後その存在をほぼ忘れ去っていた)、僕はまるでパーティーの荷物持ちみたいな扱いされてたよ。

 なんですかそれ?僕は荷車にでもジョブチェンジしたの?



「いやはや、しかし石化回復薬となりますと、わが国では容易に用意できるものではありませんでした。せいぜい50人も治療できればよかったところを、勇者レオン様が大量に所持されていたとは大助かりです。ワッハッハッハッハッ」

 国王と共に、傍に控える大臣が大笑い。

 笑うと同時にでっぷりとしたお腹が揺れるさまは……なんだか僕の前世を思い出しちゃうな~。

 ああ、僕って若いころはプリティー少年と、イケメン青年だったのに、どうして30後半からは今目の前にいる大臣以上のデブになったんだろうね~。


 そう思いつつ、僕は何か妙な親近感を大臣に抱いてしまう。

 ――パクリ、モゴモゴモゴ。

 そして相も変わらず国王の前だけど、僕は飴玉を口の中に放り込んだよ。


(うーん、甘いね~。おいしいね~)

≪砂糖の取り過ぎが原因です、ご主人様(マイロード)

 スピカ大先生が何かおっしゃったかな?


 砂糖は僕の命の源泉。僕にとってな必須栄養素だよ。

 車だったらガソリンがなくなれば動かなくなってしまう。それぐらい、砂糖は僕にはなくてはならないものなんだよ。

 てなわけで、僕は自分にとって不都合な事実は、全て左の耳から右の耳へ、脳を経由することなく素通りしていった。




 あ、そうそう。

 今回はなぜかこの場所に第二王女と、第三王女がいたよ。

 ちなみに王女は全員10代ね。みんな若いね~。もっとも僕も若いけど。


 国王との謁見が終わった後、なぜかレオンだけが第二王女と第三王女に呼ばれてたね。

 今回初めてこの王女たちに会うけど、まあ僕の中ではこの国の王女って、モブ王女ABCって扱いだから。


 それとも王女1号、王女2号、王女3号って方がいいかな~?

 それだとRPGのモブとは違って、戦闘時には腕からマシンガンが飛び出したり、目から怪光線を放って敵の軍団を滅ぼしていく、謎の奇怪ロボット王女様軍団みたいな感じがして~。

 うーん、SFチックだね~。


 ま、これはただの僕の妄想だけどね。




 あ、そうそう。ちなみに第一王女は、体調がすぐれないとのことで欠席だったよ。

 スピカさんの得意技である盗聴では、なんでも階段で思いきりズッコケて、顔面が腫れてるらしいよ。

 どうしてこんなことになったんだろうね~?

 お転婆だよね~。


≪目が見えないのが原因なのでは?≫

 うわー、だとしたら大変だね。でも、第一王女ってどうして目が見えなくなったんだろう。視力を奪った奴は、きっと極悪人だね~。



≪……≫

 あ、もちろん分かって言ってるんですよ。

 だからスピカ、僕のことを本当にどうしようもない人間だなって目で見ないでよ。まあ、スピカには体がないから、当然目もついてないけど~。




 話はいつものように脱線しまくりだけど、第二王女と第三王女に1人呼び出されたレオンは、人気のないところで王女たちと、あんなことやこんなことが……

 えっ、何が起きたかなんて、そんなこと純真無垢な僕からは、とても教えることなんてできないよ。

 なんだかね~、レオンの奴がこの前第一王女といい関係になってきてたけど、それを第二王女と第三王女が気に食わなくて、横から掻っ攫おうと企んでるみたい。

 それでただいまレオンを2人かがりで籠絡中。


 ……何なの、この国。

 この泥沼ハーレム劇場。


 その内レオンを巡って、王女3姉妹がドロドロの昼ドラ展開にでも陥るのかな?


 ま、僕は完全な外野だから、その時は楽しませてもらうよ。

 そうそう、できれば王宮に武具を納入している商人と仲良くなりたいね。僕、ちょっと切れ味のいいナイフとか持ってるから~。


 ――え、「そのナイフで何をするんだ」だって?

 きっとレオンを巡って女同士の内ゲバの激しい争いが勃発して、「他の女取られるぐらいなら、今ここで私と一緒に死んで~」とかなんて展開に陥って、レオンがグサリと。


 フフフ、義理の兄弟の為に、僕ってなんて素敵なサプライズの根回しをしてるんだろう。





 そんなことが王宮に呼び出されてあったわけだよ。

 その後僕は王宮をあとにして、王都で拠点にしている"旧アイゼルバーグ邸"に帰ってきたよ。

 ちなみにアイゼルちゃんは王女2人に呼び出されたレオンの事でハラハラしているようで、今も王宮にいるよ。

 レオンの奴は現在進行形で、王女たちの泥沼ハーレムに浸っているよ。ちょうど今、第二、第三王女がレオンを横からかすめ取ろうとしていることが、第一王女にばれたね。レオンたちの所に第一王女がやってきて、3人の王女が泥沼の喧嘩中。

 おまけに、アイゼルちゃんまでその場に突入しちゃったし~。

 うわー、女どうしの地獄だね~。


 ……をぃ、なんで争いの中心であるレオンは、涼しい顔してるんだよ。

 前世の僕の時なんて、殺されかけるほどの修羅場に叩きこまれたのに、なんでお前にはちっとも被害がいかないんだよ!



 あ、飴玉食べよ~と。


 えーとね、ラインハルト君は今回も報告があるから王宮に残ったままだよ~。


 というわけで、皆がいない内に今回石化した村で手に入れた薬剤を、全部薬にしちゃおっと~。




 飴玉一つで僕は不都合なことを全てきれいさっぱり消去して、黒雷男爵号(ブラックサンダーバロン)を始めとする6頭のポニーに背負わせていた薬草類を、工房で薬に加工していった。


 今回は量が多かったし、今までよりも種類が多い。

 傷傷、擦り傷用の薬なんて当たり前で、冒険に役立つ低級回復ポーション(品質、伝説級(レジェンド))も作る。

 胃腸薬や、整腸剤、風邪薬、下痢や便秘用の薬に、麻酔薬。健康にいいお茶なんかも何種類か作ってく。

 ついでに中級ポーションも作成。品質はこれも伝説級(レジェンド)


 ちなみに"伝説級(レジェンド)"になる条件は、体力回復用のポーションの場合、魔力(MP)回復効果が付けば伝説級(レジェンド)に認定されるよ。体力回復が目的なのに、そこに魔力回復効果が付くなんて、もともとの性能を超えたポーションだもんね。

 基本的に僕が薬を作っている最中に使っている魔法の効果が薬剤に影響して、服用するだけで魔力回復効果が付与されるんだよね。


 ただ前にも説明したかもしれないけど、体力回復系のポーションを傷口にぶっかけても、瞬間再生なんてしないよ。あくまでも傷の回復が早くなるだけのものだから。これは品質が伝説級(レジェンド)でも変わらない。

 一応、瞬間再生する薬も作れるけど、そっちは低級のものでも材料がとんでもない代物ばかりだから、この場で作れと言われても作れないかな~。


 まあ、ゴミ箱に使ってるポーチの中には昔色々と捨てた材料があるから、それを集めれば、地味に作れたりするんだけどね。もっとも、今のところ作るつもりはないし。





 そうやって、いろいろな薬を作った僕。


 1日が終わったころには万を超える、薬の入った瓶が工房を占拠してたよ。

 なお薬を入れる空瓶はポーチの中に"うん100万個"も転がってるから、余裕で空瓶は足りてたよ~。


 そして作った薬は、

「ポ、ポーチに全部投入!」


≪このポーチのせいでご主人様(マイロード)の整理整頓技能がますます低下していくのですね≫

(やかましいわい!)


 スピカさんにお小言言われちゃったけど、とりあえず今回獲得した薬剤は、全て薬として調剤できたよ。




 日が暮れて、僕が暢気に鼻歌を歌いながら台所で料理をしてる頃には、ラインハルト君が王宮から戻ってきて、さらにレオンとアイゼルちゃんも戻ってきた。


 なんだかアイゼルちゃんがものすごくげっそりとしてるのに、レオンの奴は平然としてやがる。


 なぜだ!なぜなんだ。

 あれだけの修羅場にいて、どうして顔にビンタさえされてないんだ……


(そういやこいつの親父はもっとすごいからな~。もしかして"血"なのか?)

 レオンの父親を僕は知ってるのだけど、あの人はすごすぎる。もてるとか、女を片っ端から口説くなんて次元の存在ではもはやなく、しゃべるだけで女性を妊娠させることが出来るんじゃないかってぐらい、次元が異なる存在だ。

 そうしてできた子供の1人が、レオンなわけだしね~。



「ううっ、私王女様たちが相手でも、絶対に1歩も引きませんから」

 僕がそんなことを考えている間に、ゲッソリしたアイゼルちゃんが、レオンの方を何やら狂おしい目で見ていた。


(よしよし、今日は台所にある包丁を砥石でよく研いでおかないとね)






 そして、翌日。

 特に目立った大事件がなかったのは残念。


 台所でよく研いでおいた包丁には、生肉を切った時についた返り血と油がついていることはなかった。

 アイゼルちゃんはなんだか昨日のゲッソリしていた顔が一転して、瞳を怪しいまでにランランと輝かせていた。

 錯覚なのか、レオンの顔もなんだか無性に輝いて見える気が……


 ……駄目だ。こいつら俺の予想と完全に真逆のことを昨日の夜してたな!






 ま、まあ……そんなことはどうでもいいね~。


 さて、この日僕は王都で僕の薬を買い取ってくれてる道具屋のおばあさんの所に来たよ。

 道具屋のおばあさんは、なんでも孫娘の1人が、最近この国一番の商人と結婚したんだって。

 すごいね~。


「これでこの国一番の商人が持っている販売路を使うことが出来るようになった。お前さんの薬を今まで以上に大々的に売りまくって、さらに暴利をむさぼれるぞい」

「ワーイ、商人同士の"政略結婚"って奴だね。そして"現金収入"が山盛りになるんだね」

「うむうむ、じゃからもっと薬を作っておくれ」

「エヘヘ~、大金持ちも夢じゃないね~」


 僕は目を金色に輝く"金貨色"に変えて喜ぶ。道具屋のおばあさんの瞳も、金貨色に輝いていた。

 90過ぎた婆さんと、10歳をちょっと過ぎただけのガキんちょ。

 棺桶に片足突っ込んでる老婆と、年端の行かない子供なのに、なんでこんな目になってるんだろうね~?

 不思議だね~。


 えへへ~、この世界でも成金になって、贅沢三昧して楽しむんだ~。



 ――「お前、この国に"一応"勇者として召喚されたんだろう」だって?

 なにそれ?そんなあちこちに使い走りに行って、命がけで魔物と戦わないといけない下っ端戦闘労働者の事なんて知らないよ~。そんな下っ端労働者は、お金を使って小間使いとして動かせてやればいいんだ。


 そう、お金があればなんだってできる。

 前世の僕はそれで廃課金チートを超えた、成金チート能力によってMMORPGで頂点に立っていたようなものだったからね~。

 この世界でも、同じ感じで頂点に立っちゃおう~。


 ただし、現実(リアル)では嫁に逃げられ続けた挙句、老後は孤独にPCに向かってばかりのボッチ老人だったとか言うなよ?


後書き



 サブタイトルに、『黄金色の魔法』なんてつけてみるのもいいかもしれませんね。

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