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24 石化した村で……

 目的の村に着いたら、村人が全員石化していたよ。

 そしていきなり目の前に、石化魔獣(ゴーゴン)が登場したよ。


 こいつの目を見たら、全員石になっちゃうんだよね。


 もちろんその目を見たよ。

 僕も、レオンも、アイゼルちゃんも、ラインハルト君も。


 いやー、あまりに突然のことだったから、仕方がないよね~。



 で、その結果見事に石になっちゃった。

 アイゼルちゃんとラインハルト君の2人が。





「き、貴様ら、どうして我の石化の魔眼が効かない!」

 僕とレオンの2人が石化しなかったことに驚く石化魔獣(ゴーゴン)


「石化の魔眼なんて、僕の魔法防御力だったら何もしなくても抵抗(レジスト)できるけど?」

 僕はごくごく当然と石化魔獣(ゴーゴン)に言ってやる。


「な、ならばそっちの男は……」

「レオンは"完全石化耐性"持ってるから効くわけないじゃん。大体レオンの奴は~」

 続けようとする僕だが、その僕の傍でレオンがぼそりと言ってきた。


「……シリウス、お前こいつがいるのに気付いてただろう」

「そういうレオンも、村に入る前から気づいてたでしょ~」

 ふっふっふっ、残念な子扱いされている僕だけど、これでも超実力派の魔法使いですよ。探知系の魔法はいろいろと常時展開できるんだよね。それこそ遠くの音を拾うことが出来る風魔法に、光の進行を操作して千里先を見ることが出来る光魔法。土属性を使った地面の振動探知に、水面に移ったものを見ることが出来る水魔法。

 あとは熱量感知や、次元魔法を持ちいた別次元からの視点で周囲一帯に存在しているものを全て検出してしまう魔法などなど。


 レオンにしても感覚は人間離れしてるから、石化魔獣(ゴーゴン)の存在に気づけて当然だ。



「ところでレオン。僕の本名呼んじゃダメ」

「別にいいだろう。この場でお前の本名を覚えていられる奴なんて誰もいないんだから」

「んー、そっか。アイゼルちゃんとラインハルト君は石になってるし、あとは目の前の君を潰せばお終いだもんね~」

 僕は石化魔獣(ゴーゴン)に向けて、にこっと笑った。


 可愛いでしょう。近所のおばちゃんたちをメロメロにしちゃう愛らしい子供の笑顔だよ。

 最近では王都の道具屋おばあさんだって、僕の笑顔の前ではメロメロになってるくらいだしね~。


「我を潰すだと?貴様ら正気で言って……」

 そう言って僕に向かって飛びかかってこようとした石化魔獣(ゴーゴン)だったが、僕へと向かう途中で まるで壁に遮られたかのように、その体が何かに激突した。

「な、なんだこれは!?」

 視覚では捉えることが出来ない無色透明の壁。それが石化魔獣(ゴーゴン)と僕たちの前にあるのだ。


「何って、ただの次元結界(ディメンション・シールド)だけど?」

「ディ、次元結界(ディメンション・シールド)……まさか、"あの"次元魔法なのか」

 戸惑う石化魔獣(ゴーゴン)に僕は無言で笑い続ける。


「まさか、いやしかし、今お前のことをシリウスと……そんな、バカな。だが、黒髪黒目の子供の姿。まさかあなた様は……」

 戸惑い、驚愕。やがてその顔に絶望と恐怖を浮かべ始める石化魔獣(ゴーゴン)


 でも、僕は雑魚の言葉に興味ない。

「レオン、あれの首ひねっていいから」

 僕はそれだけ言った。


「安心した。お前がこのまま攻撃魔法を使うんじゃないかと内心焦っていたぞ」

「えー、そんな物騒なことしないよ。そんなことしたら、下手したらこの村もアイゼルちゃんたちも原型が残らなくなっちゃうじゃん」


「ああっ、ヒィッ!」

 石化魔獣(ゴーゴン)は怯え続けていた。

 レオンがその前に立ちはだかる。そのまま恐怖で動くことすらできない石化魔獣(ゴーゴン)の首を、レオンが体についた筋肉以上の膂力でもって握りつぶした。


 ゴトリと石化魔獣(ゴーゴン)の首は地面に落ち、首を失った体からはどす黒い血が噴き出す。黒い血がレオンの体に降り注ぐが、それを特に気にもしない。


 そして僕は、

石化魔獣(ゴーゴン)の目、ゲットだぜ!」

 地面に転がった石化魔獣(ゴーゴン)の目玉をほじくり出した。


 それをポケットから取り出したポーションの瓶の中へ入れる。

「まるでホルマリン漬けだね~」

 こうしておけば腐ることがなく、魔眼に宿っている"見たものを石化させる"能力が失われることもない。

 目玉入りのポーション瓶なんてすごく悪趣味だな~と思いつつも、僕はそれなりに珍しいアイテムをゲットできたわけだ。


 そのうち役に立つことがあるかもしれない。


 とりあえず瓶のラベルに、『石化魔獣(ゴーゴン)の目玉入りポーション。周りに普通の人がいると石にしちゃうので取り扱い注意』と書いて、そのまま足の太ももにつけているポーチの中へ放り込んだ。


ご主人様(マイロード)、結局ゴミ扱いなんですね≫

(えっ、ヤダなー。そんなわけないこともないじゃないかー)

 それなりに貴重と言っても、ゴミということを否定しない僕だった。






 そんな感じで、村人を全員石化させた石化魔獣(ゴーゴン)はあっさり退治した。

 退治っていうか始末?それとも駆除?

 僕的にはゴキブリ退治くらいの感覚だけど?


「さーてと、それじゃあ石化回復薬でアイゼルちゃんとラインハルト君を元に戻しちゃおう~」

 僕は何事もなくいつもの能天気テンションで、石化回復薬をポーチから取り出し……

「えっ、えーと、あれ、どれだ。こ、これか!?あっ、違う。えーとえーと」

「ちゃんと整理しておけ」

「ふ、ふええっ~」

 レオンに呆れられてしまう。


 仕方ないよね。石化回復薬なんて、もうどれだけ前に作ったことだか。

 ちゃんとポーチに突っ込んだのは覚えてるし、その後使うようなこともなったので、確かにポーチの中には入っているはず。


「あれれっ、おかしいな。もっと奥の方なのかな?」

 何しろ容量がキチガイなポーチ。

 その気になれば10000人の人間を詰め込んで、この中で生活できるぐらいの広さがある。

 もっともポーチの中は次元魔法の効果によって別次元になっているけれど、中には太陽なんてないから、暗黒の闇が広がり続けている。それにポーチの口自体は固定なので、口の大きさ以上の物を出し入れすることはできない。当然小さなポーチなので、この口から人間を入れるなんてことは不可能だ。

 あくまでも、内部にそれぐらいの容量があるというだけの話だ。



「あれれれ~~~」

 ところで出てこないんだよね、肝心の石化回復薬が。

 あまりにも出てこないものだから、日本のご長寿アニメである青い色をした"狸型タヌキロボット"が、"七次元ポケット"の中から道具を片っ端から放り出すようにして、探し回る僕。その場にポーチの中身をいろいろと取り出していく。

 訳の分からない図形が描かれた紙の束に、茶色の草に、羊皮紙やら割れたガラス瓶に、緑色の……あ、これカビパンだ!誰だよ、こんなところに捨てた奴~。


 ……

 ……

 ……・


 えーと。あっ、ようやく見つけた~。


「ジャジャーン、石化回復薬~」

 僕は"狸型ロボット"を真似た声で、ポーチの中から薬を取り出した。


「……」

 無言でレオンが僕の手から石化回復薬を奪い取ったよ。そのままアイゼルちゃんとラインハルト君にかけていく。


 ちょっとちょっと、レオンさんや。日本をしらない君が僕の"ネタ"に突っ込めないのはともかくとして、今呆れてたでしょ。

 しかも、無反応!僕に「バカだな~」って視線すらなしですか?


「ウワーン、レオンなんてもう知らない~」

 叫びながら、僕はその場から逃げ出すように走り去った。


 グスン。

 あとでレオンの奴が謝ってきても、僕は許して許してやなんだからね~。






 すぐにレオンは視界外になる。

 でもね、僕は村の中からは逃げ出さなかったよ。

 早く、村の人たちは助けてあげないといけないよね。


 ただし僕はマジものの勇者様でなければ、英雄気取りのヒーローでもない。まして善意だけで無償で人助けをする善人でもない。

 特に今の僕は白ポニーABCDEを購入したせいで、金欠気味なんだよね。街に戻って道具屋のおばあさんと仲良く薬を売って行けば、またお金はたまるだろうけど、それでも今の僕はちょっとピンチだ。


 なので、村で一番大きな村長さん宅へ突撃。


「見ちゃいけないものを見てしまった」

 突撃した村長さん宅では、なぜか全裸で驚愕した顔のお爺さんの石像があったよ。

 水浴びでもした後だったのかな?そんなところで石化魔獣(ゴーゴン)に出くわしちゃったんだね。


 とはいえ、このままではいけない。


 僕は石化回復薬の1本を取り出して、それをこの村の村長さんと思しきおじいさんに振りかけた。

 そうしてしばらく、石化はゆっくりと解除されていき、石になっていたお爺さんの肌が弾力と共に、肌色を取り戻していく。


「ブエクショイ」

「ヒンッ、鼻水が僕の顔に飛んできた」

 今まで全裸でいたから寒かったのかな?


「はっ、ワシは一体何を……」

 と言うところで、お爺さんは自分が全裸であることに気付いて言葉を失った。


「あのー、僕は肥田木昴(ひだきすばる)って言います。実は村の石化している人たちを助けに来たんですが」

「う、うむ。そういえば妙な魔物によって、ワシは石に変えられていて。……とりあえず服を着させておくれ」

「ですよね~」

 お爺さんは自分が全裸だったことに赤面。僕は深く突っ込まず、適当に返事をしておいた。




 ……をぃ、なんだよこれは!

 美人の全裸シーンでなければ、せめてもの情けとして老婆ですらない。ヨボヨボの爺様の全裸シーンを眺めないといけないイベントなんて!

 一体僕の運命のめぐりあわせは、どうなっているんだ!


 この国に召喚されてからというもの、ろくな扱いをされないだけでなく、こんなひどいシーンにまで出くわさないといけないなんて……




 それからほどなくして、爺様は着替えから戻ってきた。

 僕は簡単に事情を説明し、村長は実際に村中の人間が石化している光景を見て回って絶句した。


「ああ、何ということだ。村中の人間が石になっているだなんて」

「でも、ご安心を。僕が持ってきたこの石化回復薬を使えば、ちゃんと回復しますから」

「なんと!あなたはこの村の為に現れた聖人様ですな。まさに神が遣わしたお方でございます」

 そう言って拝むように僕を見てくる村長。


「で、お代の方ですが」

 しかし僕がそう口にした瞬間、僕を聖人呼ばわりした爺様の顔が引きつった。

「お、お代……無料(ただ)ではないのですか?」

「当たり前でしょう。石化回復薬は安くないんですよ」

 これって結構作るのが手間な薬だから、簡単に量産できないんだよ。まあ、元の材料はほとんどただで集めたものばかりだけど、それでも手間賃すらなしってわけにはいかないでしょう。


≪どうせポーチの奥底に放置(すてた)していた薬じゃないですか≫

(シャラープ、スピカさんは黙っていなさい!)

 今の僕は金欠気味だ。そんな時に無料で奉仕するほど僕は人間出来てないよ。前世だって2番目の妻に慰謝料取られた後は、借金で苦しめられまくったんだから、貧乏には戻りたくなんてない!



「こんな有様の村からお金を取るなんて、あなた正気ですの?」

 そんなやり取りをしているところに、石化から回復したアイゼルちゃんとラインハルト君、そしてレオンの3人がやってきた。

 ちなみに今の言葉はアイゼルちゃんのもの。


「僕はいたって"本気"です」

「……戦闘ではいつも役に立たないし、今回村を襲った魔物を退治したのはレオンさん。それで困っている村を助ける薬を持っているのに、お金がないと売らないなんて最低の人間」

 おお、なんだかアイゼルんちゃんの僕を見る目が、今までで一番厳しいな~。もう、敵意が宿ってるんじゃないかってくらいだね~。

 ていうか、石化魔獣(ゴーゴン)を倒した功績は全てレオンのものですか。……まあ、確かに僕が倒したわけじゃないか~。


 でも僕はアイゼルちゃんの敵意すら感じる視線を平然と受け止めた。

「何言ってるのアイゼルちゃん。この薬だってタダじゃないんだよ」

「では、このまま村を見捨てるつもりですの?」

「見捨てるって言ってない。ただ、正当な対価を払ってくれって話をしてるだけ」


 僕とアイゼルちゃんの間で、目には見えない火花が飛び散る。


 レオンは黙って突っ立っているだけ。ラインハルト君は表情をおろおろさせて、僕たちの成り行きを黙って見ている。



「い、いいのです。この村を助けていただくにしても、対価が必要と言うのは確かな話です。それで、石化回復薬はいかほどのお値段で売って……」

「あなた、この村の村長ですわよね!」

「は、はい」

 睨みあう僕たちの横で村長が納得しかけた。なのに、アイゼルんちゃんが語気を強めて遮ってきた。


「いいですか、私たちは勇者の一行なのです。困っている人たちを助けることは当然のこと。そこにお金をさしはさむなどということは、あってはならない事でしょう」

「な、なんと勇者様御一行だったとは!」

 村長さんが驚いてるね~。


「だから、その薬をタダでこの村の人たちのために使ってあげなさい」

 なんかアイゼルちゃんが堂々と言い放ったよ。


 でもね、

「言っている意味が全然分からないけど。勇者御一行様だと、ただで人助けをしないといけないの?」

「当たり前でしょう。勇者一行たるもの、常に無私無欲で世の中の人々を助けるもの」

「……」


 ど、どしよ。

≪どうしよう、スピカ~。今アイゼルちゃんマジな顔で言ったよ。この人、頭大丈夫かしら?≫

 僕はあまりにもパニックになって、アイゼルちゃんから視線を逸らし、レオンとラインハルト君の方を見る。


(お前がまいた種なんだから、自分で何とかしろよ)

 レオンの奴がそんなことを目だけで言ってくる。

(ヒエエ~)

 ラインハルト君に至っては、もっと役に立たないね。



「ハー、アイゼルちゃん。無私無欲で人助けをしたいなら、気の合う同士でも探して慈善活動してなよ。僕も今回は生活が懸ってるから、対価をもらえなければ薬は出さないから」

 そう言って僕はアイゼルちゃんにシッシと、犬を追い払うように手を振る。


「ダ、ダメですわ。普段役に立っていないんだから、こんな時くらい私の言うことを聞きなさい」


 ――ニッコリ。

 僕は顔では笑うけど、少し切れちゃった。


「あのね、貴族のお嬢様。君は道楽で、無料(ただ)で世の中の人助けをできるくらいのお金持ちなんだろうけど、僕はそうじゃないの。お金がないと生活だってしていけないんだよ。

 まあ、僕の金使いにはいろいろ問題あるかもしれないけど、今大事なのはそこじゃない。

 僕は生活していくために薬を売るの。村長さんの方は村人を助けたいから薬が欲しい。村の人たちの命が懸っているけど、これは普通に"商売の話"なんだよ。

 だから買ってくれますよね、村長さん?」

「え、ええ。ですが、ここは小さな村です。お支払いできるにしても、一体どれだけのことができるか……」

 自信なさげに視線を下げる村長さん。


「薬を持っているのは僕で、アイゼルちゃんじゃないんだから、部外者は黙ってて」

「で、でも、あなたは私たちのパーティーの一員でしょうに……」

「へぇー、いつも僕の存在ガン無視して扱いもひどいのに、こんな時だけ仲間の振りするの?」

「そっ、それは……」

 僕の扱いに関して多少は思うところがあるらしい。自分の弱みを突きつけられて、アイゼルちゃんが一歩後ずさる。


「なあ、スバル。普段の扱いがひどいってのは分かるけど、だからってあまり金、金って言うのも……」

 この状況を見かねて、ラインハルト君が横やりを入れてきた。



 ――んー、どうしようかな~。

 とりあえず、僕はポケットから飴玉を取り出して、それを口の中に入れる。

 コロコロと飴玉をなめまわしながら、しばし黙考。


 アイゼルちゃんはその間に気を取り直したようで、再び敵意のある視線を向けてくる。

 ラインハルト君は、困り顔で僕を見ている。


 そこで僕はふと気づいた。

 やっぱり、甘いものがないと脳細胞ってちゃんと働いてくれないよね。



「そういえば勘違いしてたら困るけど、僕は何も金品で払えなんて言うつもりは初めからないから」

「ま、まさか奴隷……」

「いやいや、そんなもの余計にいらないって」

 アイゼルちゃん、何という考え方をしているんですか。「金が出せないなら、奴隷になってもらおうか。フハハハハ~」。こんな愛らしい僕に向かって、そんな悪逆非道なことをするイメージを持っていたとでもいうの!?

 僕、それがショック。


「あのですね、村長さん。この辺で取れる薬草をたくさん下さい」

「へっ、や、薬草ですか?」

「うん。どうせこんなショッパイ村にあるお金なんてたかが知れてるもの。それより僕は薬を作れるから、材料になる薬草を譲ってくれればいいよ。お金で払われるより、薬に加工した方が、確実に利益が出るだろうしね~」

 ショッパイ村と言われたことに、村長の顔が少し歪んだが、それでも僕の出した対価に明らかに胸をなでおろした。

 うんうん、こんなド貧乏人たちから金を巻き上げるより、自作した薬の方が遥かに利益を上げられるってものよ。

「な、なんだ。その程度の対価でしたらお安い御用です」

「うんうん、よかった。じゃあ商談は成立ね~」

 僕と村長の間では、あっさりと話がまとまった。



「えっ、ええっ!あの、私は無償(タダ)で……」

「いやいや、法外な値段でも突きつけられるのではないかと焦っておりましたが、案外大したことがなくて安心しましたわ。ハッハッハッ」

 もはやアイゼルんちゃんの無償(タダ)でどうこうと言う話は完全に立ち消え。


「エヘヘ~。僕って良心的な人ですから~」

 かわりに僕は、にやけた顔をしてみせた。






 その後僕たちは数日間村に留まった。

 僕が出した石化回復薬で、村人たちは石化から回復。村を救ってくれた僕たちは、なんだか物凄い歓待を受け、石化魔獣(ゴーゴン)を倒したレオンの事は、「勇者様、勇者様」と崇めていたね~。

 僕も"一応"勇者扱いの枠でこの国に召喚されたんだよね?

 まっ、今更"勇者ゴッコ"してもつまらないからいいや。


 そして僕は、この村の付近で取れる薬草類を、村人と共に歩き回って調査。

「この草の根が滋養強壮に効く」とか、「この樹の皮は乾燥させると下し便が固くなって下痢に聞く」とか、「この花弁は痛み止めになるけど、量を間違えると幻覚を見る」などなど。

 そんなことを教えて回りつつ、薬剤の採取を村人と共に行った。


「そこ、薬剤になる花を根っこから抜かない!1年経てばまた花を咲かせるんだから、薬剤になる部分以外には手を付けるな!」

「はいいっ」

「そっちも根を抜くんじゃない!いるのは茎の部分なんだよ。根っこが残っていれば、雑草みたいにまたはえてくるんだよ。根っこから抜いたら、薬草が繁殖するのを待たないといけなくなるだろう」

「り、了解です」

「乱暴に扱って茎を痛めるな!その薬草は葉が薬草に使えるけど、茎を痛めたら、葉が生え変わらなくなるだろう!」

「ひいいっ」



 可愛い子ちゃんモードはいったん停止だね。

 ちょっとマジでスイッチが入って、村人たちに採取時の注意をきつくしておいたよ。

 手荒に採取しまくって薬草を全滅させるようなことがあったら、ここではもう二度と薬草が取れなくなっちゃうものね。



 そんなこんなで、数日の間に黒雷男爵号(ブラックサンダーバロン)を筆頭とする荷運びポニーたちの背中には、たくさんの薬草が満載された。

 ポニーだけで足りなければ僕のポーチもあるけど、さすがにそこまでは必要なかったね。


「勇者様と賢者様の御一行様。ありがとうございました」

 僕がパーティー内の空気的な立ち位置だったのに、いつの間にか"賢者様"と呼ばれたよ。

 そう呼ばれながら、僕たち一行は石化された村を無事に救い出して、王都への帰路についた。


後書き



 "狸"型ロボットです、"猫"型ロボットではありませんw

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