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23 国王からの初依頼

 楽しい異世界ライフを満喫していた僕たちだったけど、ある日国王から呼び出しを受けて王宮へ参じることになった。


 まあ、呼び出されたのはレオンとアイゼルちゃんとラインハルト君の3人だけ。

 でも安心して、僕もちゃんとついていったから。


 ちなみに全員が僕の存在ガン無視してたから、付いていっても誰からも文句を言われなければ、追い出されることもなかったよ~。



「よくぞ来てくれた勇者レオン一行よ」

 国王は玉座に座って"僕たち"を出迎える。


ご主人様(マイロード)、正確には"僕たち"ではなく、"レオンたち"と表現するのが正しいです≫

(黙れよ、最近お前俺に対して一言も二言も多すぎるぞ!)

 ど、どうしよう。

 このまま僕の妄想にまで見放されてしまったら、僕の存在価値ってどうなっちゃうの?


 と、とりあえずポケットに飴玉あるから、それなめてよ~と。



 僕は国王の前で平然と飴玉を口に入れてなめ始める。

 その間にもなんか国王や大臣が話してるね。


「辺境にある人口300人ほどの村の住人が全員石化してしまった」

「未知の魔物の仕業に違いない」

「おのれ魔族め!」

 とか言って、最終的にこの事件の解決を、「勇者様、なにとぞなにとぞご協力を~」などと言い始める。


 テンプレですね。

 勇者御一行さんが石化した村人を助けに行く話。


 RPGの定番だと村人の石化を助けるための薬を作らなきゃいけないけど、その材料について調べたり、材料を取るために危険な魔物がいる場所へ行かないといけない。さらに薬を作れる薬師を探したりするんだよね。

 村人を助けるだけなのにあちこち走り回らされて、地味にお使いイベントになってるんじゃないかって感じのイベントだね。


 でも、超楽勝じゃん。

 "石化回復薬"なんて、僕のポーチの中に腐るほど捨てて……ゴホンゴホン、大切に保管してるんだよね~。


 僕のポーチの容量が異次元レベルの容量を誇っているせいで、つい便利なゴミ箱として使っているなんてことはないよ。その上、たまたま昔作った薬の在庫を持て余して、そこに捨てたなんてこと、あるわけないよ~。



 この依頼超楽勝~。




 で、僕たちはそのまま村人たちが石化した村へと移動……する前に、なぜかイベントがもう一つあった。


「レオン様、今回の事件には強力な魔族が関わっているはず。あなたをこのような危険な世界に召喚した私が言えることではありませんが、どうぞお気を付けください」

 僕たちをこの国に召喚した元凶である第一王女様が、なぜか登場したよ。

 現在失明中の彼女だけど、なぜか目にはレオンへの熱っぽい色を宿している。


「安心しろ、この程度危険でもなんでもない」

 そう言い、レオンは王女の心配を軽く流す。


 そりゃそうだよね。

 人間300人が石化しちまう程度、君にとっちゃ本当に何でもないよね。

 ついでに石化で定番なら、どうせ原因になった魔物は"石化魔獣(ゴーゴン)"だろうね。

 石化魔獣(ゴーゴン)の種族って、魔族の軍勢の中にたまにいるんだけど、あいつらって同じ魔族の中でもつまはじきにされていることが多くて、ボッチを極めてるんだよね。

 だって、あいつら同じ魔族相手でも目で見たら、石にかえちゃうんだもん。そのせいで「お前らはこの街から出て行け!」って感じで、村八分とか街八分(そんな用語が存在しているのかは知らん!)にされてるもの。


 ――え、「どうして僕が魔族の生態に詳しいのか」だって?

 だってほら、僕って天才薬師だから仕方ないよね。


ご主人様(マイロード)の放言癖はいつものことですしね≫

 そうそう、僕の口から適当なでたらめが出てくるのはいつものことで~って、スピカさん~~~?



 ああ、僕の妄想が僕を裏切り続ける。

 心が傷ついちゃうな~。

 でも僕の傷心なんて、今はいいんだ。




 僕がトリップから復帰して現実に戻ってくると、王女がいつの間にかレオンの腕に抱かれていた。

「Why!?」

 思わずそう叫んじゃったよ。


 王女様、レオンの腕の中で滅茶苦茶ニタニタした顔してるよ。

 抱いてるレオンからは表情が隠れているけど、僕の所からはその顔が丸見えだな~。

 それでね、レオンの体って筋肉質なんだよね。筋肉ムキムキのマッスル兄貴って次元じゃさすがにないけど、見た目がスマートなくせしてあの筋肉。


 目が見えなくても、筋肉にはやられちゃうかもね~。

「あの王女、筋肉フェッチかも」

 と、僕は結論付けた。


 余談だけど、アイゼルちゃんもこの光景を目の前で見せつけられてるよ。


「レ、レオンさん!」

 アイゼルちゃんは小声で、しかし恐ろしいほどにドスの効いた黒い声を出していた。

 相手が王女なのできつい言葉を言うことが出来ないんだろうけど、きっとレオンが王女にいい格好しているのが許せないんだろうね~。


 あいつ、マジでハーレム系主人公だわ~。


 ……

 ……

 ……


 せっかくだから、この機会に王都にある武器屋に質のいい鉄が流通するように頑張ってみようかな~。

 この国の製鉄技術って、クソみたいにレベルが低いから、こっそり裏で技術を流通させて、それを刃物の品質向上に当てる。あとは嫉妬に狂ったアイゼルちゃんが、ある日レオンを背後からブスリと……



 あれ~、おかしいな~?

 なんだかアイゼルちゃん以上に、僕の方がどす黒い妄想に浸ってない?







 そんなことがありつつ、王宮を辞した僕たちは、目的の村まで行くことになる。


「よし行くぞ。黒雷男爵号(ブラックサンダーバロン)とポチ、タマ、太郎、喜助、佐助」


 出発に際して僕は、パーティー内の荷物持ちである黒ポニーと、さらに暢気に異世界ライフしている間に買い揃えた追加のポニーたちに宣言する。

 ちなみに黒雷男爵号(ブラックサンダーバロン)の黒い毛並みとは対照的に、新しく増やしたポニーたちは全員純白の毛並み。

 道具屋のおばあさんと一緒に薬で儲けた金貨を全てつぎ込んで、街外れにある牧場で買い揃えたのだ。


 いやー、いい買い物だった。

 牧場主は黒雷男爵号(ブラックサンダーバロン)を購入したときと同じく、「この貴重な5つ子ポニーたちを、決して金で売ることは出来ない」なんて虚勢を張っていたけど、"金貨の魔力"の前に、あっさり前言を撤回してくれたよ。


 まあ、あれだけの金があればポニー5頭どころか、牧場の馬の半分は買い占められたから当然だよね。


「レッツゴー、黒雷男爵号(ブラックサンダーバロン)、ハイジ、クララ、ペーター、アルム、ゼーゼマン」



「スバル、ポニーの名前がさっきまでと違うけど?」

 最近存在感が微妙なラインハルト君に突っ込まれてしまった。

「えーと、じゃあ面倒臭いから、白ポニーABCDEに改名しよう」

「安直を通り越して、いっそ名前を付けない方がいいんじゃないか?」


 うーん、まあ、それでもいいかもしれないね~。

 純白ポニーをわざわざ買い揃えたものの、その扱いに関して僕はかなりザルだ。


 だって僕は黒色が大好きなんだよ。黒雷男爵号(ブラックサンダーバロン)の色に合わせて対になる白ポニーたちを集めたけど……うーん、ぶっちゃけこいつら荷物持ち以外では、ただの飾りみたいなものだからな~。


 ……ということだ。





 そして僕たちはいざ問題の村へ向けて出発。


 道中村へと続く山道が、崖崩れによって巨大な岩で塞がれていた。多くの人が行きかう山道だったので、足止めをくらった人たちがやるせない顔をしていた。


 もちろん僕たちにその程度の邪魔な岩なんて関係ないですよ。


 レオンの物理攻撃力による岩の破砕と、アイゼルちゃんの土魔法で岩をふっ飛ばしたよ。


「プププ~、アイゼルちゃんってあの程度の岩もどうにかできないなんて。本当に大したことない魔法使いだね~」

「ムキー、クソガキ。私の偉大な魔法使いとしての力を見せてあげようじゃありませんか!」

 ちょっと挑発したら、自分の限界超えて強力な土魔法を使って岩を吹き飛ばしてくれたよ。


「ゼッ、ゼーゼー、どうです、これが、私の……」

「そろそろお昼ご飯にしようよ。僕は甘いものが食べたいな~」

 アイゼルちゃんって性格は悪いけど、もの凄くチョロイ女だよね。その後魔力が底を尽いたとかでぶっ倒れたけど、僕はその日食べたお昼御飯がおいしかったことしか覚えてないな~。


「おいしいな~、おいしいな~」

「ヴッ、いくら何でもこれをおいしいなんて言えるわけないだろう!」

「ラインハルト君、例え吐き出したくなるほどの味をしてても、おいしいって唱え続けないといけないんだ~」

 正直に言おう。おいしくなんてない、クソマズい昼食だった。

 でもね、おいしいって唱え続けていれば、きっとおいしくな……ううっ、どうして涙がこぼれてくるの~。


「ほら、無理しないでこれ以上食うのはやめとけ」

「ラ、ラインハルト君、それでも僕はおいしいと唱え続けるよ~」


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