18 初めての戦闘
王都を出て、その周囲に転がる平原へやってきた僕たち一行。
王都の城壁も遥か彼方となる。
今回の目的は魔物相手にどれだけの戦いができるかを知るため。
レオンの戦闘能力が一番期待されているようだけど、レオンだけでなくパーティーメンバー全員の能力を、この機会に知っておく目的もあった。
そして平原に出てきた魔物は、巨大な角を生やした兎の魔物。
体長は80センチといったところ。僕の12歳児の体から見ると、背丈の半分以上の大きさがあり、あの角で一突きされてしまえば、僕の体なんてあっさり貫通されてしまう。
「あの魔物は一角兎と言って、頭に生えた角が特徴の魔物です。魔物の中では弱い部類に入りますが、それでも人間の大人や馬でさえ、あの角で貫かれて殺されることがあります。戦えない者にとっては危険極まりない魔物です」
アイゼルちゃんたちは僕とレオンが異世界からやってきた勇者様と勘違いしているので、最初に見かけた魔物について簡単に説明してくれた。
ただしアイゼルちゃんはレオンの方だけ向いて説明していて、僕の方なんてこれっぽちも見なかったけどね!
そして僕とレオンは、実際はこの世界の住人なので、そんな初歩的な魔物の知識は知っている。
一角兎はその巨体に比べて意外に跳躍力があり、兎のように飛び跳ねて僕たちの方へ向かってくる。
その前にレオンが立ちはだかる。
「あのレオン様。本当に武器をお持ちにならなくて大丈夫なのですか?」
「問題ない」
国王からもらったゴミ同然の剣なんて、とっくに王宮に置き忘れてきて装備していないレオン。
普通に考えれば徒手空拳で魔物の相手をするなど、まともな人間のすることじゃない。
でもね、レオンは強いんだよね~。
レオンに接近して飛びかかってきた一角兎。だが、レオンは一角兎が飛び込むより早く、長い足を頭上に持ち上げ、そのまま一角兎の角に向かって振り下ろす。
つまり、"踵落とし"だね。
ボキッ……と言うよりは、ゴキリッという骨が砕けるような音がして、一角兎の角がへし折れた。
そして、続く拳の一撃が一角兎の脳天を直撃。
いやー、すごいですね。
物理攻撃力Sだからすごいですね。
一角兎の脳天が思い切りへこみましたよ。完全に頭蓋骨が陥没してますね。
ホーンラビットはあっさりと致命傷を受けて絶命した。
「……」
「……」
雑魚相手とはいえ、その光景に唖然とするアイゼルちゃんとラインハルト君。
「ちょっ、ちょっと待ってください。一角兎の角って、王宮の近衛兵が持つ剣でも切り落とすことが出来ないほど頑丈なんですよ。それを踵落としでへし折るなんて……」
唖然半分驚き半分のラインハルト君。
「さ、さすがはレオンさんですわ。とても強いのですね」
アイゼルちゃんは茫然から立ち直るや、レオンに向けて熱い視線を送った。
そうしてすぐにレオンの腕へと抱きつきに行く。それを当然とレオンの奴も腕を絡める。
「……こんなところでイチャイチャしないでくださいね。不潔です~」
僕はそんな2人を嫌らしいものを見るような目で見る。
だ、断じて羨ましいとか、思ってないんだからね。ヒロインとのフラグを持っていかれて、悔しいわけじゃないんだからね……ま、アイゼルちゃんの性格はめちゃ悪いけど~。
ちなみに僕の「不潔です~」むのセリフは、いちゃつく2人に全然聞こえていなかった。
その後もレオンは襲い懸ってくる魔物を、徒手空拳だけで次々に沈めていった。
一角兎が20体に、小子鬼 や巨大蟻蟻と呼ばれる魔物も10体ほど討伐。
小子鬼は、RPGの定番モンスターだから説明するほどのものでもないけど、簡単に説明を。身長1メートルぐらいの子供の姿をした魔物で、錆びた鉄の剣や鎧などをたまに装備していることがある魔物。
巨大蟻も大きさ的にはゴブリンと大して変わらない。ただし、普通の蟻と違って、人間の子供並の大きさがあるから、巨大蟻と呼ばれているわけだ。ちなみに巨大蟻はかなり頑丈な外骨格を持っていて、斬撃や刺突攻撃に対して高い耐性を持っている。
出来の悪い剣で切り付ければ、剣の方が折れてしまうことさえある。そのため戦うには、打撃系の武器が適しているとされる。
もっともレオンは一撃で巨大蟻の外骨格を破壊して、その体内にまで拳をめり込ませている。
「キャー、素敵、カッコいい~」
アイゼルちゃんはレオンの戦いぶりに歓声を送る。戦うレオンは涼しい顔をしているものの、それでも応援されて機嫌がいいようだ。
(うぜえよ、リア充ども!俺の前ではしゃぐな!)
目の前でカップルがはしゃぐ姿を見てないといけないなんて、なんて拷問だ。
ど、どうせな、女なんてすぐに裏切るだけの汚い生き物で……
≪ご主人様、離婚されてばかりだからってひがまないでください≫
(やかましいわ!)
スピカの正論なんて、聞きたくないね。
だいたいレオンにはあんな雑魚ども相手じゃ、一撃で終わって当然すぎることだし。
イチャイチャラブラブ連中を傍で見せられる羽目になった僕の傍で、ラインハルト君も興奮した声と表情をしていた。
「す、すごいね、スバル。勇者様って、物凄く強いんだね!」
「ん~、そうだね。僕に比べれば全然弱いんだけどね~」
「君が義理とはいえ勇者様の弟なのが羨ましいよ」
そういえばいつからか、ラインハルト君が僕に"君"付けしなくなったね。それに僕が今言ったこと、この子完全に無視してなかった?
た、頼むから、「君ってまたそう言うくだらない嘘を言うんだね」とか言って、呆れた目で僕のことを見たりしないの?
もしかして、僕のセリフは完全無視することにしちゃったのでござりまするか?
あ、あのー、せめて何か反応を返してよ~。でないと僕、悲しくなっちゃうよー。
≪ご主人様、落ち着いてください≫
(……僕、いらない子なのかしら?)
≪現在パーティーの全員からそう思われているのでは?≫
――グサリッ
お前、事実を指摘するなよ。事実を。
僕は心に思い切り深い傷をつけられ、追加で傷口をグリグリと抉られるような痛みを覚える。
な、泣いてなんてないんだからね。
か、悲しすぎて鼻水なんて垂らしてないんだからね。
ぼ、僕はやればできる子なんだ。そうだよ、やればちゃんとできる子なのに……
あれ?でもこういうセリフって、普段から何をやってもダメダメのできない子がいうセリフじゃ……
≪……≫
落ち込みまくる僕に、とうとうスピカまで沈黙してしまった。
ま、いいや。
とりあえずポケットに入ってる飴玉でもなめよ~と。
あ、この飴、味はクソマズいけど、とっても甘くておいしいな~。
おいしいよ~。おいしいよ~。
いつもの魔法の呪文を唱えていると、「はて、僕はなんで鼻水なんて垂らして泣いてるんだっけ?」と、思った。
さっきまで、何かしてたのかな~?
僕はこんなに甘いものを食べて幸せなのに~。
ウフフ~、アハハ~。
そんなことをしている間に、レオンの戦闘能力のお披露目は終了。
続いてイチャラブ連中の片割れであるアイゼルちゃんが、現れる魔物に対して魔法での攻撃を始めた。
「火玉!」
「水流弾」
「風刃」
「大地槍」
火の玉が魔物の体を焼き、水の弾丸が魔物の体を穿つ。風の刃が敵の体を切り付ければ、大地から岩の槍が突き出して魔物の体を串刺しにする。
次々に魔物を倒していき、瞬く間に20体の魔物が物言わぬ死骸となった。
「どうです、これが"4属性魔法使い"である私の実力です」
ない胸を張ってみせるアイゼルちゃん。
「さすがはアイゼル様、素晴らしい魔法の技の数々です」
ラインハルト君は飛びかった魔法の数々を見せられて興奮気味だ。
「え、うん。すごいね。すごいよー。すごいなー。……ショボッ」
僕は感情の入らない棒読みで答えたけど、ついつい本音が出てしまった。
「ショ、ショボいって。聞こえてますわよ!」
怒るアイゼルちゃん。
でもね、
「ショボいな」
レオンも僕と同じ言葉を口にした。
「なっ、レオンさんまで私の魔法のことを……。い、言っておきますけど、今の魔法はほんの初歩的な攻撃魔法です。この程度の雑魚相手に、私が本気を出して戦う必要などないのです」
とか、アイゼルちゃんは言っている。
(ねえ、スピカ)
≪何でしょうか、ご主人様?≫
(アイゼンルちゃんって、この国で一番の魔法使いって話だったけど、あんな低レベルな魔法しか使えない子が国一番ってことは、この国って相当ヤバくない?)
≪アイゼル嬢を"精密解析鑑定魔法"を使用して調べた結果では、もう少しまともな魔法も使えます。……ですが、お察しのレベルですね≫
(だねっ)
頭の中で、スピカと僕の意見は一致した。
アイゼルちゃんには悪いけど、僕もスピカも"精密解析鑑定魔法"によって、アイゼンルちゃんの能力を恐ろしく詳細に把握できている。
その結果出した結論は、アイゼルちゃんの能力以前に、このクライネル王国が超ド田舎の小国だということだ。何しろあれが国一番の魔法使いなんだ。こりゃ、魔王の軍勢とやらにコテンパンにされて侵略を許してても仕方がないわけだね。
もっともこんなショボイ国をすぐに制圧できないなんて、戦ってる魔王軍もきっとショッパイ連中の集まりなんだろうな~。
僕はそんなことを冷静に考えている。ただね、目の前でショッパイ子扱いしたアイゼルちゃんが、「レオンさん~」などと言いながら、涙目でレオンにしな垂れかかるんだよ。
レオンの奴は落ち込んでいるアイゼルちゃんの頭を撫でているが……んなこたーどうでもいいわ!
次だ、次。
アイゼルちゃんの次は、ラインハルト君が剣を抜いて、一角兎と戦う。一角兎の強烈な角の付きを回避し、剣で薙ぎ払い、カウンターで体に傷をつける。
「わー、熱戦だね~。一般人レベルだとこんな戦い方なのかな~?」
仕方ないよね。ラインハルト君のステータスってベスト・オブ・ザ・ド凡人だから。
結局ラインハルト君は一角兎と熾烈……というほどの戦いではないが、それでも危なげはなく倒すことが出来た。
とはいえレオンは一撃で一角兎を沈めるし、アイゼルちゃんも魔法で遠距離からバンバン攻撃して、相手に攻撃の機会すら与えなかった。
そんな2人と比べたら、見劣りしすぎだね。
「ラインハルト君、お疲れさま」
とりあえず僕はラインハルト君の戦いをねぎらっておいた。
まあ、誰もが英雄ってわけじゃないんだ。こういう普通の戦い方をする人の方が圧倒的に多いんだもんね。
その後ラインハルト君は一角兎を5体倒してみせる。1人でも雑魚魔物を倒すだけの技量はあるということだ。
この世界では人間は強力な魔物相手だと、複数人で陣形を組んで相手にしないと、とても生き残ることが出来ないので、これが普通の人間の戦い方と言ってよかった。
そして最後に真打登場だね。
「フ、フハハハハ、今まで散々いらない子扱いされていた我が真の力を見せつけてやろう。居並ぶ人間どもよ、とくと見るがよい。我が地獄の業火により、燃える獄炎を遥か天空より叩き落とし、地上に地獄の災禍を解き放たんと……」
「やめとけ」
――ゲシッ
「ハヒン」
チョップされたよ。
痛いよ。
「レ、レオン、なんで可愛い僕の頭にチョップすんだよ!
自分では軽く入れたつもりかもしれないけど、君のチョップって力が入ってないように見えても、クソ痛いんだよ!
さっきまでの魔物みたいに、僕の頭がはじけ飛んだらどうするんだよー」
プンプンプン、僕激おこだよ。
激オコプンプン丸だよ!
「お前、今魔法使おうとしただろ」
「うん、"ただの火玉"だから大丈夫だよ」
「お前の火玉は、危険だから撃つな」
ちょっ、なんで僕が魔法使おうとすると止めるのかな~?
「大丈夫だよ~、威力は最低レベルに抑えるから」
「お前のは最低レベルでも、地面に溶岩が出来ちまうだろ」
「ええー!でも、このままじゃ僕がパーティー内でただのいらない子のままで、ギャフッ」
またしても僕の頭にレオンのチョップが落ちてきた。
そんな僕とレオンのじゃれ合いを、アイゼルちゃんとラインハルト君が眺めている。
「勇者様とスバルはどうしたのでしょうか?」
「どうせあの役立たずの事です。戦う力もないのに、魔物と戦おうとするから、レオンさんが止めに入ってるのでしょう」
「なるほど」
2人には僕たちの話が聞こえていないようで、勝手に2人で納得していた。
で、でもね、このままだと僕のパーティー内での存在価値がゼロどころかマイナスになっちゃう。
(ど、どうしよう。黒雷男爵号、何かいいアイディアはないか!?)
僕は必死になって、黒ポニーのつぶらな瞳を眺める。
――ズルズル
っとそこに、青い色をした丸っこくて粘液状の体をした魔物が現れた。
「ゲッ!」
その魔物を見た瞬間、アイゼルちゃんが乙女らしからぬ呻き声を上げ、その場から後退する。
「あれは……」
ラインハルト君も距離をとる。
「あー、スライム発見!僕の真なる力を示すために、くたばれ!とうっ」
RPGの超定番魔物スライム。もっともこの世界のスライムはつぶらな瞳がついてたりしないけど、それでも魔物は魔物だ。
僕はポケットの中から小さな瓶を一つ取り出すと、それを問答無用とスライムにぶつけた。
瓶が命中した瞬間、ガラスが砕け散って中身がスライムの体に降り注ぐ。
そしてブシューという不気味な音を立てながら、スライムは体から煙を出してみるみる間に縮んでいった。
そしてスライムは、しわくちゃの縮んだ塊と化して死んだ。
まるでナメクジに塩をかけるようなもんだね。
さっき投げた瓶に入っている薬剤は塩ではないけど、効果はそんな感じだよ。
「ブイッ」
僕は「どうや、すごいやろ?」とドヤ顔を浮かべて、アイゼルちゃんとラインハルト君の方を見る。
「す、すごいですわ。今のは一体?」と、尋ねるアイゼルちゃん。
「フフン、よくぞ聞いてくれました。僕お手製の"対スライム殲滅薬"。あれをかければ全てのスライムがナメクジに塩をかけたかのごとく、しわくちゃになって死んでしまうのだ」
「すごい薬ですわ。でも、さっきの魔物は"スライム"でなく、"バブル"と呼ぶのですが」
今まで僕をいらない子扱いしていたアイゼルちゃんが、初めて僕のことを褒めたぞーーーーーー!!!!!
「チッチッチッ、あれは僕のいた世界ではスライムと呼ばれていた魔物なのです」
まあ、僕の世界にいたといっても、現実じゃなくて、"ドラゴンなクエスト"のゲーム内でだけどね。
しかしそんなことは知らないアイゼルちゃんは、
「なるほど、スライムですか。ですが先ほどの薬は素晴らしいですわ。あの邪悪極まりないバブルをあっさり無力化してしまうとは」
「フフフフ、ちなみにあの薬はスライム……バブル以外の魔物には何の効果もないんだよ」
ドヤ、すごいやろ。
対バブルのためだけに、あの薬を僕は作ったんだよ。
「バブルにしか効果がないのですか?」
「そうだよ」
「……それでは他の魔物相手では役に立たないのでは?」
「そうだね」
「……」
あれ、アイゼルちゃんが沈黙したぞ。
「私、バブルと戦うのはものすごく嫌なので、バブルとの戦闘だけは、あなたが重宝しそうですね」
「ええっ、僕ってバブル専用なの!?」
「当然です。というか、その薬の残りを今すぐ全て私に渡しなさい。あなたは戦闘でも役に立たないんだから、今すぐ、全部渡すのです!」
「やだ、やだー」
なぜか必死になって僕から薬を奪い取ろうとするアイゼルちゃん。
「あの、2人とも、後ろにバブルがいますよ」
ラインハルト君が警告した。
だが、その警告はあまりに遅かった。
気が付くのが遅れた僕たちに迫るバブル。僕とアイゼルちゃんの2人は急いでその場から逃げ出そうとした。
しかし、それより早く行動したレオンの拳が、バブルへ迫る。
「ギャー、バカレオン。僕たちの近くでバブルを殴るなー!」
僕は悲鳴を上げたが、直後レオンの強力無比な拳がバブルの体を貫いた。
いや、貫いたってレベルじゃないね。剛腕の一撃で、バブルの体が木っ端みじんに吹っ飛んだよ。
そしてバブルの体を構成していた粘液状の体液が、辺り一帯に吹き飛ぶ。
殴ったレオンはもとより、近くにいた僕にも、アイゼルちゃんにも。
少し離れていたラインハルト君だけは、その悲劇をまぬがれることが出来た。
「うわわん、穢された」
「うううっ、レオンさんひどすぎます。バブルだけは絶対に倒してはいけない魔物だというのに……」
「……すまん」
僕とアイゼルちゃんとレオンの3人は、どんよりとした空気を纏いながら項垂れた。
「さ、3人とも怪我がなくて何よりです」
そして僕たち3人の傍に、なぜか近寄ろうとしないラインハルト君。その鼻を手で塞いで、口だけで息をしている。
なぜそんなことをしているのかだって?
バブルの体液は、"ゲロ臭い"んだよ!
バブルはね、この世界で最弱の魔物だけど、地球でいうゴキブリみたいな存在なんだよ。いや、ゴキブリにカメムシを足して、それを"数乗"したぐらいの存在?
その体液はあまりにもゲロ臭くて、絶対に倒してはならない魔物と言われている存在なんだよ。
だからこそ、僕は対バブルにしか効果がない薬をわざわざ作ったわけ。あの薬を使えば、バブルのゲロ臭い体液が、全て無臭になって蒸発しちゃうんだ。
だからこそ、アイゼルちゃんが僕から薬を何が何でも手に入れようとしたわけ。
しかしよりにもよって、そんなバブルの体液を、直近で浴びてしまった。
「この匂いって3日は取れないんですよ。レオンさんのバカバカ、大馬鹿」
ぽかぽかとレオンの体を殴りだすアイゼルちゃん。
――ついでに、このままカップル破局でいいよね。
お前らの熱愛を見てると、僕の中の嫉妬の炎がメラメラと燃え上がるから。
「ううっ。一応さっきの薬をかけたら、このゲロ臭いのが少しましになるからかけようか」
僕はポケットから新たに薬を取り出して、それを僕たち3人の頭から振りかけた。
「クンクン、これで本当に匂いがましになったのですか?」
「何もしないよりはましだと思うよ。心持」
「心持って……やっぱりあなたは役に立たないですね」
「でもでも、今回のは僕じゃなくて、レオンがいけないんだからね!」
「むうっ」
僕とアイゼルちゃんは不毛な言い争いをし、レオンは反省から何も言い返すことがなかった。
全く、こんなのが僕たちの初戦闘の結果だなんてひどすぎるよ!




