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16 騎乗ペットにロマンを

 さて諸君。

 僕の前世の話はこれでお終い。話の舞台は再び異世界アルスギルナだ。


 前置きがあまりにも長すぎたが、あえて言わせてもらう。

 騎乗ペットにロマンを求める僕としては、これからの旅にはぜひともかっこいい馬に乗りたい。

 黒馬がいい。体格が立派で、毛並みがつやつやで、歩かせるだけで思わず街行く人々がその威容に圧倒され、思わず道を開けてしまうぐらい立派な馬が良い。


「さあ、我が愛馬を手に入れに行くぞ」


 そう宣言して、その日僕は街の外縁にある牧場へ馬を買いに行った。

「レオンさん、あれのことは無視して、私たちは街へ買い物に行きましょう」

「そうだな」

 アイゼルちゃんとレオンはあっさり僕を見捨てた。


「どうせお金がないからすぐに帰ってくるでしょう」

 ラインハルト君もそう言って僕を見捨てた。


「……」

 み、皆ひどい。

 僕の扱いひどすぎ。

 誰か1人ぐらいついてきてくれてもいいでしょう。


 僕は心の中で思った。


「ふ、ふん。あとで皆が僕の愛馬をうらやましがっても知らないんだから!」

 僕は3人に向かって捨て台詞を吐いた。





 そしてその日の夕暮れ時。


 レオン、アイゼルちゃん、ラインハルト君の3人は、旅に必要な物をいろいろと街で買い込んできたらしい。

 一方僕は、


「……まあ、随分。フ、フフフ、立派な馬ですわね」

 笑いをこらえているアイゼルちゃん

「クッ……ク、ハハ、フフフ」

 ラインハルト君は笑わないように我慢していたようだが、すぐ無駄になってしまう。お腹を抱えて笑い出してしまった。


「身長が足りなかったんだな」

 そして最後にレオンが、冷静に指摘した。



 アイゼルちゃんとラインハルト君が笑っている理由は単純。

 僕が連れているのが馬でなく、小さな子供でも乗れるポニーだったからだ。

「……そ、そうだよ。牧場に行ったら僕の身長じゃ1人で馬に乗れないから、ポニーにするしかなかったんだよ!」

 レオンの指摘に、僕はムスッとした態度で返した。


 ちなみにこの世界には地球と同じように馬がいれば、ポニーだっている。



「で、でもね。すごいでしょう。黒のポニーだよ。珍しいんだよ。牧場主さんがこいつだけは手放せないって頑なだったから、金貨50枚でなんとか売ってもらったぐらいなんだよ」


 金貨50枚は銀貨5000枚分の価値がある。

 つまり国王が魔王討伐の支度金として渡してくれた額の10倍だ。

 日本円に換算すると500万円ほどになる。


「ちょ、ちょっと待ちなさい。ただのポニーに金貨50枚ですって!それだけあれば、馬を4人分揃えたほうが安く済むじゃない!」

 あまりの金額に、貴族だからそれなりに裕福だろうアイゼルちゃんでさえ驚く。

「ス、スバル、どうやってそんな大金を用意できたんだ!」

 と、ラインハルト君も驚きだ。


「フフン、僕が召喚された世界……というか日本と言う国はだね。別名"黄金郷(ジパング)"と言われてね。この国では昔は建物が全て黄金でできていたんだ。

 だから現在でも金貨の100枚や1000枚など、ただのはした金でしかないのだ!

 そう、マル・コポーロさんが書いた"東方見聞録"という書物にも記されていたほど、有名な話なのである~」


 ――え、「マルコポーロが書いたジパングに関する話はただの与太話だろう」って?

 気にするな。この世界の人間は、誰も本物の日本の事なんて知らないんだから!


 僕はドヤッと全員の前で威張り腐った。



「……で、本当はいくらだったの?どうせ、適当な値段で売ってもらったのに、またホラを吹いて」

「ですよね。スバルがそんな大金持ってるはずがないし」

 僕の言い分に対して、アイゼルちゃんとラインハルト君は全く信じてくれない。


 ちょ、ちょっと待てお前ら!

 この馬、本当に金貨50枚したんだぞ!


 なのに誰も僕の言うことを信じてくれない。


「レ、レオン。僕がどれだけすごいのか、アイゼルちゃんたちに話してあげてよ」

「あー、スバルはいろいろすごい奴だぞ。……ご覧のとおりな」

「ちょっと待て!お前今勘違いされる方向にわざと誘導しただろ!」


 僕はアチョーと声を出して、レオンに殴りかかった。

 が、僕の拳がレオンに届く前に、あろうことにも首根っこを掴まれてしまった。


 お、おのれレオンめ!

 長身で手足が長いからって、僕をあっさり捕まえるんじゃない。


「ム、ムキーッ!」

 僕は首根っこを捕まえられたまま空中に持ち上げられてしまった。じたばたと手足を動かすが、レオンが僕を掴む手は小動(こゆるぎ)すらしない。


 ギルドの簡易解析鑑定で、体力と物理攻撃力S評価は伊達ではないということだ。




 あ、ちなみに僕が馬を買うために出した金貨50枚だけど、これは以前質屋に入れた純金ネックレスで得た金貨だよ。

 この国って金貨はあるんだけど、物凄く混ぜ物をしていて質が低いんだよね。

 おかげで純金のネックレスを持っていったら、それだけで粗悪な金貨が僕のポケットにたんまりだよ。


 ……でも、金貨の質が悪いってことは、それだけこの国の経済力が低いってことにもなるんだよね。

 この国、本当に大した国じゃないな~。


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