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15 超廃課金ゲーマー

前書き



 今回から第2章になります。

 前世では72歳で死んでしまった僕。2度目の離婚後は慰謝料のせいで借金まみれになってしまい、結果最後の手段として株に手を出した。……だけどそれで人生詰むどころか、逆に大金持ちの成金になってしまった。

 世は日本のバブルがはじける以前の時代。

 世の中には金がとにかく余りまくっていて、株式は連日連夜うなぎ上りの状態にあった。

 大手商社の社員でなくとも5、6百万円程度簡単に稼げる時代だ。


 そんな僕だが3度目の奥さんとの結婚と離婚で、資産の半分が慰謝料として奪われてしまったのは苦い思い出だ。

 金銭的な面ではなく、「金目当てでよくも俺の純情を裏切ったな!ブヒッ」と、当時体重120キロだった僕は嘆いたものだ。


「ちっ、女なんて2度と信じない」


 それから僕は知り合いの成金に連れられて、傷心旅行を兼ねてアメリカのラスベガスにまで飛んだ。

 世界最大の娯楽都市であり、ギャンブルの都ですることと言えばもちろん決まっている。

 ベガスでは一部の大金持ちを相手に、チップ1枚が10万ドル(計算を簡単にするために1ドルを100円とすると1000万円)になるルーレットがあったのだけど、僕は友達の紹介でそのルーレットに参加することが出来た。


「ハハハ、10万ドル?安い安い」


 とりあえず100万ドルを使って10枚分のチップを得、ルーレットにチャレンジ。

 その結果あれよあれよと言う間に、僕は元手を10倍の1000万ドル(約10億円)にまで増やした。


 ――カジノ側からはもうこれ以上は勘弁してください。

 なんてオーラが漂ってきたほど。


 ちなみに噂で聞いた話では、ベガスでは運よく大金を手にすることが出来た人間は、その後陰でマフィアにこっそり始末され、せっかく手に入れた大金どころか、命まで奪われてしまう羽目になるらしい。

 カジノとマフィアが裏でつるんでるってことだね。


 で、その噂だけど、事実だったよ。




 僕はその日の勝ちに気をよくして、半分ほどをカジノにあった寄付箱に突っ込んで、とりあえず500万ドルはそのまま持っていくことにしたんだ。

 ベガスにいる間は、一泊1万ドル(役100万円)の超高級ホテルの最上階にある、見晴らし抜群のロイアルインペリアルスイートって部屋に泊まっていたけど、帰国当日になぜかサングラスをかけた黒服の怪しげな人たちが来て、銃を突きつけられちゃった。


 ヤバかったよね。とってもヤバかった。


 そいつらが噂のマフィアだね。


 僕はマフィアの隙をついてその場から何とか逃走。このままでは殺されてしまうと車に乗って全速力で街から脱出したよ。

 でも、ひどいよね。

 ベガスの外には延々と砂漠が広がってるんだけど、奴らそこまで追いかけてきて、後ろから僕の乗ってる車に向かって、遠慮なく銃弾を浴びせまくってくるんだもの。

 運よく僕が死ななかったからよかったものの、せっかくレンタルしたフェラーリがボロボロになっちゃって、弁償する羽目になったよ。


 ついでに僕とベガスに一緒に来た友達も、車に一緒に乗っていたけど、銃撃から逃げ切った後には真っ白な表情になってたよ。

 あまりに怖かったのか、気を失って放尿までしてた。



 ――よかった、レンタルカーで。

 自分の持っている車の中で友達に放尿された日には、その車にはもう2度と乗りたくないもんね。




 とまあ、日本……というより、地球ではそんなことをしていた僕。

 ベガスでは結局、あれやこれやで300万ドル(約3億円)程度のプラス収支になった。

 ギャンブルで勝ったものの、弁償が高くついたね。あと、関税でもかなりぼられちゃったし。




 とはいえ、こんな金銭感覚をしていた僕。

 傷心旅行の後も製薬会社では普通に天才研究者として働いていたけど、60歳を過ぎて定年が近くなった頃には、趣味としてやっていた格ゲーに限界を感じ始め、新たにMMORPGをメインにプレーする、廃課金ゲーマー路線に転向したよ。


 ひと月100万円ちょっと課金。

 結局そのゲームは10年以上に渡ってプレーを続けたので、最終的に1億2000万円以上課金したことになるね。


 廃課金時代の伝説は、僕のあだ名が(ゲームの)スポンサー様とか、ロールスロイス様とかと言われていたぐらいだけど、廃課金に物を言わせて、ある日ゲーム内の40人からなるトップギルドを"1人"で襲撃したことがあったね。

 廃課金の力によって手に入れた、圧倒的な強化が施された武器と防具。さらには最高位の魔法を使うことが出来る巻物(スクロール)。そして持ち物(アイテムストレージ)の95%を完全回復ポーション(HP・MPが即時完全回復する。ガチャのはずれ景品)で埋め尽くして戦いに挑んだよ。


 いやー、さすがにトップ集団の集まりだよね。

 40人もいるものだから、5秒経たずに僕の操作キャラのHPが残り1割切っちゃうほどの攻撃をしてくるんだもの。

 と言っても、僕は完全回復ポーション使えば即時HP・MP完全回復だけど。

 この完全回復ポーションって、500円ガチャ回すたびにはずれで1個しか出てこないんだけど、課金ガチャでしか手に入らないアイテムなんだよね。そんなわけで使用しても、待ち時間(クールタイム)が発生しないんだ。

 そんなチートアイテムを、ストレージに僕は4000個ぐらい突っ込んでるわけ。


 連中は超火力で僕を迎え撃ったけど、最終的には阿鼻叫喚の叫び声を上げていたよ。僕も終盤はかなりヤバくなって、ポーションの残量が100個くらいまで押し込まれてしまったけど、それでもトップギルド40人全員を黙らせたわけさ。



「フハハハハ、ワシこそがこのサーバー最強の戦士なり!」

 年甲斐のない僕は、そんなことを言って自慢したわけよ。


 後日、そのギルドの連中から報復されまくって、なんの準備もしてなかった僕は、コテンパンにされまくって、散々な目に遭ったけどね。

 だいたい僕が連中に勝てた理由って、単純にストレージを埋め尽くしていた完全回復ポーションのおかげだもの。

 ガチャを回し過ぎてたまる一方で処分に困っていたから、アホな戦闘して全部使いきっちまえと思って、そんなことしたんだけどね。

 とはいえ連中からの報復がその後ずっと続いたものだから、さすがの僕もこりゃ不味いと思ったわけ。


 結局、課金の力で最大級まで強化した、サーバー内でも1、2を争う次元の武器や防具をいくつか彼らに渡して、許してもらえたよ。


 ――え、「サーバーで1、2を争うような装備を、なんで複数所持してるのか」だって?

 月に100万単位で課金してたら、最強装備なんて作り放題だけど?



 その後彼らは、

「うおおおっ、なんじゃこの強化値は!」

「ヤ、ヤバイ。これ一つ作るのにどれだけリアルマネーつぎ込んだんだ」

「お、恐ろしい。これがロールスロイス伝説なのか……」


 彼ら絶句してたね。

 ただ僕はロールスロイスなんてあだ名で呼ばれてるけど、車はフェラーリの方が好きなんだけどなー。

 自家用に3台ほど持ってるぐらいだし。


 と、話がそれちゃいけないね。

 サーバー最強武器防具を渡したら、それまでの敵対関係は手打ちに。

 というか、「スポンサー様」「ロールスロイス様」と僕は親しげに呼ばれるようになり、彼らとはとっても仲良くなったよ。


 よかった、よかった。

 雨降って地固まるって奴かな?

 ボコボコになるまで互いに喧嘩をしたことで、新たに友情が芽生えたった奴だね。


 ――え、「彼らは単にあんたの廃課金アイテムが目当てで親しくなっただけなんじゃないか」だって?


 ハハハハハ、金の力って偉大だよね。友情だって買うことが出来るんだから。



 ……でも、友情は買えたのに妻は買えなかった。なんで、慰謝料(金)だけ持って逃げたんだ……







 ……アハハ。

 えーと、それで話を元に戻すと、僕はその後トップギルドの一員として仲間に迎えられて、ゲーム内では最強ギルドの財務(リアルマネー)担当になったよ。


 ある月のゲームのアップデートでは、騎乗用のペットが目玉になるガチャがあって、僕はいつものように10万ほどガチャに入れたよ。ガチャ以外でも、リアルマネーでないと簡単に手に入らない消費アイテムが多いから、課金に使っているお金のほとんどはそっちに行くんだよね。

 それにガチャで目的のものなんて、10万入れれば普通に手に入っちゃうし。


 その結果手に入れたのが、ガチャの目玉である騎乗ペットの『超神白竜大帝セイントホリーフィールドラゴン』と、それより1ランク劣るけど、同じく騎乗ペットの『黒邪竜王カオスフィーズダークネスドラグーン』。

 ちなみに白竜の方は3体出て、黒竜の方は2体出たね。

 レア度の高い方が1体多く出ちゃったけど、ガチャ回しまくってると、そんなこともたまにはあるんだよね~。


 で、僕としては白竜と黒竜1体ずつ持っていればいいから、後はチームのメンバーに適当にプレゼントしておいたよ。


「うおおおっ、これでゲーム内最強騎乗ドラゴンが手に入った」

「ふはははは、勝てる。これで勝てる。騎乗しているだけでプレーヤーの戦闘力+50%の壊れチートが手に入った」

「スポンサー様、俺一生ついていきます!」


 もらえた子たちは大喜び。


「ク、どうして俺には……」


 一方でもらえなかった子はがっくり項垂れていたので、僕はそっとガチャのはずれアイテムである完全回復ポーションを100個ほど差し出しておいた。


「これだけあれば、一撃死しない限りゾンビのごとく戦い続けられるよ」

「ロールスロイス様が俺たちの仲間になる前に、延々と攻撃食らってもぶっ倒れなかったあの戦法か……」

「そうそう。1人でギルド相手に戦うなら1000個くらいいるけど。100個あれば、大規模PT相手でも1人で完勝できるよ」





 あ、ちなみに僕はこのガチャでは白竜よりも能力が劣るけど、黒竜の方が欲しかったんだよね。

 ほら、なんていうかさ。

 白より黒の方がカッコいいでしょう。

 厨二病がうずくんだよ。

 "暗黒の死竜騎士(ダークネス・オブ・デスドラゴンナイト)"とかって名乗りたくなるね~。


 実用性とロマンって奴は、別物だから仕方ない。


 もっともゲーム内では僕は厨二病名で呼ばれることなく、あいも変わらずスポンサーとかロールスロイスって呼ばれ続けたけど。


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