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8 おいしいご飯(泣き)

 ラインハルト君に連れていかれた兵舎にある食堂では、木のように硬い黒パンと小麦粉を溶かした粥が出てきました、まる。


「ワーイ、おいしいな~。おいしいな~」

 口に突っ込んでも小麦粉粥はろくな味がしない。一応野菜の欠片とくず肉が入っているが、ドロドロとしたスープのせいで旨みなんてものは存在しない。

 パンの方はもはや感想を書く必要すら感じない。

 味はパンと呼んではいけない、もはやパンではない別種の食べ物。ものすごく硬いので、ラインハルト君はそれをスープに浸しながら食べていたけど、僕は歯と顎がとても頑丈なので、そのパンをガリガリゴリゴリと音を立てながら、スープに浸すことなく食べていった。


「よくそのパンをスープにつけないで出れますね」

「うん、これぐらい全然平気~」

 だって前世では体重120キロを超えた僕の食欲だよ。例えどれだけ固いものでも、この鋼鉄の歯の前ではかみ砕いてしまえるのだ~。

 あ、でも、「本物の鋼鉄をかみ砕け」とか言われたら、僕の歯が折れちゃうので勘弁してください。



「それに、この食事をおいしいって言えるなんて……」

 そこで顔に影が差すラインハルト君。

 あ、やっぱりこの食事のことがものすごく不満なんだね~。

「分かるよ~。ボクもこの食事が本当においしいとは思ってないから」

「えっ!?」

「だけどね、おいしいって連呼してたら、とりあえずおいしいような"錯覚"だけできるから。フフフ~」

 そう言って、僕はドロドロの小麦粉を溶かしたスープを飲み込んでいった。


 どうやってこんなまずい物を作れるんだろうね~?

 一応、ここって王宮の敷地内にある近衛の兵舎なのに、食べ物がひどすぎでしょう。



 よし、近衛兵士の諸君。食べ物の改善を訴えるために一同団結し、今すぐクーデターを起こして国王を玉座から追い出しちゃおう。

 クーデターだ、クーデター。

 今すぐ、非道なる王に血の粛清を!!!

 なんたって、食べ物の恨みは1000年経っても忘れることが出来ないほど深刻なのだ!



 なんて、僕は脳内で考えてしまう。





 そうしている間に食堂での食事は終わった。


 終わった後でラインハルト君から聞いたのだけど、近衛見習いを卒業したら、ちゃんとした食事にありつくことが出来るのだそうだ。

 さっき食堂で出されたのは、見習い用の最低限の食事だったとのこと。


「ヒドイ。僕を騙したんだね。せっかくおいしいご飯を食べられると思ったのに」

 劣悪労働者の部屋へと戻った後、僕は2段ベットの上に寝転んで、シーツを涙に濡らしながら眠りに落ちた。


 ちなみに僕が一泊することになった部屋だけど、ここは見習い近衛であるラインハルト君との相部屋だった。


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